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私の正義の話 その4

アメリカでの生活は順風満帆だった。
私は片付けが苦手だけどハウスキーパーを雇えばいいし、身の回りのことは男友達がやってくれる。
そんなある日、男友達が結婚してくれと言いだしてきた。今の生活は楽だし悪くない。私よりも年上だし不満な点はいくつもあるけど、まあ許してやろう。
私は観光ビザでアメリカにいるので定期的に日本に行かなければいけない。次に帰るときにでもパパに合わせてやろう。

このころになると私も自分の体調についてよくわかるようになってきた。
私は気圧で頭痛がする。日本が合わなかったのはそのせいだ。じめじめしすぎて気が滅入る。
ベンゾジアゼピン系の薬があれば基本的にHappyでいられるけど、もっと環境がいいところに行けばもっとよくなることは明白だ!
日本に行くには飛行機に乗らなければいけない。
私はアクティブな面が強いので何時間もじっとしていることが好きではない。美容院でも何時間も座っていると落ち着かなくなるので途中何度か席を立たせてもらう。
飛行機に何時間も乗らなくてはいけないのは拷問だ。せっかく男友達の、いえ、結婚する人と飛行機に乗るのだ。途中でハワイあたりに寄り道してもいいだろう。この私が何時間も動けないことをガマンするのだからそれくらいご褒美だ!
ハワイに立ち寄り、充実した時間を過ごすことが出来た。やはりこれが本来の私にふさわしい生活だ。でも、なんとなく結婚相手がこいつでいいのかと考えるようになった。年上だし、なにより貯金がいくらあるのかわからない。これから一緒に日本に行ってパパに合うけれども、なんと言うか…パンチがない!つまらないやつかもしれない、どうしようかな。

久しぶりの日本。
ハワイと比べるとじめじめしているし憂鬱!
ハワイではどこも痛くもなかったのに頭痛がするような気がする。
パパとは地元の一番いいホテルのスイートを取ってもらってそこで顔合わせすることになった。パパとママは離婚しているから実家は綺麗じゃないのだ。
1時間くらい顔を合わせてパパはすぐに帰った。私たちはその日はスイートに泊まって次の日には東京に戻った。
ウィークリーマンションを借りてママと弟とも顔合わせ。
彼は私がいかにハワイで体調がよかったかを嬉しそうに語ってた。
アメリカに帰って、彼とは別れることにした。
貯金がほとんどなかったのだ。
アメリカ人ってたいてい貯金がないと言っていた。稼いだ分はすぐに使ってしまうのだ。使うのはいいけれどもそれ以上にお金を持っていなくては困る。私の生活をどうするつもりなのか。このまま結婚していたら危なかった。
しかし私は観光ビザで出入りしていたので婚約を取りやめたからアメリカに住み続けるのも難しいことが分かった。
仕方ないから日本に帰ることにした。

日本に帰ってすぐにママの所に行った。
ママは再婚相手とマンションに住んでいたので部屋を一つあけてもらってそこに住むことにした。
私の頭痛はおさまらない。アメリカと日本ではやはり風土が違うのだ。
頭も痛いし体調も悪い。何もやる気にならないから毎日寝ていたらある日ママに怒られた。時差もあるし、怠いのは本当なのに何で私が怒られなくちゃいけないの?
私は何も悪くないのに相手に恵まれず婚約もダメにしてしまってビザの関係で仕方なく帰ってきたのだからもっと大切にしてもらわなければ困る!
言い争いになっていたらママは「私が怒るのは薬の副作用のせいで攻撃的になってるんじゃないの?」と言った。
早速インターネットで調べてみたらびっくりした。私が飲んでいる薬は一日の上限が決められているのに私はその倍以上を飲んでいた。
医者はいくら飲んでもいいと言ってたくさん出してくれたし、足りなければ増やしてくれたのに。
私の体調不良は薬のせいだった!!信じられない!!私は被害者になってしまった!!
そこで私は精神科の有名な先生のいる病院に入院することにした!
ママのマンションは手狭だったしちょうどいい!
すぐにパパに電話をして、入院することを告げて入院費用を全部出してくれるようにお願いした。
「アメリカでいくら使ったと思ってる?」とか言われたけれどもそんなことは問題ではいのだ。私は薬を出すしか能のない藪医者に騙された被害者なの!しかも婚約も破棄したからパパがお金を出すのは当然でしょ?実の娘が困っているのにお金を出せないなんて、再婚相手に洗脳でもされたんじゃないの!?それか、よほど扱いが悪くて正確が歪んでしまったかのどちらか?
私のお願いは絶対なの。今までもこれからもそう!パパお願い、入院費出して!と懇願してようやく好きにしろと言ってくれた!そうでなくては困る!
お金の心配をするなんて私らしくない!そういうのとは無縁な世界で生きてきたの。

病院は個室を手配した。大部屋なんてプライバシーがないから論外なのだ。
お金の心配はないし、何より私は被害者なのだ。大部屋なんかに押し込められたら治るものも治らないし、被害者がさらに惨めな思いをするなど許されない。被害を受けた分、傷はしっかり癒さなければいけない。そのためには心の平穏の保たれる個室は必須なのである。

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