第一章 ⑴ 「無垢」
私の父はトラック運転手、母は専業主婦。
貧乏でも裕福でもない。ごくごく普通の家庭で育ち、毎日兄妹で騒いでいた。
田舎で育ったのもあり幼稚園には友達同士で行き帰りし、帰ってきたらすぐに外で遊ぶ。
山に行ったり川に行ったり、秘密基地を作ったり…
まるで「となりのトトロ」のメイちゃんみたいに好奇心旺盛な子。
平和な日々。
それがずっと続くと信じていた。
ずっとずっと続くと。
いつものように近所の子供達みんなで遊んでいた秋の午後。
そう、今くらいの時期。
幼稚園児から小学生まで、軽く10人以上は居ただろうか。
そこには実の姉のように慕う小学6年生のお姉ちゃんがいた。
名前は洋子ちゃん。
皆に好かれていて可愛いのに男の子達に負けない強さを持っていて明るく元気なお姉ちゃんだ。
私には兄2人がいるのだが喧嘩して泣かされてばかりいたからか「優しいお姉ちゃん」という存在に憧れていて大好きな存在。
その大好きな人が「喉乾いたしちょっと うちに行こうよ」と私だけに囁いてきた。
兄達も他のみんなも遊びに夢中になっている。時間もまだある。
なんの迷いもなく頷き、手を繋いで洋子ちゃんの家に向かった。
その時の私はルンルンしていてスキップしながら
「私だけ呼ばれるなんて特別なんだ」
と幼心に思っていたのを今でもハッキリ覚えている。
親同士が仲良いのもあり家には何度も遊びに行っていたし、その日も洋子ちゃんの部屋で麦茶を飲みながらお人形さんで遊んでいた。
楽しい時間はあっという間に過ぎていく。
そして
あの頃の私は無垢すぎて、その後「悪魔」が現れる事なんか想像もしてなかったんだ…。
続
*架空の人物名です。
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