『ヘヴン』

川上未映子さんの作品です。う、に点々のヘヴンです。

小説って、登場人物が頭悪くても書いてる人は頭いいから、「この人こんな言葉知ってる?」とか「こいつがこんな言い回しできるかよ」と、口が悪いですがそんなふうに思いながら読んでることって、結構あると思うんです。

百歩譲って三人称、いわゆる「神目線」で書かれているものなら、それもなくはない。多少の違和感はありますけどね。でもまあそこは目をつぶります。というかそうしてくれないと読みづらくてしょうがない。

しかし一人称で書かれている小説は、当然私もしくは僕、俺が語っているものと思って読みます。中学生の男子なら中学生の男子が遣うような言葉で語ってくれないと、そこでここぞとばかりに作家風を吹かされても萎えてしまう。

でもこの本の登場人物たち、その彼らが遣う言葉は、彼らのその身の丈に合った、拙い、リアルな言葉遣いは、読み物としてはなんか要点を得てなくてイライラモヤモヤするんだけど、だからこそ余計に胸に刺さるというか、「この子ももう少し言葉を持ってたら世の中が幾分マシになるのに」という、同情を通り越した共感を誘うんです。

ただ一人だけ、いやに言葉を持っている、年不相応なやつがいて、これがまたそれだけにリアルで、こいつはこいつで怒りを通り越して感心すらしてしまったりするという。

この年頃の子たちの「言葉」をこんなに鮮やかに再現できるなんて、どれだけ綿密なリサーチをされたのか?はたまた、川上さんがご自分のこの頃の心情をしっかりと記憶してらして、それを完全再現してらっしゃるのか?

いずれにしても、すばらしいと思います。

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