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しんたろうの詩
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2021年2月の記事一覧

しじんのはか

詩「しじんのはか」

おとこにもおんなにも
こどもにもおとなにも
ぜんにんにもあくにんにもなれるこころを
しじんはかみのうえにさかせていきる

ゆえに
はいゆうがしをかくことはたやすいかもしれないが
はたしてかくことでうたえるだろうか

しじんは
〈こころというものにかたちがあったのなら
 このゆびでふれたのに〉
などとかきとめておきながら
ことばがことばというかたちをしていることを
あわれにおも

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あなたが呼んだから

詩「あなたが呼んだから」

わたしが今まで女として生きてきたのは
あなたがわたしを女と呼んだから

あなたが死ぬまで家だと呼んでいたのは
はじめから棺でした

世界はいつでもあなたに優しかった

(2018年4月「小文芸誌 霓 ⅹ」にて発表)

あし

詩編「あし」

ⅰ あし

いまこれから
きれいないびつのうえにたって
しじんたちのやかましいきょげんを
くちいっぱいにほおばってごらんなさい

ⅱ 夜ノとも

またどこかで老人たちが
芽を摘む愉しみを覚えた

たねほしい
たねほしい

暗がりで野菜や魚を食っていると
眼が潰れるのを近しく恐ろしくなるよ
背中の肉を齧れば齧るほど
歯の根っ子が疼いて
濡れた米を啜りたくなるよ

ひがおっかねえ
ひが

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