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しんたろうの詩
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記事一覧

歌うわだち

詩「歌うわだち」

ふたりの探りあてたおくちで■ときはな
たえまなく交わされた懇願が■たれたか
溢れおちたまがいものの涙を■らだにい
ふとどきな先端に擦りつけて■まいちど
山々の境でつきはてる今宵も■さだかで
             ■ないしお
訪ね来た指にうち鳴らされる■どきの愚
鈴口の吐いた音の姿をかりて■問が問う
驕り高ぶった素肌にせめよる■あいいれ
此れが何時ぞやのあかい符丁■ないあい

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ミミ

詩「ミミ」


 ミ
  ミ
   ミ
    ミ
     ミ
      ミ
       ミ
        ミ
         ミ
          ミ
           ミ
            ミ
             ミ
              
             ミ
             ミ
             が
             眠

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3人のプレリュード

詩「3人のプレリュード」

ぼくのペニスはぼくだけのもの、ほかのだれのものでもない。
きみのペニスはきみだけのものかもしれない、ほかのだれのものでもないかもしれない。
あいつのペニスはきみのものだとしても、きみのペニスはぼくのものになるかもしれない。
ぼくのペニスはかつてあいつのものだったけれど、いまだけはきみのもの。

(2020年12月「小文芸誌 霓 xiv」にて発表)

The landscape calls

詩「The landscape calls」

"It sways, it sways, the golden grasses."
"That singing voice is who are you chasing?"

Your voice, which used to be cute, now runs while stroking my mane.
The hill where your

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この世に言葉だけ

詩「この世に言葉だけ」

あんたとあたしむかしっから
この世間にふりまわされてばっかり
ものがありすぎてあまりにもありすぎて
あたしあんたに何を言いたかったかもう
わからないの
あんたにあたし何を欲しかったのかもう
おもいだせないの

もうあんたに何もして欲しくなんかない
もうあたし何もしてあげたくないのもう

これからありったけの涙ぶちまけるの
涙だけがでるのわかるのどうしようもなく
その涙をも

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詩「アスパラガス・貝」


あの時

貝の管がアスパラガスをしゃぶっている間に
どれだけ尊いことをして残せただろう

山が泳いで指が頭上をきる

口など何の意味もなさないと
あなたは丸い突起になってせがんでいたね

あの時あなたは笛だったのだ


(2012年12月ブログ「NёüT♴」にて発表)

クマさん

詩「クマさん」

ある日森の中で
クマさんに出会った
湾に沈めたはずのクマさんが
どこまでもついてくる

あなたの落とした小指
冷蔵庫にしきつめた臓器の
3番目の裏にありましたよ

夜の山に響きわたるクマさんの唄が
おわる頃にはタマコラサッサのサ

思いかえせば

詩「思いかえせば」

蕎麦より遅くのみほした一合が
嗅ぐことになる雨の匂いを告げていた
裏をかえせばまたかえすことになると
嘯いたのはたしかに私の箸

何方が何より先だったかはたして

(2019年9月Facebookにて発表)

さけ【羽切】

詩「さけ【羽切】」


さば・さけ・さば・さけ・さば・さけやけ

うなぎ・うさぎ・うなぎ・うさぎ・うなぎ
あわび・ほたて・あわび・ほたて・あわび
う・あゆ・う・あゆ・う・あゆ・う・あゆ
かえる・ばった・かえる・ばった・かえる
せみ・いなご・せみ・いなご・せみ・ひと



おやのしにめ みとどけ
はねられて とんだくび
おさめた しゅちゅうに
あわの はなさきほこり
また ひがくれてひとり


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だれかさんが今

詩「だれかさんが今」

夕日のしずむむらさきの空の
うらがわにたたずむだれかさんがいて
そのひとのせなかがとりあえず今は
さみしがってるふりして明日までの
さいてはきえゆく笑顔のてんてんを
はじかみながらもゆびおり数えてて

それでもしそのだれかさんがふと
思い出したみたいにふりかえって
とっくに忘れてしまったはずの
なんどめか知らない「サヨナラ」を
こちらのだれかさんに投げかけたら
それはうけと

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せんせいのしょうたい

詩「せんせいのしょうたい」

いつもつくえにすわって
ちいさくまがってる
せんせいのせなかをみてます
しかられるふりして
せんせいのめのおくのぞいて
よのなかみます
ぼくらのいのちは
たすうけつなんだよね
どげざするのは
すくないほうがいいもんね
ぼくもおくびょうなおとなになります

(2013年8月詩画展「TAXIPOOL」にて発表)

2秒

詩「2秒」

孤独から詩を産みなさいと言われて
詩を産むために孤独を探したけれど
会う人みんなが私を大事にしてくれるばかりで
私は詩を産めない日々を過ごす
だから詩を産めない今こそが私の孤独
いやこれは孤独なんかじゃない
詩を産めない私という時間
そんな私を見つめるというみんなの時間

(2018年10月Facebookにて発表)

母からの手紙

詩「母からの手紙」

元気にしてますか、あなたの母です。なんて
あなたを愛しく思ったことなどありませんが
思えばこんなわたし達を母娘と見なしてきた
この世間に感謝しなくてはなりません
念入りにあなたを手塩にかけたものですよ
あなたがひとの笑顔にまよい続けるように
いつも笑いながらよくたたいてあげました
あなたがずっとくだらない男に躓くように
何時までもお花畑の中にいてもらいました
あなたがイジメや

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詩「船」

かつてあのころわたしたちわれわれが忘れ去られた漁船にリブートした時誰もが待ち焦がれた南予を実は突き止めていたパラソル。棄てられた港を絶えず語りかける其々の骨組みに女は耳を傾けて今も戦時下のヒマワリ畑の道を股に挟んで血路を編んでいる。悲しい哉青い空はどうしたって青くどう足掻いても青く死ぬまで振り向いても青く角度を変えて見れば黄色。其れを問いただした少年が撃たれたから女や女をよく知る雑踏の

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