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新規就農の苦悩 〜開墾編〜 #13

さあ、農地やビニールハウスの目処が立ったところで、いよいよ畑の土づくりのスタートです。しかし、ここではさらなる困難が私を待ち受けていました。

というのも、祖父母の農地にしても別の地主さんからお借りすることになった農地にしても、ここ数年はまともな作付がされておらず、雑草も伸び放題の荒れた土地、いわゆる耕作放棄地になっていました。なので、兎にも角にもまずは畑の全面草刈りから開始しなくてはなりませんでした。

面積は4反歩と5反歩を合わせた9反歩。(ちなみに、1反歩は100m×10m。)うちには乗用式の草刈機はないので、その範囲全てを刈り払い機と手押し式の草刈機でひたすら刈り続けました。

夏場は雑草の成長が早く、刈っても刈ってもすぐに伸びてくるので、感覚的にはほぼ毎週草刈りをしているような気分でした。雑草の種類も背丈が低いものばかりならよいのですが、ススキやセイタカアワダチソウのような背の高いものに関しては、一回で全てを刈り倒すことができず大苦戦。

また、雑草ばかりではなく漆などの樹木が生えてきてしまっているエリアもあり、草刈機では手に負えずチェーンソーを持ち出す始末。農地を維持するという事がこんなにも大変なことなのかと、心の底から思い知らされました。

やっと草刈りがひと段落したら今度は土起こし作業。さすがに9反歩の面積をくわ一本で耕すのはちょっと厳しいので、ここはトラクターの出番!しかし、私はトラクターを持っていません。となれば、ここはまたやっさんに相談です。

耕うんしたい旨を伝えると、やっさんはすぐにトラクターを貸してくれる方を紹介して下さいました。農業関係者の繋がりに乏しい私にとって、やっさんは本当に心強い存在です。人のご縁と優しさによって農業をすることができていることに、感謝の気持ちでいっぱいです。

やっさんと共にトラクターをお借りしている様子

ただ、トラクターで耕うんしたらしたで大問題が発生。なんと、土の中から石ころ(可愛いものばかりではなく、岩や庭石のような岩石系も)がゴロゴロと出てきたのです。

トラクターで石がある畑を耕うんすると、ロータリーの刃が石に当たるのでトラクターは揺れながら強い衝撃を感じます。つまり、石ころゴロゴロ畑ではトラクターが常に大きく揺れながら強い衝撃を受けていることになります。

岩とわたし

私が乗っているのは借り物のトラクター。壊れないかとヒヤヒヤものでしたが、何とか無事持ち堪えてくれ事なきを得ました。

しかし、本当の難題はこのあと。畑一面に転がる石たちを取り除かなくてはならないのでした。これには私も絶望しました。

真夏の炎天下の中、家族にも手伝ってもらいながら手で運び出せるものはコツコツと。押しても引いても微動だにしない岩系は、重いものを運び出せる運搬車を使いながら撤去してゆきました。

石の撤去作業は季節が変わって秋まで続きました

そんなこんなで石たちは大体取り除いたのですが、まだまだ問題が山積み。次は畑の排水です。

地主さんから借りる農地は元々田んぼだったということもあり排水性が悪く、雨が降ると雨水が畑の表面に溜まってしまい、なかなか抜けていかないという状況でした。これは野菜をつくる上では、致命的な欠点となります。そこで、独立するまでには何とか改善したい。

ということで、排水性を良くするために緑肥を栽培することにしました。緑肥というのは、ある特定の目的にあった植物を栽培することで、土壌の化学性や物理性、生物性の改善を図る農業技術のことです。

今回は畑の水はけを改善するべく、地中深くにある硬い耕盤層を根っこの力で破壊してくれるイネ科のソルゴーとマメ科のセスバニアを栽培することにしました。結果的にはどちらの植物も順調に成長してくれて、少しずつではありますが雨水が抜けきるタイミングが早くなってきたように思います。

畑一面に広がるセスバニア

また、さらなる改善のため、地域にある乗馬クラブで出る馬のふんをいただき、今度はその馬ふん堆肥を畑に大量投入することにしました。馬ふん堆肥は、土壌をフカフカにし排水性を高めてくれる有機物を多く含んでいる貴重な資材になります。

地域の資源、馬ふん堆肥

これを大型トラックで何十トン分も運んでもらい畑に散布しよう思ったのですが、ここでまたまた大きな壁が。堆肥をまく機械がない…。

本来堆肥を大量に積んで散布する大型機械があるようですが、当たり前ですがそんなものを私は持っていないので、スコップを使って手で散布することにしました。

堆肥自体、水分はほとんど含んでいないのでそんなに重くはないのですが、何十トンも手作業でやるとなると、これはなかなかなの重労働です。腕はパンパンになるし腰にも相当負担がきます。以前もこのnoteに書きましたが、この作業をこなしていった結果、私は腰を故障してしまいました。

また、肥料の散布もそうです。畑の土壌診断をしたところ、phが酸性に寄り過ぎているということだったので中性に近づけるため、石灰資材を大量に投入しました。これも機械がなかったので手散布。足元が悪い中、中途半端な姿勢でまき続けていたので、かなり腰から背中にかけてハリを感じていたのを覚えています。

ひと夏で全部を手でまき切りました

ということで、農業はコツコツ手作業でやることはできますが、持続可能な方法でないとやっていけないということをヒシヒシと感じさせられる経験でした。

機械や施設などのインフラが整備されていると、効率よく、且つ、からだへの負担も減らしながら続けていくことができます。ただ、そのためにはまとまったお金も必要になりますし、それらの機械や施設を廻していくだけの経営形態も考えていかなければなりません。夢や想いだけでは続けていくことはできない、そんな現実に直面しています。

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