回答率10%アップ!聞き方のポイント(その3)
人との面談やアンケートで質問にうんざりしたり、答えにくい質問に嫌気がさしたことはありませんか?人に何かを聞くとき、聞き方や質問の構成が悪いと、回答者の負担感や抵抗感は大きくなってしまいます。
前回までは、回答者を困らせてしまう質問の仕方や、人が何かを評価するときに発生する歪みについて、以下のnoteで説明してきました。
今回は、回答者の抵抗感や負担を抑えて協力を得られやすくし、回答率を高めるための実践的なテクニックについて書いていきます。
◆回答の抵抗感を低減する工夫とは?
いきなりドキッとする質問ですが、このような答えにくい質問をした場合、回答者は正直に答えてくれない可能性があります。誰もが自分のことを悪い人間だとは思われたくないですから当然でしょう。嘘をつく割合を知りたい調査をしているとしたら、実態に合った結果は得られないでしょう。回答者の抵抗感を下げて正直に答えてもらうための工夫が必要です。
方法としては、自分を少数派だと思わせないように、Yesであることが一般的であることや、よくあることだと認める方法、第三者のことを想像させてワンクッションおいたり、経験があることを前提に頻度を聞き、選択肢のなかに「無い」を入れる方法などがあります。
例えば、次のような工夫をすることで正直な回答を得ることが可能です。
「△△の場合には、○○をしてしまうことがありますが、」といった前置きをして質問する手法は、「カウンターバイアス法」と言われ、回答者の抵抗感を抑える効果が高いといわれています。ただし、誘導質問となる可能性もあるため、バイアスを強く掛けすぎないこと、多用しないように注意する必要があります。
◆答えやすい質問構成とは?
抵抗感や負担を軽減するには質問の構成・順番も重要です。はじめに、面談や調査への協力を取り付けたとしても、最初にする質問が相手にとって答えにくければ、その後の回答は辞退されてしまうかもしれません。ファーストクエスチョンは、一見して誰にでも答えやすい質問を配置します。最初の質問に抵抗なく回答させることで、2問目以降もスムーズに進めることができます。
心理学的にも、最初の質問で協力的な人間という自己イメージが回答者の中で形成され、その後のやや踏み込んだ質問に対しても、回答者は自己イメージに対して一貫性を維持しようとする心理(一貫性の原理)が働き、抵抗感なく回答してもらえるようになります。これは、足をドアの間に入れて閉めることができないようにする様子に例えて「フット・イン・ザ・ドア・テクニック」と呼ばれています。
重要な質問はできるだけ前半に配置します。最初の質問に回答することで協力の意思を示したため、「一貫性の原理」が維持されており、モチベーションと集中力が高い状態で回答してもらえる状態といえるでしょう。
後半は、回答者の飽きや疲労によって、間違いやいい加減な回答が発生するため注意が必要です。重要な設問や理解するのが難しい質問、アンケートであれば回答に労力のかかるマトリクス形式(評価などの同じ尺度の選択肢を使って複数の設問に答えてもらう設問の形式)などの設問は後半に設けないようにしましょう。
最後は、プライバシーにかかわる質問やデモグラフィック項目(回答者の属性情報)の質問を配置します。この段階まで回答している人は調査を辞退することは少ないため、プライベートな質問だけでなく、やや踏み込んだセンシティブな質問を配置しても影響は少ないでしょう。
◆聞く順番もバイアスを生む?
気をつけたい質問の繋がり
環境への配慮の機運もあり、多くの人がYesと答えるかもしれません。しかしながら、次のような質問を先にした場合はどうでしょうか。
環境に配慮している人でも、エコバックを忘れて、レジ袋を使ってしまうことはよくあることだと思います。環境への配慮はレジ袋だけではありません。しかし、この質問を先行させることで、環境改善に貢献するよう心掛けているかという質問に影響が及び、Noという回答も増えてくるでしょう。このように先行する質問が後続する質問に影響を与えてしまうことを「キャリーオーバー効果」と言います。
これを回避するために、影響のありそうな関連質問の間に緩衝質問を挟むことが対処法といえるでしょう。但し、本来関連性のある質問がバラバラに聞かれると質問の流れやまとまりを悪くし、回答者にストレスを与えることになる点も注意が必要です。
選択肢の順番にも注意
回答をしやすくする時に用意する選択肢の順番も注意して配列しないと、偏りがでてしまうことがあります。アンケート調査では、選択肢の一番最初か、一番左に配置された選択肢が印象に残りやすく、選んでしまう傾向があます。これは「初頭効果」と言います。
特にインターネット調査では、クリックによって隠された選択肢をみるドロップダウン形式の質問と、全ての選択肢を一目で確認できるラジオボタン形式がありますが、ドロップダウン形式の質問の方が初頭効果が大きいとされています。インターネット調査では、デザインやスペースに制約がなければ、全ての選択肢を一目で確認できるラジオボタンを採用すべきです。さらに回答者ごとに選択肢の配列をランダムに変える工夫も効果があると言われています。
本稿では、抵抗感を抑える「カウンターバイアス法」、協力を取り付け答えやすくする「フット・イン・ザ・ドア・テクニック」など質問をスムーズに進める技術を学んで頂きました。また、「キャリーオーバー効果」や「初頭効果」など、聞く順番にも気をつける必要性についてご理解いただけたと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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