ビール醸造、仕込みで骨格がきまり、発酵で品格がきまる
仕込みで骨格がきまり、発酵で品格がきまる
私がビール造りをはじめた頃に教わり、今でも大事にしている言葉だ
好きな言葉だ
仕込み、は発酵前の麦汁をつくる工程
ここで大まかなビールのタイプがきまる
味の濃さ、ホップの香りの強さ、色、、、
それはどういうビール?と聞かれたときの説明に使う言葉たちがここできまる
黒ビール用の麦汁は黒ビールにしかならない
骨格、つまりとても重要なことがきまる
骨格は変えられない
大人になってから背を伸ばしなさいと言われてもできないのに似ている
発酵は仕込みでつくった麦汁に酵母を加え、アルコール発酵させる工程
酵母は麦汁のもつ糖分やタンパク質、ミネラル分を食べて、増殖する
酵母は酸素を吸って、呼吸する
けれども酸素を使わない嫌気呼吸もする
この嫌気呼吸で糖はアルコールと炭酸ガスに分解される
ビールのシュワシュワとした炭酸ガスは酵母がつくりだす
発酵は繊細だ
酵母の活性、麦汁の成分、発酵温度、、、様々な要因で艶かしくドラマチックに様子を変える
発酵中には酵母は様々な香りの成分を作り出し、ビールをビールたらしめる香りにする
酵母はヒトのためにビールを作っているわけではない
ヒトの好きな香りをつくることもあれば、嫌いな香りをつくることもある
それらを絶妙なバランスに仕上げる
ビールを造りはじめて何年経った時だったか
薄布が何層も積み重なってそこに光が当たったときの色味のように、人によって見え方がかわるような微妙なバランスを「品格」と呼ぶのだろうかと、ぼんやりと理解しはじめた
仕込みで骨格がきまり、発酵で品格がきまる
あらためて見ても
こんなにも奥深い表現があるのかと思う
端的で、解り易い
いや、解った気になり易い言葉だ
わかった気になってこの言葉を使ったら、
きっとビールはうすら笑っている
そんなに簡単じゃないぞ、と
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