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デザイナーは「かわいい」の研究を止めてはいけない。

あなたにとって「素晴らしいデザインとは」と聞かれた何と答えますか?

僕が駆け出しのころだったら、「誰が見てもかっこいいデザイン」「クライアントが喜ぶデザイン」と答えていたかもしれません。

経験が長くなるにつれて「誰が見てもかっこいい」は結局自分目線でしかなかったことに気が付きましたし、クライアントが喜ぶだけでは足りないということも考えるようになりました。

広告代理店で4年半「広告効果」と戦いながら働くことで、素晴らしいデザインとは「効果が良いデザイン」「ユーザーアクションにつながるもの」という答えができるようになりました。

デザインが公開されるにまずはクライアントにOKを出してもらう必要があるので、気に入ってもらうのは大前提。そして、公開されて効果が良かったことで初めて「あれは良いデザインだった」と客観的に評価するというイメージです。

ただ最近ではそれだけでも何か物足りないなと感じるようになりました。

クライアントが気に入っている。そして効果が良い。

これはクライアントワーク経験の長いデザイナーが、日々課題解決を繰り返すことで導き出した「一種のデザインの正解」みたいなものです。これがわかるようになっただけでも、ここまでよく頑張ったなと自分を褒めてあげたい気持ちも少しあります笑。ただこの先をやっぱり考えてみたい。

これに何が足されたらより「素晴らしいデザイン」になるだろうか?


クライアントが気に入り、効果が良い、そしてユーザーが「かわいい!」と叫ぶデザイン

「素晴らしいデザインとは」の答えを今の僕なりに考えてみました。クライアントワークの正解に「見た人がハッピーになる要素があること」が足りないと思っていた何かなのかも。そしてこのハッピーは「かわいい!」と感じたかどうかではないかと思います。

クライアントは、ユーザーがサービスを利用することが目的ではありますが、そのユーザーのテンションを上げることは、目的達成にプラスで1つ乗っかる感じがします。

ユーザーが盛り上がる→サービスを人に勧めたくなる

このユーザーアクションが発生すること自体を、クライアントがデザイン発注時に要件に含めることはほとんどないですが、このアクションが実際に起こったらクライアントは喜ぶしかないですよね。

クライアントワークでは表現に制約がある場合がほとんどなので、どこまでできるかはデザイナー一人の一存で決められませんが、可能であればこの「素晴らしいデザイン」を目指して作っていきたいなと思いました。


かわいいには「変化が早いかわいい」と「普遍的なかわいい」がある

ここで「かわいい」についての概念に少し触れておきたいと思います。

その時代のトレンドカラーやデザインによって作り出された「変化が早いかわいい」は一過性のもので、時間とともに「かわいい度」が薄れていきます。デザインが古く感じられ、やがて「ダサい」と言われるようになります。若年層ターゲットの場合こちらの「かわいい」の表現に重きを置く必要があります。ターゲット層は狭く絞られますが、拡散されたり話題になったりする可能性が高いのがこちらのかわいい。

一方「普遍的なかわいい」は、赤ちゃんや動物、パンダなど、どの時代や年齢に関係なく人がかわいいと思ってしまう、かわいいのこと。パステルカラーや、丸みを帯びたデザインで親しげを感じられるようなイメージです。ターゲットの年齢層に幅があったり男性も女性も関係ないといった場合、簡単に言うと若年層以外のターゲットのときはこちらの「かわいい」が有効かと思います。

両方を知った上で、選んでデザインに取り入れてみましょう。


「かわいい」「かわいくない」判定

デザイン制作していると、クライアントやディレクターから成果物に対して「かわいい」とか「かわいくない」とかでフィードバックされることがあります。

この場合デザイナーは良かった・悪かったという単純な判断だけではダメで、「かわいい」は何がかわいかったのか、デザインのどの部分・要素がかわいいと感じられたのかを考え、それがどんな「あしらい」や「色相」だったかまで細かく分析して把握しなければなりません。

特に「かわいくない」という判定がでたときは、より深く分析する必要があります。多くの場合デザインの装飾など細部だけでどうにかしようとしてもうまくいかず、デザインの方向性から見直したり、全て作り直しまで戻さないといけないケースも少なくありません。

その場合、かわいいの選択の仕方が間違っていないか、からいったん見直した方がいいかも知れません。あとは、一過性のかわいいを選んでいた場合、それが本当にトレンドのデザインになっているか、チェックしてみることも大事です。中途半端で不自然な「かわいい」はユーザー離脱する可能性があります。


ちょっと女性目線に寄り過ぎていないか

「かわいい」ばっかりで「かっこいい」は研究しなくていいのかって思うかも知れませんが、結論「しなくても大丈夫」です。笑

男性が「かっこいい!」と言うよりも女性が「かわいい!」と言う回数の方が圧倒的に多いからです。

それに流行を作るのは女性だと言われています。男性ばかりに受けが良くても流行になることはほとんどありません。タピオカミルクティーを思い浮かべてみてください。男性ばかりが、お店に行き、飲み、写真を撮って、「かっこいい!」といって、インスタグラムに投稿していたとしたら、今の様な流行にならなかったはずです。

きっかけが男性だったとしても、どこかのタイミングで女性が「かわいい!」と言って発信・拡散しなければ、流行は生まれないというのが私の持論です。

男性が身につけるもの、アイテムもしかり。必ず「女性受けするか」という判定があるものだと思います。そのアイテムを見た女性が「かわいい!」と言うから男性が身につけようと思う訳で、人気のアイテムになるという構図です。

女性の場合は、女性同士で「かわいい!」と言い合うので、やはり「女性受け」の判定になる傾向だと思います。

ということは、

男性向けのサービス含め、世の中の流行はすべて女性に受け入れられるかどうかにかかっているわけです。女性目線になり過ぎているのではなく、世の中がそうなっているから、そこにデザイナーが合わせていく方が自然だということですね。

よく駆け出しの男性若手デザイナーには「かわいい」が欠如していることがあり、「かわいい」要素は何かしらで取り入れていこうねと指摘することがあります。

まずはクライアントの要件を満たすデザインコンセプトで、「普遍的かわいい」か「トレンドかわいい」のどちらかを取り入れようということです。

こういうと難しく感じるかもしれませんが、そんなこともなくて。

例えば「普遍的かわいい」の中には、桜の花の薄ピンクは含まれてると思いますし、角丸のボタンも角ばっているよりは「かわいい」印象に近づけます。「トレンドかわいい」だったらデザインのテイストやトレンドカラーを取り入れるだけでユーザーに近しい印象になるので、それぞれケースバイケースで「かわいい」をうまく取り入れるといいのかなと思います。


まとめ

デザイナーは「かわいい」を意識して研究していく必要があります。研究とは言語化したり、自分の認識を広げていくといういうこと。そしてそれをデザインに反映させましょう。

クライアントにOKを貰うためには、まずクライアントの好みを理解して、気に入ってもらえる「かわいい」を作れるかどうか。そして、ユーザーが目的を達成できるよう、UIや視認性を最適化する。

さらに、デザインを見たユーザーが「かわいい!」と叫んだとしたら、それはもう世の中のトレンドを作っていける「かわいい」上級者なんだと思います。

せっかくなら、そんなデザイナーを一緒に目指していきませんか。

では、また。

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