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夏 第414回 『魅惑の魂』第2巻第3部第94回

 ノエミは、自分を優位な方向に向けられると気づいたときに、取るべき態度を知っていた、それを誇りにして安心してはならない、それをよく知っていた。彼女は時間を無駄にはしなかった。今日まで試練を経験し、自分が犯した過ちも理解できるまでになっていた。男を引き留めておくには、愛だけでは十分ではなく、男のプライドと知性を媚びて煽てなければならないことが、判っていた。そしてフィリップが今の彼女に驚かされることもあった、彼が現在も身を投じている論戦に関心を持つために、彼女が苦労しながらも調べていたのだった。彼はその動機を疑っていた。しかしノエミの関心が本物かどうかは関係なくそれに喜びを感じていた。そしてノエミが賢いことも知って喜んだ。彼女もそれをもう隠さなかった。彼女がアネットから押しやられそうになったのも賢さの有無だった。彼女はその武器に、自分の改良を加えて完璧なものにした。彼女もアネットと同様に、議論の方向にまでは関与はしなかった。それはすべて彼女の夫であって主人である彼に任せておいた。彼女は自分の役割として、彼の勝利のための巧妙な手口を暗示するだけに止めておいた。フィリップは彼女の巧みな創意に感心させられた。

つづく

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