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夏 第415回 『魅惑の魂』第2巻第3部第95回

 当時の議論の闘いは極端なものになって暴力的とも観えるほどに変化していた。ノエミは男たちのその争いに嫌悪と退屈を感じていたが、それを克服して身を投じることが必要だと理解できるように変化していた。彼女は社交の機会があれば、夫が掲げる機知に富んだ提案を、周りの眼を気にすることなく支持し始めた。優雅な彼女から飛び出してくるのは、ユーモアであり、笑顔の熱情、パリっ児の機転、そして熱烈な真剣さなのだった。それは少々世間を騒がせることになったが、結果としては多くを楽しませた。さらには若い女たちで社会的偏見から自由であることを喜ぶ者を、僅かではあったが自分の味方に引き入れた。ノエミ自身は偏見とは縁を切っていないが、彼女の賢さがそれを顕わにすることはなかった。そして一見は不遜な態度を投げているように観えても、正直で道徳を重んじる人たちの陣営でも彼女は憶えが良くなるように努めていた。貧しい人たちにも産児制限の権利を与え、大勢の子どもを国家と社会に生み出すのは富裕層の義務であると真剣に主張した。彼女は結婚生活は七年になりながらも、その義務を果たす時間を見つけられなかったことが、そこに秘められた、だが彼女は英雄的だった、今それを見つけたのだから。

つづく

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