労務担当者 連続小説「小野寺さん」 (1/12)
これまでFacebookページ、Twitter で発信をしておりました、労務担当者連続小説をnoteへも投稿いたします。わたしたちTECODesignは、ひとりでも多くの小野寺さんをサポートしたいと考えています。ぜひご覧ください。
※この作品はフィクションですが、非常にリアリティがあるため、過去に給与計算のご経験のある方は特にハンケチをご準備ください。
First Season Episode1
〜給与計算担当・小野寺恵美子SIDE〜
毎月、月初は給与計算で忙しい。
育休も終わり職場復帰。わたしは今、1歳半の子供を育てながら、新卒で入社した会社で勤め続けている。ルーチンと言えばルーチンだ。しかしどうしても”この期間にやらなければならない業務であり、自分しかできない業務”がまさに社内の給与計算業務。
時短勤務で働きやすい職場とは言っても、産休前と比べて仕事が減った訳ではない。むしろ業務量そのままで給与と時間が減っただけ。時短控除の分、気づけば新卒の社員よりも給与は低い。忙しさで考えないようにはしているものの、たまに虚無感が襲う。完全な成果主義だとしたら、産休前と同額をもらっていられるはずなのではないか?
チラっとデスクのうえのカレンダーに目をやる。今月は祝日が入った関係で、給与計算期間がいつもより短い。ただでさえギリギリだというのに。
いつものように子供を保育園に迎えに行く。「おかあさん、今日もお疲れ様です。あかりちゃん、午前は元気だったんですけど、16時ぐらいからなんだかぐったりとしてきちゃって。熱が測ったら37.5ありました。お迎え時間が近かったんで、おかあさんに電話連絡はしませんでしたけれど…」
はあ…また、熱。
こういう大事な時に限って、タイミング悪く熱を出すのが子供。ああ、きっと明日も保育園には連れていけないだろうな。夫は出張で不在、近所には頼れる親族もいない…でも、やはり同僚に代わってもらえる状況ではない。
結局翌朝は子供をいつもの病児保育へ連れてゆき、わたしは泣く泣く出社した。「ごめんね、ママなるべく早く迎えに来るようにするからね」…別れ際に泣きつくあかりに謝ったのはもう何度目になるだろう。早く迎えに来ると言っておきながら、来られた試しなんてない。守れないと分かりながらする約束がいけないことぐらい分かっている。「こんなに板挟みになって…泣きたいのはこっちだよ」とさえ思ってしまう自分が呪わしい…子供に注ぐやさしさの残量が最近減っている気がする。
いつも以上にタイトなスケジュールの給与計算を、なんとかギリギリで完了させた。世の給与計算担当は、皆こんなに苦しんでやっているのだろうか?本当に?
「給与計算なんて、我が子を病児保育に預けてまでしたい仕事じゃない!」――――
自宅に帰っても家事と育児で休む暇はない。常に疲労感に見舞われていた恵美子の脳裏には、いつしか「退職」と言う言葉が浮かぶようになった。
第2夜へ続く...
この小説を書いた
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