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【「クララ」10月号】スウェーデン王立バレエ、佐々晴香さん未公開インタビュー!

今注目のダンサーやアーティストに、プロになるまでの道のりや舞台への想いを語ってもらう巻頭インタビュー「キラリ★輝く人」。
現在発売中の「クララ」10月号は、スウェーデン王立バレエのプリンシパル、佐々晴香さんが登場してくれました!

巻頭

素敵なエピソードをたくさん語ってくれた佐々さん。誌面では入りきらなかったお話をこのままにしておくのはもったいない……そこで、特別に未公開インタビューをお届けします!

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Q スウェーデン王立バレエはどんなカンパニー?


『白鳥の湖』『眠れる森の美女』などのクラシックの演目を中心に、マッツ・エックやイリ・キリアンなど現代振付家の作品も上演するカンパニーです。約70人のダンサーが所属していて、私を含めて6人の日本人ダンサーがいます。
 ダンサーは、どちらかというとテクニシャンな人より感情表現が得意な人が多く、『ジゼル』や『ロミオとジュリエット』などのドラマティックな作品が得意。みんな舞台上でもダンサー同士のコミュニケーションを大切していて、私自身ジゼルを演じた時は舞台上でアルブレヒトの想いを感じたり、お母さんとのやり取りをしたりと、ダンサー同士のコミュニケーションを楽しみながら踊りました。そこから新しい表現が引き出されることも多いんですよ。


Q 芸術監督はパリ・オペラ座の元エトワール、ニコラ・ル・リッシュですね。リハーサルはどのように?

 
 ニコラのコーチングは、まずビジョンを共有してくれるんです。「僕はこういうのが見たいんだよね」とイメージを伝えてくれて、あとは私に考える幅を与えてくれます。私にとってはすごくやりやすいですし、とても建設的なリハーサルができるのでありがたいです。
 たとえば、ピケ・アラベスクはピケでパッと立たないで、地面に平行に体を滑らせるようにスーッと立ってほしいといわれます。でも、これは本当に難しいこと。ダンサーにとっては、ピケを大きく踏み出したほうが、もし体幹がズレてしまっても持ち直せるから安心(笑)。一方で、スーッと滑らせるように立つのは、ほんの少しでも重心の位置がズレたらもうおしまいなんですよ。繊細なところで動かないといけないし確実なテクニックを持ってないといけない、でも見え方は断然こっちの方が美しい……そういった細やかなところにも気を配り、ニコラと一緒により良い舞台を作りたいと考えています。
 また、走り方も役柄によって明確なイメージがあって。『白の組曲』のシガレットの踊りは、走って舞台に登場するのですが、それは煙草を吸っていてリハーサルに遅れたという設定なんだそう。でも、その彼女はエトワールだから、「え?遅れてなんかないわよ」っていう感じでやってほしいといわれました。
 ほかにも『ジゼル』の第2幕は、走っているのがわからないくらい体を引き上げて走ってほしい、『眠り』のオーロラ姫は、1幕は無邪気に小股で、2幕は空気感のある歩き方、3幕は冠をつけているという意識を忘れずに歩くといったように雰囲気を変えてほしい、と具体的な指導をしてくださいます。

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「白の組曲」©Kungliga Operan/ Markus Gårder

Q これまで踊ったなかで、印象的な作品は?

 どの作品も思い出深くて決めきれないのですが、そのなかでもとくに印象的な作品についてお話しします。

『死と乙女』(レオ・ムジック振付)
 以前在籍していた東京シティ・バレエ団で踊らせてもらった作品です。体が壊れてしまうんじゃないかと思うくらい、思いっきり体を大きく使う振付が新鮮で。自分の踊りやすいコンフォート・ゾーンから「もっといける!もっといける!」と無理やり押し出されるような感覚を味わいました。
 じつはこの時に振付家のレオから、「晴香は絶対ヨーロッパで踊りなさい!」と強くいわれて。そんなにいわれるなんて、ヨーロッパで何が学べるんだろう?行ってみたい!と海外で踊る気持ちが固まりました。

『精密の不安定なスリル』(ウィリアム・フォーサイス振付)
 スウェーデン王立バレエの前に所属していた、ドイツのドルトムント・バレエで踊った作品。フォーサイスの作品に以前から憧れていたので、踊れてとても嬉しかったですし、楽しかったです。ただ、これまで踊った作品のなかで1番きつい作品(笑)。立ったり、回ったり、跳んだりの振付が最初から最後までぎっしりつまっていて、15分間全速力で走り続けるようなイメージです。

『グレイエリア』(デイビット・ドーソン振付)  
 スウェーデン王立バレエに入団後、初めてソリストの役をいただいた思い出の作品です。この作品を踊ったことをきっかけに、ニコラ監督から様々な作品にキャスティングしていただけるようになりました。

佐々さん未公開_グレイエリア


『眠れる森の美女』(マルシア・ハイデ版)
 入団1年目のシーズン最後に出演した作品です。はじめはフロリナ王女でキャスティングされていたのですが、いざ最終的なスケジュールが出たら私がオーロラ姫、しかもファースト・キャストになっていて!
 発表があってからは、とにかく必死でリハーサルしました。スウェーデンのオペラハウスの斜めの床でローズ・アダージオを踊ると考えたら、緊張とプレッシャーがすごくて……。初めての通し稽古の時は何度もトイレに行くほどでしたね(笑)。スウェーデンのお客様はクールであまり歓声をあげることはないのですが、ローズ・アダージオを踊り終わったあとに歓声を上げて、スタンディングオベーションしてくれたのは忘れられません。

『ジゼル』(ナタリア・マカロワ版)   

ミラノ・スカラ座の元エトワール、マッシモ・ムッルさんとの『ジゼル』のリハーサルエピソードは、「クララ」10月号でチェック!

佐々さん未公開_ジゼル

ジゼルを踊り終わったあとに、プリンシパル昇格の発表が! ナタリア・マカロワと。「ナターシャもとっても喜んでくれました」

Q 子どものころはどんな生徒でしたか?

 とてもシャイな性格でした。とくに親の仕事の都合でアメリカに住んでいた時は、英語が得意ではなかったのもあって、会話をするのが恥ずかしかったんです。さらに負けず嫌いなところもあったので、もし間違った英語を使ったらと思うと、自分が許せなくて(笑)、頭のなかで完璧にセンテンスを作ってからでないと喋りませんでした。
 こんなにオープンな性格になったのは、ドルトムント・バレエに入団してから。様々な価値観に触れて、自分がオープンでいたほうが学べることも多いですし、結果的に自分のためになると思ったんです。


 
佐々さん未公開_中1アメリカ

中学1年生の時。アメリカで通っていたミシガン・バレエ・スクールにて

Q プロのバレエダンサーを目指すみんなへメッセージを!


 小さい時に想像していたバレリーナは、素敵な衣裳を着られて、いろんなキャラクターになれて……とキラキラしていました。もちろん今でもそれは変わりませんが、ここまでくるのは本当に過酷な道のりでした。もしダンサーを目指すなら、「今目の前のお稽古をしっかりやろう」というのが一番のアドバイスですね。夢を見るのはいいことだけれど、上ばかり見すぎないように、毎日のクラス・レッスンを大切にしてください。
 舞台はライブなので、そこで得られる幸福感や感動はほかの何にも変えられないもの。ある種麻薬みたいなもので、それが欲しいからずっとずっと踊り続けるんですけど、少しでも半端な気持ちでやると、それはすぐ踊りにあらわれてしまいます。だから、一生レッスンする覚悟を持って臨んでください。ダンサーにとっては、クラス・レッスンだけが頼りです。

Profile
佐々晴香/神奈川県出身。5歳よりバレエを始める。2012年ヒューストン・バレエ・スクールに留学し、13年東京シティ・バレエ団入団。スタジオカンパニーを経て16年にドイツのドルトムント・バレエ入団。17年スウェーデン王立バレエにセカンド・ソリストとして入団し、19年にプリンシパルに昇格。主な主演作に『眠れる森の美女』『白鳥の湖』『ジゼル』など。
Instagram:@harukasassa

写真:佐々晴香さん提供

尊敬するル・リッシュ監督との出会いや、クレールマリ・オスタからフレンチ・スタイルを学んだ時の話など、さらに詳しいインタビューは「クララ」10月号でチェック!

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