Kindle Unlimited(KU)考

Kindle Unlimited(KU)考。
すでに出版している本のうち1冊について、新たにKUの対象にしてはどうか、とアマゾンからお誘いが来たという。キンドル本の売れ行きの良さを見て、KUの対象になればもっとたくさんの人に読んでもらえて、順位も上がって、しかも儲かりますよ!ということらしい。

KUは、アマゾンに会費を払っていれば読み放題の本。最初の本である「自分の頭で考えて動く部下の育て方」は最初からKUだった。読み放題だから、アマゾンの会員が気軽に手に取り、読んでもらいやすくなるし、その分、アマゾンでの順位が上がりやすくなるらしい。実際、この本は常にキンドル本では順位が高かった。

で、KUになったその本の売り上げはどうかというと。大したことない。アマゾンでの順位は確かに高いのに、「その順位でたったこれだけ?」という金額。これはおそらく、アマゾンプライムの会費が定額制だからじゃないか、という気がする。

アマゾンプライムの会員は、その月で1冊しか本を読まなくても、100冊読んでも、同じ会費しか払わない。どうせたくさん読めるなら、と、たくさん読むのかもしれないけれど。もしそうだと仮定すれば。

月100冊読んでも、月額500円。だとすると、1冊に5円ずつの売り上げということになる。1冊1000円以上もする本なのに、たった5円!まあ、月100冊は大げさとしても、月3冊だとして、1冊170円弱の売り上げ。1冊1000円の時と比べると、大幅売り上げ減。

KUの場合、1ページごとに売り上げを計算してくれるという。お客さんが最後まで読まなくても売り上げになるなんて!と思うけど、200ページある本のうち10ページしか読まなければ、20分の1しかお金にならないということ。先程の170円を20で割ったら、8.5円。ちょびりんこ。

まあ、もちろんもっと複雑な計算をしているのだろうけれど、月額500円しか払わないのに1冊1000円以上する本を何冊も読めるというだけで、本の売り上げが大きく落ちることが分かる。その人がその月に1冊だけ読んだとしても、売り上げは500円と、本の価格の半分でしかないのだから。

ところで、アマゾンのキンドル本のランキングをみると、上位はすべてKindle Unlimitedなのだという。なるほど、見てみるとその通り。これ、何かに似ている。あれだ。大手小売店の陳列棚にプライベートブランドが所狭しと並んで、ナショナルブランドが分かりにくい場所に追いやられている、あれ。

出版社としては、アマゾンで上位ランクに入るのが業績評価になるだろうから、KUにしたくなるのは分かる。でもきっとこれ、売り上げ、小さくなるんだろうな。実は、KUになっていないキンドル本の売り上げ、KUになっている本よりよっぽど多い。KUになっている本の方が順位高いのに。

サブスクリプション(定額制)は世の流れ、それに逆らっても仕方ない、というのが出版社の諦めにも似た感覚らしい。けれど、定額制は、出版社やレコード会社にとって非常に厳しいものではないかと思う。月額500円という小さなパイを奪い合うんだから。

音楽でも定額制が普及しているらしい。どれだけたくさんの楽曲を聞いても、月1000円程度らしい。CDとかを買ったら1000円以上売り上げられるのに、音楽を100曲聞いても1000円。1曲当たり売上10円にしかならない。定額制は、小さなパイの食い合いになる。

サブスクリプション(定額制)は、音楽クリエーターたちの生活を脅かすものではないだろうか。これでは、トップ歌手以外は生活できないほど売り上げがない、ということになりかねない。

今回、KUへのお誘い、受けてみるつもり。私の仮説では、キンドル本の順位は大きく向上したとしても、売り上げは大きく落ちる。サブスクリプション(定額制)の対象商品になることは、クリエーターにどんな影響を及ぼすことになるのか、身をもって体験したいと思う。

結果については、またまとめてみたいと思う。サブスクリプションの問題点を、身をもって味わうことでどんなことが起きるのか。実験、実験。

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