中学英語の学び方(リスニング除く)

中学生の方から学習法を尋ねられた。国語の学び方は前にまとめた(https://note.com/shinshinohara/n/n2bf17320bee1) けれど、他の教科についてはまとめていなかった。実は以前つぶやいたことがあるんだけれど、もう一度、まとめてつぶやいてみる。まずは英語。

ここで紹介するのは、あくまで受験のための英語学習法。あ、リスニングは私の時代にはなかったし、そもそも私自身大の苦手なので、そっちは自分で何とかしてください。中学英語の読み書きで点数を伸ばす方法について。これをきちんと実施したら、ペーパーテストで80点以上採れる。

用意するのは、英語の教科書のみ。1年間で1冊だから、3冊だけ。基本、他に手を出さない。授業中に先生が教科書の英文を全部和訳していってくれていたら、それを全部書き留めた授業ノートを用意する。もしそれがないなら仕方ない、教科書に対応した教科書ガイドを購入する。

まず、授業ノートか教科書ガイドに書いてある和訳と英文を1パート(レッスン1つにパートは3~4個)分、代わりばんこに5回読む。読み終わったら和訳だけを見て、英文を暗唱する。もし途中でつまづいたら、また和訳と英文を交互に3回読む。また和訳見て暗唱する。

最初から最後までつまづかずに暗唱できるまで、和訳と英文を3回読む、をひたすら繰り返す。もしつまづかずに暗唱できるようになったら、今度は和訳だけ見て、ノートに英文を書く。もし途中で少しでもつまづいたら、和訳と英文を見比べて、また和訳だけを見て英文を最初から書き直す。

「さっき、ここまで書けたんだから、途中からでいいや~」はNG。必ず最初から書き直す。こうして、和文だけ見て英文を書く、途中でつまづいたら和文と英文を見比べて、また英文の方は見えないようにして、和文だけ見て英文を最初から書き始める。途中でつまづかずに最後まで正確に英文を書けるまで。

もし、ピリオドやコロン、iの点などを一つでも忘れたら、もう一度最初から書き直し。そうした厳しめのやり方で、和文を見るだけで英文を最初から最後まで正確に書けるようになるまで繰り返す。もし1つのパートを書けるようになったら、次のパートでまた暗唱、そして和文を見て英文書き取り。

これを英語の教科書3年分(3冊分)やり終えたら、ペーパーテストで80点は採れる。参考書とか問題集とか、余計なものに手を出す必要はない。教科書には文法の説明もあるから、暗唱と英訳の作業の合間合間に読めばそれで十分。

なんでこんな愚直な方法で点数が取れるようになるかというと、いわゆる基本文型というやつが頭に入るかららしい。暗唱と英訳で英文が頭に叩き込まれるので、あとはその文章の単語を入れ替えれば、他の文章を自在に作成できるようになる。英語が苦手な人は、これをやってみるとよい。

昨今の中学校で困るなー、と思うのは、教科書以外の教材やプリントをたくさん出すこと。私はこれ、ムダ、無意味、もっとはっきり言えば有害だと思う。教科書だけでたくさん。教科書の英文を先生が和訳し、それをノートに書きとらせたら、それだけで受験英語を習得する材料は整う。

もちろん、基礎がしっかりできていて、応用力をつけたい(すでにテストで80点以上を安定してとる実力のある生徒)というケースなら、教科書以外の教材に手を出しても構わない(でも、あまり実力をつけるのに役立つと思っていない、暇つぶし)。しかし、それ以下の子にはむしろ有害。

私(50歳)より若いと、非常に通塾率が高くなり、教科書なんかで学んだことがほとんどない、という人が結構多い。だから、教科書なんかで学力つくはずがない、と、学校教員でさえ信じてしまっている人が少なくない様子。けれど、私は教科書以外に手を出したことがほぼない。塾生にもそう指導した。

ペーパーテスト80点未満の生徒は、基本文型が頭に入っていない可能性がかなり高い。70点以上取っていても、あいまいな部分がかなりある。あまりに多様な教材に手を出すと、かえって情報過多となり、わけが分からなくなる。基本文型はたった一個でよい。それを完全に覚えた方がよい。

京都の町は条里制になっていて、慣れていない人は道を覚えにくいらしい。そんな京都の街並みを覚えるコツは、縦(南北)の道と横(東西)の道をそれぞれ1本だけ覚えてしまうこと。私の場合、川端通と今出川通。それより上か下か、右か左かで、少しずつ道を覚えていくと覚えやすい。

いわば「座標軸」を決めて、x軸にプラスかマイナスか、y軸にプラスかマイナスか、決めるようなもの。
英文の基本文型もそれに似て、「座標軸」。ところが教科書以外の教材をたくさん与えると、この座標軸が揺らいで混乱する。とくに80点未満の子は。

80点以上の子は、「座標軸」が動いても自由自在にふるまえるくらいに応用力がついている。しかし80点未満の子は、座標軸がふらつくと何をやっているのか混乱し、分からなくなってしまう。自分に実力がついたのかつかなかったのかも判断できなくなる。座標軸は、最初は動かしちゃダメ。

というわけで、教科書以外の教材に手を出すのは、私はお勧めしない。教科書の暗唱と英訳を完全マスターしてからにした方がよい。完全マスターしたら、「なんだ、基本文型の一部(単語)を置き換えるだけなのか」ということがよくわかる。それまでは余計なことをしないに限る。

このあたりの話を、小さい頃から優等生で東大京大にすんなり合格したような人にすると、話がちっともかみ合わなかったりする。こうした優等生たちは、「たくさんの文を比較検討したほうが文法は深く理解できるじゃないか」と考え、80点未満の子にもその学習法を押し付けるケースをよく目にする。

しかしこうした「優等生」たちは、自覚できていないことがある。水面に浮かぶ水鳥のごとく、上は対して動いていないかに見えて足が高速でバタバタ動いているように、優等生はたくさんの英文を頭の中で高速で繰り返し咀嚼している。その処理量たるや膨大。だから理解し、法則まで見つけてしまう。

しかし80点未満の生徒、特に70点以下の場合、ほとんどの英文が「はじめましてこんにちは」状態。たくさんの文例を比較検討し共通点を見つけるような話では全然ない。初めて出会う未確認物体にどう対処したものか、と戸惑っている状態。とても優等生のマネはできない。

たくさんの文例を比較検討するような真似は優等生にしかできず、80点未満の生徒はまず、基本文型を1個、完全に覚えてしまうことが大切。浮気しない。そしてこの方がかえって、応用力を身に着けやすい。

これは私の仮説なのだけれど、どうも人間は、たった1個の事例をしゃぶり尽くすように観察したほうが、その事例に含まれているさまざまな普遍的法則を感得しやすいのでは。それについては別のところでまとめた(https://note.com/shinshinohara/n/n1356960b8418) けれど、これは80点未満の生徒にあてはまりやすいように思う。

たくさんの文例を比較検討することで法則を見つけるという優等生のやり方は、80点未満の子には通じにくい。むしろ成績の伸びが悪い。しばしば、東大京大の指導者は、「勉強の苦手な子」の指導が上手じゃないのは、優等生にしか通じない学習法を押し付けている面があるように感じる。

ちょっと余計な話になってしまったけれど、中学英語の(リスニングを除く)学習法は、
「英語の教科書の暗唱と英訳を完全マスターしてしまえ!それ以外の教材に手を出すのはその後だ!」
ということになる。
「それ以外の教材」にしたって、受験する高校の過去問10年分と、模試で十分。

ここで紹介したのは、あくまで高校受験を克服するための中学英語(リスニング除く)の学び方であって、英語を話せるかどうかは別の話。ちなみに私は英会話がまるでダメ。読み書きはまあそれなりだけど、聞く話すがまるでダメ。生きた英語を学びたい場合は別の話。私以外に聞いてほしい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?