なぜ部下は自分で考えて行動しないのか
部下が自分の頭で考えて行動してくれない、とお嘆きの方は多いように思う。いわゆる指示待ちばかりで、自分で状況をよく観察し、何をすべきかを考えてほしいのに思考を停止し、指示が出るまで待ってる部下の多いこと、とお嘆きの上司をよく見る。
しかし私の見るところ、思考停止に陥ってるのは当の上司が原因であることが多いように思う。
部下が指示待ちとなり、自分の頭で考えなくなったのは、自分の頭で考えて行動したことが誤りだと叱られた経験があるためではないか。考えて行動した結果、叱られるなら、「指示受けてから動こう」となる。
上司の言う「自分の頭で考えて行動する」とは、上司である自分の思い描く正解を想像し、その通りに行動する、という意味のことが多いように思う。しかし人間はエスパーじゃないんだから、上司が心に思い描いてる答えなんか分からない。それを想像できなかつたからと言って注意されるのは理不尽。
部下が部下なりに考えて行動したことを「自分の頭で考えて行動した」と評価しない上司は、「俺の心の中を言い当てろ」と言ってるようなもので、無茶だと思う。部下は経験豊富な上司と違って、経験の蓄積がない。目の付け所はどこかも分からない。
だから自分の気づいたことを材料に考えても、抜け落ちがどうしてもある。なのに後から「少し考えればこれが大事なことくらいわかるだろう!」と叱られても、理不尽としか思えない。こんな理不尽な叱られ方をしたら、指示を待ってから動こう、自分で考えるのはやめにしよう、となってしまう。
もし部下に、自分で考えて行動してもらいたいなら、たとえ誤りであろうと部下が自発的に考え、行動したことを評価する必要がある。「そうか、君はそう考えてこれをやったのか」。能動的に動いたこと自体は、評価すべきことのように思う。その上で、部下にはない材料を提供し、
「君はまだ経験がないのでこれに気づかなかったのは仕方ない。これは指導する立場の僕のミス。ただ、これらも考慮する必要があるので、次からはこれらにも目配りして進めてくれるかな」と言えば、部下はそれを考慮に入れた行動を取ってくれるだろう。
部下は考える力がないのではない。考えて行動したことが否定され、叱られたものだから、考えることをやめ、指示が出るまで待つことにしただけのこと。実のところ、考えることをやめるように仕向けたのは他ならぬ上司自身である可能性がある。
いかに部下の能動性を引き出し、判断に必要な着眼点に気づいてもらい、自ら考え、行動してもらえるようにするか。それには、上司の接し方が大きく関わる。部下が指示待ちになるとしたら、それは指示待ちの方が得策な環境を上司が用意してしまっている恐れがある。
部下の能動性を引き出せるかどうかは上司の姿勢によるところが大きい。大変かとは思うけれど、ぜひ工夫を重ねて頂きたい。
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