救援物資の偏りをならすシステム
阪神淡路大震災の時、私が関わっていた避難所には、プラスチックのお椀がものすごくたくさん届いた。けれど「お箸調達しなくちゃね」と言っていた。
1ヶ月ほど経って、初めて隣の避難所に行ったとき、割り箸が使い切れないほど届いていたことを知った。送り主はお椀と同じ。
どうやら送り主は、お椀とお箸をダンボール1箱ずつ避難所に配ってもらうことを想定して送ったのだろう。ところが実際には、お椀ばかりの避難所と、お箸ばかりの避難所に。そして約1ヶ月もの間、隣にこちらがほしい物資があることに気がつかなかった。
そんな経験をした後、神戸大の学生に「インターネットを知ってるか?」と言われた。パソコン通信みたいなものか?と聞くと、それはそうだが現物を見た方が早い、と、研究室に。そのとき初めて、確かモザイクとやらのブラウザで動くインターネットを見た。これはいい!
各避難所にパソコンを置き、インターネットでつなぎ、それぞれの避難所に余ってる物資、足りない物資をリスト化してHPにアップすれば、物資の偏りを是正でき、ボランティアも過不足なく物資を調達できる!神戸大教授とNTTに協力を依頼し、全避難所へのパソコンとインターネット敷設を快諾してくれた。
が。ここでその教授、欲をかいた。どうせ設置するならより素晴らしいシステムを作ろう、と考えてしまった。NTTはいつでもパソコンを提供すると準備してくれていたのに、結局春になり、多くの被災者が仮設住宅に移ったため、幻の計画に終わった。
東日本大震災でも、当初、物資の過不足が避難所ごとに起き、それの把握が困難になっていた。ところが、Googleマップを活用した素晴らしいシステムがしばらくして稼働し始めた。避難所が「この物資が足りない」と書くと、ピンが立つ。それを提供する意志のある人が「了解!」と書く。
避難生活が収束し始め、しばらくするとそのシステムは消えてしまい、残念に思ったが、あのシステム、ものすごく応用範囲の広いシステムだと思う。たとえば救急搬送の時、受け入れ可能な数をGoogleマップのピンに書き込んでおけば、救急車は迷いなくそこに向かえばよいことになる。電話で断られ続けるというロスがなくなる。
ある程度性善説にもとづかないと回らないシステムだから注意が必要だけど、緊急時には非常に役立つ。もし次に大災害があった場合、物資の過不足をならすこうしたシステムの活用が大切であることを、多くの人に心にとどめておいて頂きたい。
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