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KONAMIが手がける共創型ゲームコミュニティ「PROJECT ZIRCON」
こんにちは!コミュ売れ総研 主任研究員のSHINです!
このコミュ売れ総研ではコミュニティを”科学”することによって、データに基づく再現性の高い手法で、企業や団体のマーケティングやコミュニティ運営の成果に繋げる方法を模索しています。
これまで、コミュニティマーケティングに関するモデルやメソッドについてお話ししてきました。今回はより具体的にイメージしていただくためにも、実際に今動いているコミュニティの事例を紹介します。
第6回目では「パワフルプロ野球」シリーズや「桃太郎電鉄」シリーズでも知られる大手ゲームメーカー、KONAMIが手がける「PROJECT ZIRCON」についてお話しします。
「PROJECT ZIRCON」では、Discordというチャットアプリ上にコミュニティが作られていて、コミュニティファネルを用いた設計や様々な施策が行われています。どのようにコミュニティを設計し、盛り上げを生み出しているのか見ていきましょう。
コミュニティをベースにしたゲーム制作プロジェクト「PROJECT ZIRCON」
PROJECT ZIRCON は「ある惑星を舞台とした新作ゲーム」をユーザーと一緒に作り上げていく web3 プロジェクトです。
「ゲームの世界を創っていく」という、これまではゲーム会社が行っていた創作活動を、ユーザーも一緒になって、まるでロールプレイングゲームのように気軽に楽しめます。
このプロジェクトは「Community is game.」というコンセプトを掲げており、コミュニティと一緒にゲームを作り上げていきます。運営が創り上げた完成品のゲームをただプレイしてもらうのではなく、ストーリー制作やキャラクター構築もゲームとしてユーザーに参加してもらいます。
ジルコンの世界では、ユーザーは4つの国に分かれて所属し、「竜の大災により人類が滅亡する」という結末を回避するためにそれぞれの国で様々な選択をしていきます。コミュニティの選択によりストーリーが決まり、それを基にその先のメディアミックスやゲーム化などへ進めていくというロードマップを掲げています。
コミュニティファネルを活かした、コミュニティ設計
コミュニティファネルとはコミュニティとユーザーの関わりの深さを可視化するための構造設計のことです。詳しく知りたい方は下記の記事をご覧ください。
コミュニティファネルではユーザーが定着し、コミュニティを愛するようになっていく過程を「VISIT」「FRIEND」「VALUE」の3つのレイヤーで表しています。
VISIT :コミュニティにアクセスし、情報を得る段階
FRIEND:コミュニティ内で交流し、つながりを持つ段階
VALUE :コミュニティに価値を生み出すメンバーとなる段階
各ステップに合わせて、「PROJECT ZIRCON」ではどのようなコミュニティ設計を行なっているかを見ていきましょう。
①新しい参加者を迎え、コミュニティの世界に入り込んでもらう設計(VISIT)
・コミュニティ参加時の体験設計
多くのコミュニティではまず初めにコミュニティの利用条件やルール、コンセプト紹介などを行います。大抵はルールをただ表示する事務的なものであることが多いですが、内容はよくある規約のように形式ばったものだとしても、この段階からコミュニティの世界観に沿った非日常的な演出を行うことで「コミュニティに参加した」と感じさせることができます。
「PROJECT ZIRCON」では「ネオン」というキャラクターをジルコンの世界の案内人として設定しています。ゲームでもルールやストーリーなどを説明してくれるキャラがいるように、案内人というキャラクターを設定することで、Discordというチャットアプリ内をゲーム空間のように感じさせる設計ができています。
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・初期にコミュニティについての理解をしてもらう
コミュニティに参加して間も無いユーザーはまず、そこがどういうコミュニティなのかを知りたいでしょう。就職先の仕事の会社を探す際にその会社がどういう事業をしていて、どういう理念を掲げているかを確認するのと同じです。
「PROJECT ZIRCON」のDiscordでも全員が交流できる雑談チャットや4つの国に分かれての交流を始める前に「プロジェクトについて」やその「コンセプト」、「ファウンダー(運営責任者)の思い」を読んでもらうステップを用意しています。どういうコミュニティ・プロジェクトなのかを順番に理解してから参加してもらうことで、自分が何をしたらいいかのイメージを事前に想起させることができます。
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・コミュニティの楽しみ方を見やすい位置に掲載する
コミュニティに参加したものの、「自分らしい楽しみ方」が最初からあるわけではないですよね。最初は何をしたらいいか分からず、人の真似をしたり、手探りでやってみたりする中でだんだん自分流の楽しみ方を見出すことも多いと思います。そこで、新しいユーザーに早くコミュニティに馴染んでおくためにも、楽しみ方をいくつか例示しておくと参考にしやすいです。
「PROJECT ZIRCON」ではDiscordを開いた時の1番上に「ジルコンの楽しみ方」をまとめたページを載せています。テキストで楽しみ方をいくつか紹介するだけでなく、楽しみ方を紹介する動画を掲載することで、新しいユーザーにコミュニティ活動のイメージを膨らませてもらいやすくしています。
楽しみ方の例示だけで分からないことは「雑談」チャットで聞けば、運営やKOCが教えてくれ、安心してコミュニティに参加できるような体制も作り上げています。
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②ユーザー同士が交流しやすくするテーマ分けの設計(FRIEND)
・参加ユーザーに自身が所属する国を選んでもらう
「PROJECT ZIRCON」というプロジェクトの特徴ではありますが、国ごとに分かれて議論するためにまず、ユーザーに4つの国の中から所属する国を選んでもらいます。ユーザーがジルコンという世界で集団に「所属」することでコミュニティへの帰属感が高まり、その国の人々と交流をしたり、最新情報を確認しておこうという気持ちになるのです。
コミュニティとしてユーザーに国を選んでもらうために、国選びを相談する場を用意しています。「どういう人がよくこの国を選んでいるのか」や「この国のコンセプトや特徴を改めて教えてほしい」といった悩みを投げかけると、色々なユーザー(主にKOC)が悩みに対してコメントをしてくれます。
また、KOCが定期的に各国のコンセプトや特徴を投稿することで、悩んだ人が国選び相談所を覗きに行った際にその投稿を参考に国を選びやすくなるというメリットもあります。
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・「ギルド」に参加することができる
ジルコン世界におけるギルドとは、コミュニティ内で共通の「好き」や「興味」を持つ人たちが集まる場です。ジルコンの世界だけのことに関わらず、参加ユーザーが話しやすい話題について話す場を設けることでコミュニティ内に友人を作るきっかけになります。
たとえば「サウナギルド」には全国各地のおすすめサウナ情報や行ってきた場所などが投稿されており、「落書きギルド」では季節に合った落書きイベントを行なったり、日頃の落書きやAIアート作品をみんなで楽しんだりしています。「麻雀ギルド」では麻雀好きが集まって同じアプリで対戦していく中で、ギルド内対戦会やジルコンの世界の国ごとに分かれての対戦イベントを行っています。
自身の好きなことや会話したいことについて話せる場なので、ユーザーは純粋に会話を楽しんだり、今までの経験を活かしてイベントを企画したりすることで日常的にコミュニティを訪れるようになっていきます。
「PROJECT ZIRCON」のギルドは5名以上の仲間を見つければ誰でもギルドを立てることができるため、仲間と一緒に活動のきっかけや自分の役割を生み出すことができます。このギルドをベースとしたコミュニティ活動があることで、ユーザーのKOC化に繋がりやすくなっています。
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・情報を追えていなかった人でも簡単に状況を把握できるコンテンツを制作
コミュニティ活動は長期に渡ることも多いため、途中でコミュニティ活動以外のことで忙しくなった場合などに情報を追えなくなることもあるでしょう。その際に整理された情報を確認してもらうことで、コミュニティ活動を再開しやすくすることもユーザーのための設計として重要です。
「PROJECT ZIRCON」では1週間のアップデート内容をまとめた「週刊ジルコンタイムズ」を発行しています。ここではプロジェクトのアップデート内容に加えて、コミュニティ内で活躍した人を公表することでコミュニティへの貢献を賞賛します。ジルコン世界がどういう状況なのか、今はどういう人が活躍しているのかなどを把握することができ、そのコミュニティの盛り上がりの中心人物に今のイベントなどを聞くことで全体把握をしやすくなるというメリットもあります。
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③コミュニティへの貢献を評価し、公表する仕組み作り(VALUE)
・コミュニティに貢献してくれた人に「功労者」ロールを付与する
コミュニティやコンテンツに愛着を持ったユーザーは様々な形で貢献活動を行ってくれるようになります。コミュニティについての情報を発信してくれたり、UGCを制作してくれたり、友人に紹介してユーザーを増やしてくれたり。コミュニティ運営者はその貢献活動に対して基準を設け、コミュニティに貢献してくれた人を適切に評価することでユーザーの愛着を維持、もしくは高めることができます。
「PROJECT ZIRCON」ではコミュニティの発展に貢献してくれた人に対して「貢献者」というロール(ラベル)を付与しています。プロジェクトのストーリー進行に対する意見、コミュニティ内での会話で盛り上げ、ZIRCONに関する発信などをし、一定以上のポイントを獲得した人を評価しています。SNSでの投稿まで確認して評価しているため、自分なりのやり方でコミュニティへの貢献をもっとしようという気持ちにさせることができます。
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・各ギルドが企画したイベントをコミュニティイベントとして開催
先ほど紹介したギルドでは各々の趣味趣向にあったイベントを開催しています。例えば、季節に合わせた自然の写真を投稿するイベントや、絵などのクリエイティブを活かした落書きイベントなどがあります。自分の「好き」を活かして、ユーザーが自主的にコミュニティを盛り上げています。
もし自分の考えたイベントがそのコミュニティの公式イベントとして扱われたら、提案者は非常に嬉しいと思います。実際にギルドと運営とのコミュニケーションを経て、ギルド内で行っていた麻雀大会をコミュニティのイベント企画に合わせて大々的に開催しました。
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・コミュニティメンバーが作成してくれた動画をトップの楽しみ方に掲載
上記の企画イベントの公式化のように、自身が考えたり作成したりしたものがコミュニティ運営に採用されると自分の活動を評価してもらえるため、さらにコミュニティに貢献しようと思うようになります。このように運営が積極的にユーザーの意見を取り入れるということが重要で、ユーザーが制作してくれた二次創作や解説/紹介動画なども同様に、なるべく「貢献」として目に見える形で取り上げると良いでしょう。
先ほど紹介した「ジルコンの楽しみ方」ですが、紹介ムービーが載っていたと思います。これもプロジェクト運営ではなく、後に功労者のロールを得たユーザー、すなわちKOCになった方が作ったものです。「PROJECT ZIRCON」ではこのようにコミュニティメンバーが制作した動画や画像などのコンテンツを積極的に運営が使用しています。
コミュニティメンバーの制作物を積極的に取り入れることで貢献してくれた人への感謝と高い評価を表現することができ、KOCを生み出すきっかけになるでしょう。
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コミュニティファネルに基づいてユーザーの心を掴む設計をしよう
本記事で紹介した通り、「PROJECT ZIRCON」では参加者が徐々にプロジェクトにハマっていくように、コミュニティの中は多層設計になっています。
コミュニティコンセプトや楽しみ方を参考にコミュニティに参加し、国やギルドに分かれて所属するチームに貢献し、その貢献が評価されてさらに活動が促進されていく、というように初心者でもどんどん楽しんで深みにハマっていくような構造です。
そして「PROJECT ZIRCON」は国ごとに分かれてジルコン世界のストーリーテーマに沿った選択を話し合って決め、重要なターニングポイントである、大災の竜による世界の滅亡をどのように回避するかを議論しています。今回の選択によって回避できるのか、回避できなかった場合はどのようにプロジェクトが進んでいくのか。あえて先を明らかにせず、楽しみを与え続けるジルコン世界の今後を体験してみてください!
「PROJECT ZIRCON」X公式アカウント:https://twitter.com/Project_Zircon
今回紹介したZIRCONはDiscordというチャットアプリで4つの国ごとに議論してストーリー制作を楽しむというコミュニティであり、それに適したコミュニティ設計となっています。
そこで、次回は「達成したい目的」に合わせてどのようなコミュニティを作ればいいのかというコミュニティの類型についてお話しします。あなたがコミュニティマーケティングに取り組むときに、どういうコミュニティを作るべきかの参考にしてみてください。
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「PROJECT ZIRCON」 ©Konami Digital Entertainment
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