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仕事への情熱は後からついてくるもの

今回は、職業観に関する話です。
 
「好きな仕事に就こう」
「何になりたいか」
 
キャリアアドバイスでよく耳にすることです。
 
やりたい仕事に就くべきだ、情熱を持てることを見つけてそれを仕事にするべきだという前提の考えです。
 
しかしながら、自分のやりたいことがわかっているということは稀なことです。
情熱の持てることがまだ見つかっていないのだという人が大半ではないでしょうか。
 
そもそも仕事を選ぶには、情熱が先である必要はありません。
 
今回は、鈴木祐さんの書籍『4021の研究データが導き出す 科学的な適職』を参考に、「好きな仕事に就くべきか論」について書きます。



仕事への情熱は後からついてくるもの」だと考えてよいと私は思っていますし、『科学的な適職』にも書かれています。
 
いくつかの研究を紹介しながら、説明していきます。
 
 
2015年にミシガン州立大学が「好きなことを仕事にする人は本当に幸せか?」というテーマで研究しています。
 
仕事の価値観を2つに分類して行った調査です。

適合派という「好きなことを仕事にするのが幸せだ」と考える価値観を持つタイプと、成長派という「仕事は続けるうちに好きになるものだ」と考える価値観を持つタイプの二つに分けて、それぞれの人たちの幸福度を調査しました。

一見適合派のほうが自分の情熱を持てる仕事に就いてさぞ幸福になれそうに見えますが、結果は意外でした。

適合派は確かに最初は幸福度が高いのですが、1~5年の長い期間でみると、成長派のほうが幸福度だけでなく仕事のスキルも高かったのです。

それというのも、仕事というのは実際は好きになれない部分も多々ありますよね。

自分がやりたいメインの仕事以外にも細々としたことやクレーム処理とか、対人関係のトラブルもありますよね。

好きな仕事を求める気持ちが強いと、その分現実の仕事のギャップを感じやすくて、「本当はこの仕事が好きじゃないかもしれない」とか「向いていないんじゃないか」と思って、結果的に幸福度が下がるのです。

一方で成長派は仕事への期待が高くない分、「仕事とはこんなものだ」と割り切って、結果的に長く働くことができるのです。
 
 
もう1つの研究は、2014年にロイファナ大学が行なったものです。
起業家に「今の仕事をどれだけ天職だと考えているか」という調査をしました。
 
結果わかったことは、
・これまで注いできた努力の量が多いほど今の情熱の量も多い。
・さらには前の週に注いだ努力の量が多いほど、今週の仕事に対する情熱の量も多かった。
 
仕事に情熱を持てるかどうかは、私たちが人生でその仕事に注いできた時間や努力に比例するのです。
 
 
これら研究からは、誰の中にも仕事への熱い思いが眠っていて、それに火をつけてくれる天職に出会えるまで探すのが良いとは、言えそうにありませんね。
 
天職というのは、どこかであなたと巡り合うのを待っているものではなくて、仕事をしていく中で自分の中で養っていくものだと考えられます。

心理学でも「グロウス・パッション」と言って、「本当の情熱とは何かをやっているうちに生まれてくるものだ」と考えられています。
 
 
私も自分の経験からこのことを理解しています。
 
長年、対人援助職をしていますが、最初からこのような仕事を自分のやりたいことだと思えていたわけではありません。
10年くらいは、自分にできるのか、心から興味を持てるのかと悩んで何度も辞めようかとも考えました。
(10年は長すぎ!)
 
でも不思議なことに10年くらい経ったところで、変わってきました。
自分の職業だという思いが定着してきたというか、熱を感じられるようになってきたというか。
 
 
話を戻しますと、
「好きな仕事に就こう」
「何になりたいか」
このキャリアアドバイス、
 
簡単には自分のやりたいことがわからない人(とくに若い人に多いです)はちょっと酷ですよね。
やりたいことや好きなことが見つからないことで悩み、そんな自分をダメだと思う人が多いので。
 
ですから、
「今のままでいいよ」
「やっているうちに気持ちが湧いてくるよ」
「グロウス・パッションでいこう」
 
職業選択はそれでも大丈夫。
 
 
 
今回は、鈴木祐さんの『科学的な適職』を参考に、仕事への情熱は後からついてくるという職業観を書きました。
 
 
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
 
 
【参考文献】
『4021の研究データが導き出す 科学的な適職』(鈴木祐 クロスメディア・パブリッシング)


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小林いさむ|公認心理師

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