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「安心して悩める」ことで自立心は育まれる

今回は、「自立」がテーマになります。
 
 
私は、本業でひきこもりの相談をしています。
そうしますと、親からの巣立ち、自分の力で生きる、などの「自立」の課題が見えてきます。
 
私たちは、自分で意思決定をして生きていく力をつけていかなければいけません。
 
そのような自立する力を育むために「安心して悩める」という経験が必要だと思うのです。
悩みがない状態ではなく、悩みに圧倒される状態でもなく、「安心して悩める」状態です。
 
わかりにくい表現ですが、私なりに説明してみようと思います。
 
子どもを育てる親、自立に向かおうとする子ども、あるいは「安心して悩める」経験をせずに大人になった方にとって何かの参考になればと思います。



まず、「悩む」「葛藤する」ことは病的なもののように思われますが、そうではありません。
健康な状態なのです。
 
悩んだり葛藤したりしているのは、葛藤できる健康な力があるからです。
葛藤しないように感情を自分の中に押し込めてしまうと、意欲がなくなったり身体的な不調が起こったりすることもあります。
 
私たちは、いつも悩みながら生きています。
大げさですが、悩むということは、生きることそのものとも言えます。
 
 
安全・安心に悩むことができない状態が不健康なのです。
 
 
たとえば。
 
恐怖に晒されている状態。
家庭や学校が安全ではない。
悩むことを強要されたり、悩む余裕がなかったりする状態。
 
悩まずに済むように親や周りがなんでもしてくれる状態。
経験をさせてもらえない状態。
 
自分の意思よりも親や周りの期待に添わなければいけない状態。
 
 
これらの状態で正常に悩むことができずに育つと、親や周りへのこだわりを持ち続けたまま、自分の足で立つことができません。
 
子は親に対する不満を表面上の様々な言葉で表しますが、深層ではこのような訴えに聞こえてなりません。
 
どうしてこれまで安心して悩ませてくれなかったんだ!
 
 
「安心して悩める」ためには、家庭が自分にとっての安全基地でなければなりません。
 
一人の時間が守られている。
一人の空間が守られている。
一人の人間として尊重されている。
体験を取り上げられない。
その上で助けてほしい時には助けを求められる。
 
私たちは生きていると、様々な体験をして悩みます。
これらの状態が守られていると、安心して悩み、自分で解決する力を育むことができるのです。
 
 
「安心して悩める」経験をせずに大人になった場合。
まずは親との心理的・物理的な距離をとって一人で考えられる状況を作りましょう。
 
そして、助けてほしい時に助けてくれる友人などの水平関係を大切にしつつ、安心して悩める経験を積みましょう。
 
 
 
今回は、「安心して悩める」ことで自立心は育まれるという話でした。
 
 
最後までお読みいただきありがとうございました。
 
 
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小林いさむ|公認心理師

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