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心の「投影の引き戻し」

今回は、「投影の引き戻し」について考えてみたいと思います。


まず、「投影」について説明します。
 
自分の中にある感情や人格の部分を認めたくない場合に、他人にその部分を映し出して、それは他人のものだと思うようにする心理です。
 
大抵は自分にとって都合の悪い認めたくない部分なので、これは自分自身を守るための心の働きなのです。
心理学では、このような心の働きを「防衛機制」と言います。
 
例えば、
親からずっと抑えつけられて、親が求めるように育ってきた人がいるとします。
自分が本当にしたいことを抑えて親の思い通りの人生を歩まなければいけなかった人。
 
すると、自由奔放に生きている人を見ると、嫌悪感を持つことがあります。
「好き勝手して、周りの人のことを考えない、迷惑な人だ」というように。
 
しかしながら、実は「自分のしたいようにする」というのは、認めることができずに自分の中に押し込めてきた性質なのです。
認めてしまうことによって、それまでの自分の生き方を否定してしまうことになるからです。
そして、それを相手の性質であるとして、相手を嫌悪することで自分を守るのです。
 
投影(projection)はプロジェクターに例えると理解しやすいです。
壁(他人)を使ってデータ(自分の部分)を映し出すのですが、壁という存在がなければ映し出せませんよね。
 
 
以上が投影の説明でしたが、以降は「投影の引き戻し」の方法についてです。
 
「投影の引き戻し」とは、相手の中にある性質だと思っていたものを実は自分の中にある性質だったと気づき、投影していたものを自分のものとして引き受けることです。
 
 
「投影の引き戻し」に役立つ方法を考えてみました。
 
 
方法Ⅰ あるがままの感情を受け止める
 
その時々に抱いた自分の自然な感情を否定しないようにします。
いかなる感情も善悪や価値で判断しないように。
 
「今、こんな感情を抱いているんだ」
「私にもこんな感情があるんだ」
 
そのことで良い悪いと考えずに。
 
素直な感情を抑えて生きてきた場合、自分の中に様々な感情があることを認めにくくなっています。
「今こう感じている」と一つ一つの感情を受け止める習慣によって、自己受容につながっていきます。
 
 
方法2 人に話を聞いてもらうことで気づきを得る
 
一人で自分の感情に向き合うのは容易ではありません。
そこで誰かに話を聞いてもらうことで一緒に向き合っていくのです。
 
話すことで自分の中で整理がついていくことがあります。
 
理想的には心理カウンセリングを受けるのが最も良い方法だと思います。
訓練を受けたカウンセラーなら、一緒に心と向き合うことができます。
親子関係など過去の対人関係を紐解きながら問題の因果関係を考察することもできます。
またカウンセラーに対して投影する現象も起きやすいので、それを取り上げることもできます。
 
 
方法3 感じたことを書き出していく
 
話を聞いてもらう相手がいない場合に一人でもできる方法です。
 
エクスプレッシブ・ライティング」という方法になります。
感じたことを素直に制限なくどんどん書き出すものです。
「自分を良く見せよう」とか「自分の感情を抑えよう」とか思わずに吐き出すように書く感じです。
 
書いていく中で思ってみなかった自分の気持ちに気づくことができます。
 
 
方法4 物語を読む
 
小説(映画でも)などの物語を読むのもおすすめです。
 
様々なキャラクターや価値観を持った登場人物が出てきます。
自分とは相容れない人物も当然出てきます。
 
しかし、登場人物の背景までも描かれているため、どこか魅力を感じます。
物語の中で様々な人間と出会うことで他人や自分への受容力が高まります。
 
 
以上、「投影の引き戻し」について説明してきました。
 
個人的に大事だと思うことは、投影を引き受けて克服しなければならないと重く考えないことです。
人間は常に完全ではありません。
むしろ、そのほうが人間らしい。
 
自然界の物は光が当たる一方で影もできるからこそ美しく見えるのです。
人間も一緒で輝いている面と影を併せ持っているからこそ、魅力的で豊かになるのです。
 
 
 
今回は、「投影」という心理機制と「投影の引き戻し」について説明しました
投影の引き戻し方として、あるがままの感情を受け止める、人に話を聞いてもらうことで気づきを得る、感じたことを書き出していく、物語を読む、の4つを考えてみました。
 
 
最後までお読みいただきありがとうございました。


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小林いさむ|公認心理師

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