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引き算のドキュメンタリー ~私にとっての人物写真~ #超えるぞ2021

「あなたは、何のために写真を撮っているの?」
2020年は、この問いと向き合い続けた一年だったように思う。

4月に写真家の青山裕企さんに弟子入りし、8月には務めていたテレビ局を辞めて独立。

「写真」という存在が趣味の産物ではなく、生きるための手段となり、剥き出しの自分の心を世界に伝えるためのものになった。

「あなたは、何のために写真を撮っているの?」

簡単に答えが出る問いではなくて、きっと多くの写真家が生涯考え続けるものなのだろう。

考える中で出会った人やモノ、価値観に触れて、自分の輪郭を作っていく。
表現者として生きていくと決めた時から、その連続だった。

2020年最後のnoteは、写真家としての輪郭を作ってくれた出会いについて、書き残しておこうと思う。

人の”物語”を残したいと思えた出会い ~AKB48 横山由依さん~

いろいろなご縁が重なって、AKB48横山由依さんのソロ曲「月と水鏡」という曲のMV撮影現場に同席し、メイキングムービーとスチールを撮影させていただくことになった。

ファインダー越しに見た横山さんの姿は、テレビで見るよりもずっと力強く、美しかった。

アイドル、芸能人だからということではなく、彼女の人間としての魅力や熱量が、体から外に溢れ出ているように見えたのだ。

表現者として積み重ねてきたもの
歩んできた道のり
”横山由依”という存在がこれまで作り上げてきた物語が垣間見えた時、感動で視界が滲んでしまったのを今でも鮮明に覚えている。

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インタビューの時に「2020年は分岐点」だと語ってくれた横山さん。
そんな瞬間にカメラマンとして立ち会えたことがこの上なく光栄であったし、彼女が伝えたかった想いを形に残せたことが幸せだった。

「人の”物語”を残したい」という私の思いは、横山さんとの出会いでより鮮明で強いものとして心に刻まれていった。

戻れない過去との出会い ~青春ノスタルジア~

12月に写真展を行う機会があり、そのテーマとして表現したのが「青春ノスタルジア」という概念だった。

「青春(過去)を懐かしむ気持ち」と「故郷(場所)を懐かしむ気持ち」を掛け合わせ、「過去への郷愁」を表現しようと思い付いたところから、「青春ノスタルジア」と名付けた。

元々この写真たちは「組写真として作品を作ろう!」として生まれたものではなく、知人がとあるMVの撮影で学校を使うこととなり、それに同席させてもらうことがきっかけで実現したものだった。

縁が重なりたまたま”学校”という場所で撮影をさせてもらえたのだが、教室に入った瞬間、中学、高校時代の思い出が走馬灯のようにフラッシュバックし、形容し難い懐かしさに包まれた。

過去というものは必ずしも良いものばかりではなく、蓋をして忘れたいものも多々あるだろう。
ただ、何かのきっかけで思い出した在りし日の記憶を「懐かしい」と思う感情は、全ての人が持っているものではないか。

この「人それぞれが持つ”過去への懐かしさ”」を何とか表現に落とし込めないかと考えた時に生まれたのが、この作品だった。

過去への懐かしさというのは、自分が積み重ねてきた記憶、物語を紐解く時への感情。
私はやっぱり”人”が好きで、”物語”が好き。
そう確信できた瞬間でもあったのだ。

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人の物語を内包する”ドキュメンタリー”としての人物写真 ~2人の師匠との出会い~

●青山裕企さん

●高橋伸哉さん

青山さんはアシスタントとして、伸哉さんはオンラインサロンのメンバーとして。
2人が人を撮る時に感じていること、見ている世界、価値観など、様々な想いを学ばせてもらった。

自分が美しいと思うものを突き詰める。
写真を見る人に何を訴えるか。
そもそも、写真を撮るという行為はなんなのか。

自分より少しだけ長く生きて、先を走ってくれている大先輩との出会いは、自分がこれから進もうとしている道が、決して容易くはないものだと教えてくれる。
険しい道ではあるけれど、その道の歩き方を教えてくれる人と出会えたのは、本当に幸運だったと思う。

2人の師匠から得た、人との向き合い方、写真との向き合い方を軸に、私は「人が持つ”物語”を残す、ドキュメンタリーのような人物写真」を撮りたいと、強く思うようになった。

2021年のテーマ "ドキュメンタリーフォトグラフ"

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写真は映像のように動きを残すこともできないし、声を残すこともできない。
写真が残すことができるのは、シャッターを切ったその一瞬だけ。

伝えられる情報が限られているからこそ、私はその一瞬に、想像と物語を残したい。

伝えたい想いを核に、それ以外の要素を限りなく削り、余白を作り、想像を生む。
そうした生まれた写真表現は、一言で言うなら「引き算のドキュメンタリー」なのだ。

映像の目と写真の目。
この3年で培った2つの視点から、私なりの「ドキュメンタリー」を、突き詰めていこうと思う。

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写真家 M.RYOHTA


2021年はより被写体が持つ”物語”を残せる写真を撮っていきます。
単写真はもちろんですが、Web連載や写真集(紙,ネット)など、複数枚を重ねて想像や時間の流れを見せられる撮影が得意です。
撮影のご相談は ryoutamorikawa1017@gmail.com かDM、
問い合わせフォームまでお気軽に




このnoteは、「答えが出た!」という文章ではなく、2020年という時を、写真と向き合い続けた結果見えてきた、1つの思考過程として読んでもらえたら嬉しい。
表現者は孤独だ。
でも、あなたは1人じゃない。

サポート代は全額写真の勉強代に当てさせてもらいます…!