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第2回『双極性障害(躁うつ病)とつきあうために』を読む

本サマリーは、日本うつ病学会双極性障害委員会の『双極性障害(躁うつ病)とつきあうために』(ver.9 2019年7月5日)について解説したもので、枠線内グレー部分はテキストを引用しています。

制作
窓師(薬剤師)、布団ちゃん(公認心理師、社会福祉士)
ネット心理教育研究会

1. 双極性障害(躁うつ病)だと気づくことが第一歩

この章では、最初に、双極性障害と気が付くポイントについて、次に、うつ病と双極性障害を見分けるポイントについて説明します。

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私たちは、だれでも気分のいい日や悪い日があります。何か良いことがあると、ついうきうきして、おしゃべりになったり、逆に悲しいことがあると元気がなくなったりします。 しかし、この文で説明する「双極性障害」(躁うつ病と呼ばれていましたが、アメリカ精神医学会による国際診断基準である DSM-5では双極性障害と呼ばれており、我が国でも双極性障害という病名が一般的になりつつあります)は、そういった誰でもあるような気分の浮き沈みを越えて、自分ではコントロールできないほどの激しい躁状態や、苦しくて生きているのがつらいほどのうつ状態を繰り返す、病気のことです。

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双極性障害の気分の変動の特徴は、通常の気分の浮き沈みと違う点は、激しさと長さです。人が変わったように浪費など無謀な行動をしたり、何も考えられず寝込んだままになってしまう。それも数週間、数か月と続くのが双極性障害です。詳しくは第2章で説明します。
双極性障害の気分の変動は、通常想像されているよりもずっと長く、場合によっては数か月から数年の周期があります。現在の気分の状態だけでなく、人生を振り返って、そのような気分の異常な浮き沈み、異常な振る舞いがあったかどうか見てみると良いかもしれません。

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うつ病の時期だけが起こる病気、すなわち「うつ病」は、男性で10人に1人、女性で5人に1人くらいが、一生のうちに一度は経験する、非常によく起こる病気です。ところが、うつ病のように見えて、実は双極性障害であるケースも意外と少なくありません。およそ 100 人に 1 人くらいは、一生のうちに一度は双極性障害になると言われています。またうつ病と違い、双極性障害のなりやすさに女性と男性の差はほとんどありません。

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双極性障害患者さんは、単なるうつ病と誤解されている方も少なくありません。うつ病だと最初思われていた人のおよそ10人に1人が、最終的に双極性障害と判明します。その中には、最初の診断時に、まだ躁状態も軽躁状態もなく、その後双極性障害に変わる方と、本当は双極性障害なのに、正しい診断がなされていないためにうつ病と診断されている方の、両方が含まれていると考えられます。

双極性障害は、躁状態のあるうつ病ではありません。うつ病と双極性障害は別の病気です。
しかし、躁の症状から双極性障害であると診断するのに比べ、双極性障害のうつの症状と、うつ病のうつの症状を見分けるのは困難です。
診断するときには、現在の状況だけではなく、今まで生きてきた中での気分の波があったかどうかを振り返ることが重要です。
双極性障害とうつ病は違う病気であるだけでなく、最初うつ病だった人が後に双極性障害に変化したり、同時にかかったりするということもありません。
一方、双極性障害の方は、ADHDなどの発達障害、パニック障害、強迫性障害、アルコール依存症などの物質使用障害、パーソナリティ障害、摂食障害、片頭痛などの疾患をあわせもつ場合があるようです。これらの疾患がある方で気分の変動が大きい人は双極性障害の可能性を考えてみても良いかもしれません。

最初うつ病と診断され、治療を続けていく過程で、実は双極性障害だと分かるまで、平均8年かかったという研究があります。最近では精神科医も一見うつ病に見える患者さんが双極性障害である可能性に注意を払いながら治療を行うことが功を奏したのか、この期間は4年程度に短縮したという報告もあります。しかし仮に4年だとしてもこれは決して短い期間であるとは言えません。双極性障害の専門家は現在も双極性障害のうつ状態とうつ病を見分ける研究に取り組んでいます。

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双極性障害には、激しい躁状態があるタイプ(Ⅰ型)と躁の状態はそれほど激しくないタイプ(Ⅱ型)があり、この二つは異なる病気と考え区別されています。
繰り返しますが、Ⅱ型はⅠ型の軽いものではなく、別の病気です。

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