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発達障害がらみでよく聞く「二次障害」って?予防することはできる?

突然ですが、私は小さい頃から背が低く、小学校ではいつも前から一番目か二番目を争っていました。
身長が低いと、色々なことで苦労します。
例えば、日直当番の時の黒板消し。
上の方が届きません。

ぴょんぴょん飛び上がりながら消していると、親切なクラスメイトが代わりに消してくれたり、自分でも椅子や踏み台を持ってきて消すという方法を見つけたりしたので「背が低い」ことで不自由な思いはしましたが、「背が低い」ことが原因で「学校に行くのが嫌」になったりはしませんでした。

ですが、ぴょんぴょん飛びながら黒板を消している私の姿を見て、クスクス笑うクラスメイトがいたり、面と向かって「チービ!チービ!」とからかわれる経験をするうちに、学校に行くのが嫌になり、不登校になってしまったとします。この場合の「不登校」は、背が低いことによる二次障害です。

今の日本で、背が低いことで、心が疲弊するほど生活に支障を来すことは、まずありません。つまり、背が低いことが、心の病の直接的な原因にはなりません。しかし、背が低いことをからかわれたり、いじめられたりしてうつ病や適応障害などの心の病になってしまったり、不登校やひきこもりになってしまう、ということはあり得ます。

発達の凸凹や偏り(グレーゾーンを含む)や発達障害を抱える方はも、同じです。発達の凸凹があると不自由な思いをすることはあっても、「凸凹がある」ことが原因で「学校に行くのが嫌」になるわけではありません。ですが、発達の凸凹があるがゆえに、学校生活や対人関係で何かとしんどさを抱えることが多く、不登校になってしまう、ということはあり得ます。

さて、前出の例では、
黒板の上の方が消せないという困った状況に、
→ 誰かに消してとお願いする
→ 踏み台や椅子をもってきて消す
という対処法を持ち、使うことができています。

発達の凸凹を抱える方も同じで、自分の苦手なことを自覚できていると、苦手な場面に遭遇した時、誰かにお願いしたり苦手を補う別の方法を知っていれば、しんどくならなくて済みます。

しかし、凸凹があることを周囲の大人に気づいてもらえずに育った場合。
家庭でも、園(幼稚園や保育園)でも、
「何回言ったらわかるの?」
「もっと落ち着きなさい」
「ボーっとしないよ!」
「今、ママ(先生)が言ったこと、聞いてた?」
などと注意されることが多かったり、友達から馬鹿にされたりからかわれたりするうちに、「自分はダメな子なんだ」「みんなができることが、できない子なんだ」と心が傷つき、そのような状態をケアされることなく拗らせてしまうと、二次障害を抱えてしまう危険性が出てきます。

ここで厄介なのは「背が低い」は誰から見てもわかる事実ですが、発達の凸凹は、外からは見えず、理解もしてもらいにくいことです。
それだけに、自分が苦手なことや助けを必要とする理由を人に説明する力、協力してもらいながら解決する力、自分なりに準備をして苦手なことに対処する力などをつけることが必要になってきます。

ただ、年齢が小さいうちは、どれもまだ自分ではできません。
まずは親や先生など、周囲の大人がその子の生活のしづらさを理解し、配慮したり環境を整えたりすることで、登園しぶりなどの二次障害を防ぐことができます。

私は臨床心理士、公認心理師として成人の方のカウンセリングをする一方で、幼稚園や保育園に通う子ども達の発達支援にも力を入れています。乳幼児を対象にした活動もしているのは、集団生活(保育園や幼稚園)の中での、発達の偏り(凸凹)によるしんどさを見せる子を、少しでも早く発見し、対応するためです。
身近な大人が、その子の発達偏りに気づかず放置したり、他の子どもにするのと同じような対応(教え方や説明の仕方、注意の仕方や叱り方)を続けてしまうと、その後の成長過程で二次障害が出てくるリスクが高まってしまいます。

発達の凸凹の出方は十人十色と言われますが、実は、凸凹によるしんどさが出てくる時期も百人百様です。
幼稚園、保育園では大丈夫だったけれど小学校に入った途端しんどさが出てきた子。
低学年の間は平気だったけれど、中学年以降になってから出てきた子。
小学校はやり過ごせたけど、中学校でしんどくなってしまった子。
高校までは大丈夫だったけど、大学に入った途端学生生活が送れなくなってしまった子。
学生時代は問題なく過ごせたどころか、勉強や部活で大活躍をしていたけれど、社会人になって対人関係の苦労が出てきてしまった人。
結婚してから、子どもが生まれてから、昇進した時・・・・あるいは、ずっと環境に恵まれて、発達の凸凹を意識すらしなくていい人生を送る人もいます。

凸凹のしんどさが出てくる時期も人それぞれ→早期発見、早期対応に意味がある!

人生には様々な環境の変化がありますが、それまで「大丈夫だった」「気にならなかった」発達の凸凹が、環境の変化により突如としてクローズアップされ、適応できなくなり、二次障害を引き起こすことは、珍しいことではありません。
不登校、引きこもり、不良行為、うつ病や適応障害、不安障害といった心の病…そういった状態の背後に、発達の偏りによるしんどさはない(なかった)かな?これまではどのようにして乗り切ってきていたのかな?と、私達専門家は特に、思いを巡らせてみる必要があります。

さて、背が低くてからかわれることも多かった私の幼少期時代。
私が不登校にならず、元気に学校に通い続けることができたのは、親が「山椒は小粒でもぴりりと辛い」という例え話とともに、私の他の良い面をしっかり認めてくれていたこと。そして「やられたらやり返す」を認める雰囲気が、クラスにあったからだと思います。

狙うは弁慶の泣き所!

そう。私は、からかってくる男子を「そんなこと言わんといて!」と蹴とばして「やり返す」力をもっていました。弁慶の泣き所を狙って、一撃です。蹴られた男子は脛を押さえてうずくまっていたので、かなり痛かったと思いますが、それでも次の日になるとまた私に「チービ、チービ!」と言ってきます。蹴飛ばしに行く私。うずくまる男子。今思うと、このやり取り自体が、一連の「遊び」になっていたようです。

・・・って、こんなに綺麗にまとめてええんやろか。
ええわけないですね。
どんな理由があっても、暴力はよくありません。

皆さんが関わっておられる子ども達には、力ではなく「言葉でやり返す力」や、からかわれても気にしない「スルースキル」を、ぜひとも身に付けさせてあげてほしいと思います。



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