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B2B営業スタンダード 3章:商談クロージング編パート1(伝え方、構成テクニック)

営業の提案は単純化すると量×質=成果という数式で表せる。
前回のアポ取得編では量の増やし方について書いたので、今回の商談クロージング編では提案の質のあげ方について。
提案の質をさらにブレイクダウンしていくと、伝え方×内容で構成されるためパート1で伝え方、パート2で内容について書いていこうと思う。

🔸なぜ伝え方が重要なのか?

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提案において内容はもちろん重要だが、伝え方も同じぐらい重要だと考えている。どんなに素晴らしい内容でも伝わらなければ意味がないし、相手がアクションしようと思わなければ意味がない。

相手を動かすには熱意×ロジカルが必要だが今回はロジカルに伝える方法に主眼をおいて書く。
熱意も非常に重要だがトレーニングで身につけるというより覚悟や気持ちのコントロールの比重が大きいので、6章の「Willコントロール編」で触れようと思う。
また、B2Bの営業においては目の前の担当者が判断せず、上長に稟議をあげたり上長同席での次回提案の調整を依頼するケースも多いが、その場にいない上長に熱意を伝えるのは難しい。担当者が価値をわかりやすく上長に説明する必要があるので、ロジカルの重要性が更に増す。

私は伝え方を考えるとき、3つの観点でそれがベストか考える。

・聞き手に伝えたい事が正確に伝わるか?
・聞き手が根拠に納得するか?
・聞き手が行動を起こそうと思うか?

誤解なく正確に伝えたうえで、その話を信じてもらい、動くだけの価値があるという判断をしてもらわないといけない。

じゃあどうするとロジカルに伝えられるようになるのか?
ロジカルに伝えるためのテクニックはたくさんあるので、最初は意識してテクニック通りにやってみると自然に身に着くのではないかと思う。

私がよく使っていたのはPREPという手法で、今は全く意識していないが説明するとき、この構造を使っている事が多い。
新卒のころ上司に説明がPREPになってないと怒られ続け、気付いたら意識しなくてもPREPな説明をするようになってた。

他にもキーエンス時代教わったPSSとか、SAPのときトレーニング受けてたSPIN、チャレンジャーセールスモデルは、今はそのままは使うことはないしあまり意識もしていないが、あとで振り返るとエッセンスを使っていることが多い。

🔸PREP法

PREP法とはP(point)、R(reason)、E(Example)、P(Point)の順に説明すると相手が納得しやすいという手法で、先ほども書いたが昔の上司に口すっぱく言わていたのもあり、私が説明するときはこの構造をよく使っている。

PREPで説明する前にi(interesting)で興味を引くところも含めてiPREP法という場合もある。

私は現在freeeという会計ソフトベンダーで働いているので、例として考えてみる。
会計ソフトというのは日々の入出金などを仕訳という形式で入力していくと試算表(BS,PL)を作ることができるソフトで、従来の会計ソフトとfreeeを比較すると、銀行の通帳データから自動的に仕訳を作成し帳簿作成にかかる時間を削減できるという特徴がある。
これを例に考えると下のような構成になる。

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Pointの「freeeは記帳時間を削減して本業にフォーカスする時間を作れるサービスです」を伝えると、相手は「何故?」と思うはずである。

そこで、その理由(Reason)を伝えることでなるほどと思い、さらに実際の例(Example)を伝えることで説得力が増す。

最後にもう一度Pointの本来伝えたかったメッセージを伝えることで、何を伝えたいのか明確にする。

🔸PREP法で重要なこと

PREP法で説得力を増すために重要なのは、ReasonExampleである。

そして、説得力あるReasonを作るために重要なのが、提案先のビジネス、業界理解、自社プロダクトの知識である。

知識がある事で、「御社の業務は○○なので、××をする事で△△ぐらいの効果が見込めます」、「弊社は今利用してるシステムと比較して○○なので、御社の業務だと××の作業をなくすことができ、△△なコスト削減効果があります」という話をより具体的に話すことができる。

自社プロダクトや業界知識が豊富なのに売れない人は、いきなり自社のアピールポイントを詳細に話してしまう傾向がある。本来、業界知識や自社プロダクトに詳しい人は売れるはずなのに、とてももったいない。
私も若手時代、知ってることを話したくなるほうだったのでよく分かるが、いきなり詳細な話をされても聞いている人は何故この話を聞かされているのかわからないし興味を持たない。
知ってることを話すのではなく、相手に合わせた伝えたいメッセージがあり、それを補強するために知識を使うのがよい。

次に説得力あるExampleを作るために必要なのが、導入事例の知識とデモである。

提案先と似たような企業が導入して顧客がメリットを出していれば、説得力が高い。さらに導入事例の詳細を把握し、何故(Reason)効果が出ているのか具体的に説明出来ると説得力が増す。

もう一つExample作りに有効なのはデモである。
自分が説明している内容を「例えば、」と目の前でデモで再現できればほとんど説明の必要がなくなる。
私はプロダクトについて説明する際には、基本的に資料を使わずほぼデモで説明している。そのほうが説明にかかる時間も短く、認識に齟齬も出ないのでデモ習得にかける時間を考えても断然効率がいい。
SAPのような複雑なプロダクトだと訪問一回ごとにデモの準備しなければ実施が難しいが、ほとんどのSaaSプロダクトは、環境さえ用意しておけば簡単にデモ出来るケースが多いのでデモを多用する事をお勧めする。

このデモを多用するというのはキーエンスの文化で、キーエンス時代は出来るだけ全提案デモをするように言われ、毎日のデモロープレ実施やKPIでデモ件数を追うことで徹底していた。

最後に繰り返しになるが、知ってる知識を全て話したり、出来るデモを全て見せてはいけない。
100の知識量があるとすると、実際に使うのはポイントに合わせた本当に必要な10の知識だけにすべきである。知っていても、相手の役に立たない興味を引かない知識は話すべきではない。
この、10話すときに知識が10しかないと選択の余地がないが、100あればポイントに合わせて、より具体的な話を選べるので、知識やデモの引き出しが多いというのは大きな強みになる。

🔸PSS

私が在籍していた当時、キーエンスの提案の型はPSSをベースに作られていた。
PSSとはもともとゼロックスが開発した1970年代からある営業手法だが、現在でも使われておりB to B営業で標準的な型になっているので、取り入れていない会社でも実は提案の型がPSSになっていることがよくある。

PSSは以下の流れで提案を進める。

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①オープニングで面会の目的を合意し、②プロービングでニーズに関する情報を収集し、③サポーティングでニーズを満たすための解決策を提案し、④クロージングで次のステップについて明確に合意をする。

一回の面会の中でも「①→②→③→④→②'→③'→④'→②''→③''→・・・」というようにプロービングとサポーティング、クロージングは繰り返すことが多い。
初めてPSSを教わったときやってしまいがちな失敗が、1回のプロービングで全部を聞き出そうとしてしまうパターンである。一方的に質問をすると尋問のようになってしまい相手も答えにくくなってしまう。これだけは聞くべきという質問集を作っているような場合、陥りやすいので特に注意した方がよい。

プロービングの質問は、提案先の課題に対して仮説を立てておくと、聞くべき質問が明確になる。仮説は必ずしも最初から当たっている必要はなく、プロービングの中でディスカッションしていく。事前準備で仮説を考えておくことによって疑問がわくので、機械的な定型質問にもならないし、相手も自分達のことを考えている事がわかって信頼が生まれ、話してくれやすくなる。

また、テストクロージングはこまめに入れたほうがよい。最後までクロージングしないと、実は先方が気にするポイントとずれていたときに今までの話が無駄になってしまう。テストクロージングを入れることで、途中でずれてしまったときにも気がつき修正出来る。

各要素についてもう少し詳しくみていこう。

🔸オープニング

オープニングは一番重要である。
オープニングをとばしたり失敗すると、相手は何のために時間を使っているのか分からず大きなストレスになる。提案の最後に気がついた日には、お互い時間が無駄になり目も当てられない。

オープニングで重要なのは3つ。

・今日の打ち合わせの目的を明確に伝える(話題の提案)
・今日の提案で先方にどんなメリットがあるのか伝える(価値の提示)
・上2つについて、認識にズレがないか同意を得る(同意のチェック)

ここで、私が重要だと思っているのは、はっきりと「提案内容がよければ導入してください(契約してください)」と伝える事である。

買ってくださいというのを躊躇して「お役に立てればと思い情報提供しに来ました」と言ってしまう人がいるが、営業なので最終的な目的は買ってもらう(導入してもらう、契約してもらう)事なので、ここを濁してしまうと目的があいまいになり、相手もただ話聞いてればいいのかなと思ってしまう。
相手もボランティアで来ているとは思っていないはずなので、はっきりと最終的には買ってもらう事が目的で、買うに値すべきか適正な判断をしてもらうために提案しますと伝える事で、相手も買うべきか判断するために話を聞く体勢になる。

🔸プロービング

プロービングでは次の3つを意識して行う。

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まず最初に出来るだけニーズの全体像と優先順位を知る事を意識する。
以前こちらのインタビュー記事でも話したが、相手が口にしたニーズに対してその解決策をいきなり話しても、実はそのニーズは枝葉のニーズでそれを解決してもあまり効果がないケースがある。


相手が口に出したニーズに対して、まずはなぜ(Why)を繰り返して、大元にある本質的な課題見つける。次に、その課題を因数分解することにより、相手自身も気づいてないニーズも洗い出したうえで、優先順位を明確にするという作業を行う。

例えば、提案先から「人を減らして人件費を削減したい」という相談を受けたとする。この時「人件費を削減するためには」といきなり提案してしまうと、最も相手のためになる提案を見誤る可能性がある。

なぜ?を深掘りしてみると、

Q「なぜ人を減らしたいんですか?」
A「人を削減すれば、コストが下がり利益が上がるから」

という答えが出てきたとする。

この場合、人件費を削減してコストを下げるよりも、更に人を増やして売上をあげる方が利益に繋がる可能性もある。

更に「なぜ利益をあげたいんですか?」と聞くと、相手も気づいていない本質的な課題が見つかる事もあるので、何度か「なぜ?」と深堀りをして「ニーズの裏のニーズ」を見つけることを意識する。

またプロービングには拡大型プロービングと限定型プロービングがあり、これをうまく使い分ける事も重要である。

拡大型プロービングは相手に自由に答えてもらう質問で、例えば「なぜそれが課題だとおもうのですか?」というような質問である。メリットは相手に自由に話してもらう事で自分が想定していない情報など、得られる情報量が多い。一方、話がブレて自分が聞きたい話と関係ない話になってしまったり、ざっくりと聞きすぎると相手も何を答えればいいかわからないというデメリットもある。

反対に、限定型プロービングは相手の回答がYES、NOなどに限定されている質問で、例えば「今は会計ソフトを使ってますか?」というような質問である。こちらは自分の聞きたいことに対して明確な答えが聞けるが、自分が想定している事しか聞けず、連発すると尋問のようになってしまう。

私の個人的な感覚では、7:3ぐらいで仮説を持つ事で話のブレをふせぎながら拡大型プロービングをメインにし、相手との認識があってるかを確認するために限定型プロービングを組み合わせるとバランスよく会話が進むように感じる。

🔸サポーティング

プロービングで相手のニーズを理解し認識にズレがないことが確認でき、どうやって自分達がニーズを満たせるかわかったらサポーティング(解決策の情報提供)を行う。

営業経験が浅い人でいきなり具体的な説明をはじめてしまう人もいるが、相手にとってベストではない提案をしてしまう可能性が高いうえ、押し売りのように感じられてしまう。サポーティングの前にプロービングすることでその説明をする理由作りをしておくと、相手も違和感なく受け入れられる。相手がニーズを明確に口にしていない場合は、限定プロービングでYESと答えてもらっておくとよい。

サポーティングもいろいろなやり方があるが、私の場合は先ほど説明したPREPを使い説明する事が多い。相手にとってメリットを伝え、何故なのかをプロダクトの特徴や実際にデモを見てもらう事で納得してもらう。

🔸クロージング

サポーティングで提案したメリットに相手が合意してくれたらクロージングをする。このクロージングは提案の最後だけでなく、テストクロージングを何度かかけるとよい。

タイミングとしてはお客さんが「それいいね!」と言ってくれたり、好意的な表情やうなずきであればクロージングをする。

クロージングは

①相手のメリットを振り返り
②お互いのアクションを提案し
③同意を得る

という流れで行う。

限定プロービングで改めてメリットについてYESをもらう事で、相手にメリットを思い出してもらうと共に、続けてYESをもらいやすくする。

メリットに対してYESがもらえたら、具体的にそれぞれのアクションを提案する。その場で契約について判断してもらえるのであれば、契約してもらうことに合意し、相手の社内手続きや、契約書の送付捺印、納品について提案する。その場での判断が難しい場合は、決定権を持った上長への説明機会など次のアクションについて提案する。

最後に提案内容について明確に同意を得る。同意を得られない場合は、なぜ進める事が出来ないのか、再度プロービングを行う。ここではあいまいにせずに明確にYESかNOか答えてもらう。

テストクロージングは早めに何度か入れたほうがよい。NOと言ってもらうことで、あと何が満たせればYESになるのかを聞いて絞り込んでいく事ができる。

私が個人的にクロージングで重要だと思っているのは、NOの場合ははっきり断ってもらという事である。断られるのが怖くてあいまいにしてしまうと、ずるずると時間を取られてしまうので、お互いにメリットがない場合ははっきり断ってもらってキッパリと手を引くべきである。将来的にまた検討してもらえる余地がある場合は、その条件と時期だけ確認しておけばよい。

🔸まとめ

今回は提案におけるテクニック、Tipsを中心に書いた。本当に重要なのは内容なので次回は内容の作り方について書く。ただ、どんなにいい内容でも伝わらなければ意味がないので、伝え方や構成も重要である。

慣れてくると自然に伝わりやすい構成で説明できるようになるが、営業経験が浅くどんな順番で提案すればいいか迷っている人は、まずはこういった先人の知恵が詰まったテンプレートをもとに提案の構成を考えてみるとよいと思う。繰り返していくと自分の中で定着して、自由に組み合わせる事が出来るようになるので是非試してみてください。

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