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同じ物事をどう見るか➖インドと日本の比較を通して➖

ネットでインド在住の方が書いた、次のような文章を見た


Hiromi@hiromiiiii7インドで4時間近く子供と電車乗らなきゃいけないことがあって、わりと早い段階でギャン泣きが始まってしまい、ただただ抱っこして耐えるしかなかった時、他の乗客の方々が何人も私たちの所へ訪れて、お菓子をくれたり、自分の私物で遊んで良いよとカバンを全開にして見せてくれたり、


@hiromiiiii7さん「君を助けたい」と熱心に話しかけてくれたり、本当にたくさんの人が当然のように声をかけてくれた。感謝と同時に正直びっくりしてしまった。延々と響きわたる他人のギャン泣きに一切不快を感じない人はいないと思うけど、そこにどんな態度をとるかは自分次第だなと。(引用:ツイッターより)


Hiromiさんという、インドで子育てをしている女性の方が書いた文章だ。

ある日、彼女が子どもと一緒に電車に乗っていて、子どもがギャン泣きをしてしまった。しかし、4時間も電車に乗っていなくてはならなくて、不安で仕方なかったが、周りの人がみんな助けてくれたと。
「インド!!素晴らしいな」と思う。
同時に、自分がこの場面に居合わせたら、間違いなく、「うるさいな」と思うだけで、助けようと体が動かないのではないか…と感じた。
2年前の夏にインドに行った。飛行機でラダックからデリーに向かうときに、隣の席が赤ちゃんを連れたインド人のお母さんだった。
このHiromiさんと同じく、搭乗してすぐに、赤ちゃんが泣き出してしまった。

私は「うおー、大変な席に座ってしまった」としか思えなかった。この思考そのものがケアの精神を欠いたものだった。
Hiromiさんが言うように、搭乗員が次から次に来て赤ちゃんにウインクしたりして、助けていた。
本当に赤ちゃんはずーっと泣いていて、なんと、赤ちゃんが嘔吐した。僕の座っている横の席の足元に吐瀉物が広がった。
お母さんは、謝っていたが、私は「OK、OK」という感じのことを言ったのだが、積極的に助けようとはしなかった。スタッフが来て、軽く拭き取ってくれたものの、特に対応もなかった。
そのとき私は「日本の航空会社だったら、きっと席を変えているよな。なんて席に座ってしまったのだ」と、思っていた。
それから、数時間のフライトは、鳴き声と、吐瀉物の匂いに耐えるものだった。
なんて心が狭い自分!!
そして、なんと、デリーから日本に帰るとき、またしても赤ちゃん連れの母子と隣り合った。正直に告白すると「なんてついていないんだ…」と思った。そして、案の定赤ちゃんがギャン泣きし出した。ところが、日本航空の乗務員はすぐに「お席を用意します」と言って、別の席を用意してくれた。
私は心底安心した。このとき自分は「さすが日本の航空会社は違うな〜」としか思えなかった。
しかしだ。Hiromiさんの文章を読んで僕は思った。どっちが良いんだろう。
いや、どっちが良い悪いという話ではないのだろうけれど、怖いなと思ったのは、自分はこの出来事を「日本すごい」「やっぱり日本は最高」式の目線でしか見れていなかったということである。
そして、その時の自分の思考の源泉には、みんなで子どもを育てるという視点を欠いて、快適に自分が過ごすこと、自分の思い通りになって当然という消費者目線しか自分が持ち合わせていないことに驚くのだ。
その思考構造のなかでは、インドの人たちが「ギャン泣きしている子どもを見て、助けることの美徳」がまるで見逃されている。「ギャン泣きしても別に良いよ、当たり前じゃんそんなの、助けるよ。」と言える社会の健全さが見逃されている。
日本の航空会社は確かに快適かも知れない。そして、これが日本でもてはやされる「おもてなし」ということなのだろうと思う。しかし、ミスのない高いクオリティーの対応を当たり前に求める精神性の中には、神経症的なまでに個人の目的がつつがなく達成されることだけを美徳とする心の狭さがある。そのような美徳はある種の狭量さと紙一重であり、それが達成されないとき、相手を叱りつけるような不安定さを内包している。
それに比べ、インドの泣いても、ゲロ吐いても助けたり、気にしないという社会のあり方は、おおらかであり、安心できる。

インドの人々の対応と比べると自分がいかに心が狭く、また神経質な余裕のない社会、みんなで赤ちゃんをケアしていこうというおおらかさを欠いた社会かということがわかる。そして、そういう社会を構成しているのがまた自分なのである。
私は、Hiromiさんの見方を通して、自分の味方の一面性や問題性に気付かされた。私たちは、ある価値観を自明のものとして生きてしまっている。だからこそ、他者の見方に触れることが大事なのだと思う。他者の見方にふれることによってのみ、自分の心の狭さや視野の狭さが知らされるのだと考えた。

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