BS世界のドキュメンタリー「イラン 天空の教室」を観た

BS世界のドキュメンタリーの質が高すぎる…今日も見たのだけれど素晴らしい番組だった。

          ↑こちらから動画を観ることもできます。

フランスで作られたドキュメンタリー。舞台はイランのある山岳地帯。いまだにヤギなどを飼う遊牧民がイランにはわずかに残っている。とはいえ、その生活は自然の中で暮らす厳しいもので、年々テヘランなどの街にみんな出てしまう。しかし、ヤギなどの面倒をみるために、そこに残る子ども達や若者もいる。そうした、山岳地帯でも、学校がある。なんと、遊牧の時期になると学校の先生も家族と一緒に、移動するのだ。そして、移動教室で子供たちを教えるのだ。いや、教室といっても、屋根もない。本当に、原っぱに座って授業をする。ちょっと想像を超えた世界である。主人公の教師は、33歳と若い。彼自身は遊牧民ではない。そして、遊牧民は一日にすごい距離を歩くので、先生もついていくのに必死なのである。

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子ども達は、勉強できることが喜びで、一生懸命に勉強していた。それはそうであろう。一日のほとんどを移動で使う。その間に数時間だけ、先生に勉強を教えてもらう。机も椅子もない場所で、草の上で必死にノートを取っていた。その姿は、とても利発そうに見えたし、輝いて見えた。先生も「こんな賢い子供たちはいない」と言っていた。

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スマホも、本もない、そんな遊牧民の子供たちの方が、学ぶことに飢えているのだ。そして、彼等は与えられた機会を生かすために一生懸命学ぶのだと思う。もしかしたら、日本人が失っているかもしれないものを観た気がした。

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そして、先生自身が「歩く事でこんなに学びがあるとは思っていなかった」と遊牧の日々をかけがえのない経験として捉えていた。

さて、しかし旅の後半で思いもよらない事件が、遊牧民の一族を襲う。

彼等が歩きつかれて、野営をした場所が、たまたま現地の人の私有地だったのだ。現地の人は怒り狂い、遊牧民の一族に対してひどい侮辱の言葉をはいたり、暴力をふるったりした。遊牧民を野蛮な人間と見て馬鹿にするような言葉を投げかけ続けた。

結局彼等のテントの一部は破壊されたりして、一族は呆然としながらその場を立ち去った。

すごく悲しい気持ちになった。この大自然の中で、私有地をめぐってこんな争いが起こるのか…。遊牧民にとっては移動ルートは自然の贈り物であり、一時野営する場所である。遊牧民は「私有」しない。しかし、そんな大自然でも「私有」する人が出てくる。そして、「私の物」になったとたん。その土地は他の人の侵入が許されない者になる。

「俺の物」になったとたん、部外者が自由に使う事を許さなくなる。広大な大自然の映像を観てきただけに、なんというか人間のエゴ、所有欲の厄介さというものに悲しくなったのだ。

「私のもの」という思いがどれだけやっかいなものか。いつも「私のもの」という思いが心配事を生み、争いを生み出す。「私のもの」という思いで私は今日も誰かを切っているのだ。

(終)

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