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デジタル信号処理の脳室内免疫ネットワーク仮説 ー 言語は自然進化だった (第1回)

1. はじめに:生命進化と言語の進化

 40億年前に地球で発生した生命体(細胞膜のなかに信号処理回路をもった生命体)は,原核生物,真核生物,脊椎動物,哺乳類と段階的かつ跳躍的に複雑さの次元を高めて進化してきた.

 ヒトの「言語」はその延長線上にあり,哺乳類の音声コミュニケーションが発展したもので,今も進化の途上にあるというのが筆者の仮説である.

 生命誕生からヒトの言語獲得までをひとつの時間軸上にならべてみた.(表1) 20億年前にうまれた真核生物は,原核生物を細胞質内に共生させた.それから10億年以上経過して,真核細胞は相互にネットワークして多細胞が共生する生物になった.感覚器官や運動器官が発達し,中枢神経がそれらを統合すると,外部刺激を反射的行動に結びつける脊髄反射が生まれた.哺乳類は脊髄反射を利用して,鳴き声を使ってコミュニケーションし,個体を超えた群れをつくって共生するようになった.

バクテリアの誕生からホモサピエンスまでひとつながりの生命進化であった

 生命の進化は,DNAとRNAという核酸がアミノ酸に翻訳されるメカニズムとともに生まれた.これはデジタル進化である.デジタルとは,デジタル信号をデジタル回路で処理するものだ.言語もデジタル進化であり,ヒトが共同体内部で音素を共有し,無限の語彙力で神羅万象に名を与え,世界観を共有して始まり,飛躍的に発展した.音声信号のデジタル進化に対応できたのは,脊髄反射を司る脳室内の免疫細胞ネットワークのおかげである.脳内の脊髄反射回路が言葉を意味と結びつける.この脳室内の免疫細胞ネットワークの仕組みを第2回で紹介ずる.

 第3回は,言語におけるデジタル信号「音節」の進化を論ずる.南アフリカの洞窟で,狩猟採集民は共通の鳴き声をもった.それが離散化してクリック子音が産まれた.クリック子音を出すために舌打ちをしているうちに,下あごが発達し,喉頭が降下して母音が生まれた.

 母音アクセントをひとつだけもつ音素が「音節」である.音節に長期記録性をもたせるために,「文字」が発明され,さらに文字はコード表にもとづいて電気信号「bit」に変換された.

 この「音節」,「文字」,「bit」というデジタル信号を脊髄反射回路によって使いこなす方法について第4回で提案する.




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