Y4553 #13 乾電池から広がる無意味

「乾電池ってありますか?」

 乾電池…?
 確かに英語ではDry Batteryと言うし、Dry=乾で乾電池という日本語が出来たのだろうか。
もしくは英単語のSoyのように醤油(Shouyu)という日本語が先にあり、それが向こうに伝わったのと同じパターンの言葉かもしれない。
 そもそも乾電池なんていう言葉を久々に聞いた。
話す分には電池で十分伝わるし、充電池とわざわざ発音する人は珍しい。
 電池といえば思い出すのは小学校の理科の時間だ。
今は学習要項が変わっているかもしれないが、当時は小学3年生くらいの時に電池のことを習う。
 例えば直列つなぎだとパワーは2倍くらいになるが消耗の速度はそのまま。並列つなぎだとパワーはそのままだが消耗の速度が二分の一くらいになる、みたいなことを教えてもらう。
 僕はイタズラ心がないほうではなかったので、やはりそんなことを聞くと指示されてもいない直列つなぎを勝手に行う。そして電熱線から直ちに煙を出すような、そんな子供だった。
 兎にも角にも"危険"には魅力があった。と言っても危険レベルでいうと10段階で3から7くらい?の危険だろうか。
物に火がつくことを覚えたらとにかく何かしらを燃やしてみたくなったし、アイロンを布越しに触って火傷したこともある。(布越しならいけるのでは?と思った。)
 この"中くらいの危険"が好きというあまりにも下らない特性は今でもあまり変わらないように思う。

 "中くらいの危険"を得るために必要な前提条件は、まずそれが現実であることだ。
 創作の中でいくら危険なことが起こっても創作という範囲を飛び出すことはそうそうない。この世界がラストアクションヒーローの世界でもなければ、だが。
今の所アーノルドシュワルツェネッガーがスクリーンから出てくることはなさそうなので心配はない。
 とにかく創作というものは創作という範囲の中をうろうろしているだけなので、僕にとっては安全すぎる。とにかく安全が好きな人には合っている場所だとは思うが。
 創作では危険が得られないことが分かったところで、となると"中くらいの危険"は現実で出会うか、もしくは起こすしかないということも分かる。
 現実の中で自分が何か行動することによって、誰かや何かに影響を及ぼす。その結果として"中くらいの危険"が得られる。
それならば行動しない理由があるだろうか。いや、ない。(古文の授業で反語を習ったことが分かる。)
 なぜなら僕は"中くらいの危険"が好きなのだから。
そのことに理由などもない。JPOPもよく好きなことには理由はいらないと謳っているではないか。これは僕の気のせいかもしれないが。
 この特性のせいでモラルに反する行為(と、それに準ずる行為)はいくつもしてきたかもしれない。ただしあくまで"中くらいの危険"なので、刑事上の犯罪に至る行為はしていないとは言っておく。
 僕は常識的ではないが意外と最低限の良識はあるタイプだ。
というか常識的であることを大切にしているタイプの人間には何故か良識の方がなかったりもするので、気になっている。し、気をつけている。
ああいう人たちは常識という大義名分で他人を攻撃するサディストだとさえ思っている。
 話は逸れたが、モラルに反する行動といってもせいぜい歌詞を覚えずにライブ本番に挑んでみたり、恋人がいる(もしくはいるかもしれない)女性を口説いてみたり…そんなしょうもないレベルのことである。
 彼氏と同棲している女性と飲んでいて終電を逃した時は、結構ブチギレられていたらしい。(女性ではなく僕が。)でも正直その結果にはあまり興味がなかったりもする。
そう考えると実際に危険かどうかよりも、危険そうかどうかの方が重要なのかもしれない。
 どうなるかはわからないが危険レベルでいうと3〜7くらいのどこかのことが起こるであろう、というランダム性が必要なのだろうか。
 例えば会ったこともないし顔も知らない人から家に来てください、と言われたことがあったが僕は迷わず行くことを選んだ。
もちろんそのまま帰らぬ人になる可能性はあるので危険レベル8〜10にも思えるが…今思えばレベル3〜7あたりに落ち着く感じがあったから行ったようにも思う。
 自分の特性で考えるとデスノートを拾っても誰も殺せないだろう。
デスノートを拾ったとしてそれで誰かを殺すというのは危険レベル10中9か10くらいのことで、そこまで行くと僕の好みではないように思う。
 3〜7というレベルは結局のところ安全であることには変わりない。その処理に追われ多少生活が脅かされることはあるが、立ち直れないというほどではないのだ。
 ならば創作を楽しんでいる人とほとんど同じ心境なのかもしれない。場所が現実なのか非現実なのか。それだけの違い。
 僕も彼らと同じように安全なところでグルグル彷徨いている。そう考えるとまた自分という人間の下らなさを実感できて、良い。

 自分の下らなさを確かめることもまた、僕の趣味の一つなのだから。


THURSDAY'S YOUTH
篠山浩生

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