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「私の中では、あなたは作家ですから」と言ってくれた教授のこと

午後に人に会う用事があるので、朝からシャワーを浴びた。
昼間に風呂に入って、部屋に戻ってきたときの、明るい日差しに包まれた室内が好きだ。

朝ごはんを用意して、窓辺の椅子に座ってカーテンを細く開けると、母にもらったビオラの鉢植えが見えた。水やりを忘れていたことに気づき、隣に置いてあるペットボトルでどぼどぼと水をやった。
ビオラは繊細そうな見た目に反してなかなかタフな植物で、数日水やりを忘れてくたくたに萎びてしまっても、たっぷり水をやれば数時間後にはしゃっきりと身を起こしている。

ここ最近のnoteは、電車や病院などの時間つぶしに、スマホでちょちょっと書いてしまうことが多かったので、久しぶりにPCを開いて落ち着いてものを書きたいなぁと思った次第である。

友人との旅行から帰ってきて一週間以上が経ち、やっと疲れや眠気も抜けてきて、クリアな頭と重たくない体で動けるようになってきた。

今日の午後は、卒業以来初めて、大学のゼミでお世話になった教授に挨拶に行く。昨年末の結婚式のときに連絡を取ったのだが、用事で行けないから後日写真を見せてほしいと言ってくださったのである。
式場からアルバムが届いたのが入試真っ只中の時期で、かと思えば卒業式シーズンになり、頃合いを見計らいすぎて連絡が遅れに遅れ、こんな時期になってしまった。

教授は、選抜を行わざるを得ないほど人気のゼミであるにもかかわらず、体調を崩して休学した私をゼミに置いてくださった恩人である。教授に拾ってもらえなければ、私は卒業できなかっただろうと思っている。
いつも穏やかで優しく、朗らかで明るい、みんなのお母さんのような先生だった。

詩やエッセイや小説など、私の創作系の趣味に関しても理解を示してくださった。エッセイ本を作ると話したときには、印刷費を出すから売ってほしいと言い、本当に買って、すぐに読んでメールで感想をくださった。
私の拙い詩も評価してくださり、「詩集を出してよ」とずっと仰ってくださっていた。卒業後数年が経ち、Twitterでご縁のあったブックデザイナーの方にとても綺麗な製本をして頂けたので、今日ようやくそれをお渡ししに行こうと思う。

「私の中では、あなたは作家ですから」という、文学のプロである先生に言って頂けた言葉は、私の心の真ん中で一本の太い柱になっている。
プロじゃなくても、バズらなくても、私は作家なんだ、創作者なんだと、その気概だけは失わずに一生生きていきたいと思う。大袈裟だけど。

今日も在学時と同じように、過去のゼミ生のお土産や創作物がごたごたと埋め尽くしている教授の研究室で、ティーバッグのお茶を飲みながら一時間くらいお喋りするのだろう。美しく装幀された詩集を、きっと喜んでくださるだろう。結婚式の写真を、嬉しそうに眺めてくださるのだろう。

次に教授とお会いする機会は、いつになるのかわからない。卒業した大学なんて、結婚報告が終わったらもう行くことがないような気がする。
それでも私は教授が大好きだから、旅行のお土産だとか新しい本を作ったとか、なんとか口実を作って、またお会いしたいと思う。

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