ピアノを拭く人 第4章(11)
前半を終えた4人がミントウォーターで喉を潤しているとき、彩子は桐生と透と共に、座る位置の確認をしていた。
黒白の弁慶格子のスーツをまとった彩子は、三脚に乗せた録画用のデジタルカメラ越しに、いつになく洗練された透の姿を見つめていた。濃紺のスーツ姿のトオルは、空色のネクタイを締め直しながら、黒スーツを着た桐生と談笑している。事前に桐生と、話す内容と大まかな流れを打ち合わせてあるので、彼に不安の影は見られない。
彩子の両親がセミナーを視聴していることは透に伝えていない。