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IT業界とメンタルヘルス

こんにちは、ITエンジニア採用支援の東雲総合研究所です。
IT関連業務に携わっている方はうっすらお感じかもしれませんが、IT業界は他の業界と比較してもメンタルヘルス不調者が多い業界です。
メンタル不調は、誰もが他人事ではありません。
不本意な離脱を避けるために、IT関連業務に携わる方、特に実際業界内で働かれている当事者の方に広く知っておいてほしい情報を、人事の実務経験をもとにご紹介します。

※筆者はメンタルヘルスの専門家ではなく、本稿は医師の監修を受けたものではありません。あくまでもメンタル疾患の休職・復職を多数支援してきた人事の目で書いた記事となることをご了承ください。

早期の対応がカギ

転職や異動、昇進など、大きな変化が起こった後に症状が出やすい適応障害や、ストレスを起因とするメンタル疾患は、症状が軽いうちに病院にかかり、適切な治療やサポートを受けた方がスムーズに職場復帰できている印象です。不調を見逃さないことが大きなポイントとなるのですが、「不調を見逃さない」方法には具体的にどのようなものがあるでしょうか。
本記事では大きく2つの観点からご紹介します。

自分の状態を知ろう

メンタルヘルスケアにおいて、セルフケアは大切なケアの1つです。
まずは一般的なストレスや心の健康についての知識を身につけるとともに、心身の不調に敏感になる・気づくセンサーを自ら持つことが重要です。

セルフケアにおいて忘れてはいけないのが、まず、ストレスに「気付くこと」よ。身体面、心理面、行動面・・・ストレス反応は必ず現れるの。ポイントは「いつもと違う自分」に気付くことね。

 厚生労働省「こころの耳」うさぎ商事の休憩室〜みんなで知りたいメンタルヘルス より

上記は厚生労働省のメンタルヘルスに関するポータルサイトからの引用ですが、あえて「気づくこと」を強調していますね。これは、ともすれば心身の不調に自分では気づくことができず、いよいよおかしいぞと気づいた時には症状が進行していたということも十分ありうるからでしょう。
気づかないというより、不調には気づいていたけれど、仕事に対する責任感や義務感から放っておいた、という方の方が多いかもしれません。

手軽に自分の今の状態を把握する方法としては、チェックリストを利用するというのがあります。労働時間が長い時(残業時間が45時間以上となった月や、休日出勤、深夜業が多い月など)や、異動や昇進、結婚や引っ越しなど、公私問わず大きな変化があった後は、不調を感じていなかったとしても、どこかのタイミングでこうしたチェックを行うと良いかもしれません。
簡便なチェックリストとしては、厚生労働省「こころの耳」に掲載の、働く人の疲労蓄積度セルフチェック(働く人用) をご紹介しておきます。

家族や同僚の声を聴こう

本人は何の不調も感じていなかったのに、家族や同僚からクリニックの受診を勧められ、しぶしぶ足を運んだ結果、メンタル関連の診断書が出るケースは多くあります。
自分では気づくことができない小さな変化も、近しい人たちは言動や表情、仕事ぶりや生活の変化から異変を察知してくれます。「大丈夫?病院行ってみない?」と声をかけられた時は、無理せず素直に専門機関を受診しましょう。

本項目、文字数は少ないですが、実は記事中で一番伝えたいポイントです。それは家族や同僚の勧めから医療機関を受診し、治療につながったケースを多数扱ってきたからです。

どこを受診する?

具体的なクリニックを探すのが億劫な時、本当に自分はメンタル不調なのかなと疑わしい時、まずは本記事で何度も紹介している、厚生労働省所管のホームページ「こころの耳」を開いてみましょう。医療機関の紹介やメンタルヘルスケアに関する情報など、網羅的に必要な情報が掲載されているため、手軽にセルフチェックを行ったり、お近くの医療機関を探すことができます。
職場の産業保健スタッフ(保健師、産業医など)に、評判のいいクリニックや信頼できるクリニックを尋ねてみると、情報提供してくれる可能性もあります。

休業の診断書が出たら

医療機関を受診し、主治医から療養を必要とする診断書が出た場合、産業医面談を経て休職指示が出されることになるでしょう。
療養時に使用する会社制度ですが、有給休暇を取得後、休職に入るのが一般的です。傷病時に使用できる休職の期間は企業によって違うため、確認しましょう。

傷病休職の期間は無給となるのが一般的ですが、一定の条件を満たせば健康保険から傷病手当金を受給することができますし、会社によっては独自の手当があることも。
詳しくは加入の健康保険組合に確認したり、勤務先の人事部門に問い合わせてみましょう。

療養期間は医師ら専門家により定められたものです。無理して早急に復帰しようとしたり、一部でも仕事に取り掛かったりすることのないようご注意ください。
冒頭で、IT業界は他の業界と比較してもメンタルヘルス不調者が多い業界であると書きましたが、これは裏を返せば「メンタルヘルスの不調で休むことは特別なことではない」と言えます。
メンタルで休むとペナルティになるのではないか、キャリアに響くのではないかと心配になる方がおられるかもしれませんが、他業界に比べてもサッと休んでしっかり復職される方が多い印象です。この点は逆に安心できるポイントかもしれません。

復職のタイミング

復職のタイミングも、主治医や産業医の意見をもとに決められます。
メンタル不調の場合、軽い場合は復職まで数週間、重い場合は数年かかることもあります。早く職場に戻りたいと焦る気持ちがあるかもしれませんが、まずは心身を十分に回復させ、主治医や産業保健スタッフのサポートも得ながら、徐々に復職に向けて準備していくのが良いでしょう。
なお、復職時に残業時間や休日・深夜業の制限など、就業制限がつくケースも多いです。就業制限が課された場合、必ず守るようにしましょう。

さいごに

最後になりましたが、ここ数年で出社が減り、リモートワークをメインとした働き方をされている方も多いでしょう。リモートの場合は残業時間や業務負荷が上司や同僚から見えにくいこともあり、不調に気づくのが遅れるケースもあります。(具体的なケースや対応方法については、厚生労働省「テレワークにおけるメンタルヘルス対策のための手引き」を参照ください)
ぜひ自分でも意識して健康状態を振り返るとともに、家族や友人など身近な人たちからの意見に素直に耳を傾けていただければと思います。

冒頭の繰り返しになりますが、メンタル不調は誰にでも起こる可能性があり、他人事ではありません。
健康と大切な人たちあっての仕事です。本記事が皆様の心身の健康に少しでも寄与できれば嬉しいです。

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