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強いぞ!クロスSWOT分析

今回取り上げるフレームワークは「クロスSWOT分析」です。このフレームワークは戦略を練っていくので、なんというか……強いです! そして面白いです。これができたら提案力がグンっと上がる有能なフレームワークなので、まだ使ったことのない方には、どんなものかぜひ1度試していただきたいです。

「クロスSWOT分析」は「SWOT分析」をベースにしているので、「SWOT分析」も合わせてご紹介していきます。



クロスSWOT分析の基本 いつ使うの?

マーケティングの 環境分析 → 基本戦略 → 具体的な施策 の大きな流れの中では、初めの「環境分析」の出口で使います。3C、5force、PESTで集めた情報を元に、クロスSWOT分析で戦略を練ります。

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クロスSWOT分析の基本 何の略なの?

Strength(強み)
Weakness(弱み)
Opportunity(機会)
Threat(脅威)
の4つの頭文字をとったものです。馴染みのない英単語もあるので、日本語で覚えてしまった方が良いかもしれません。

この4つの要素ごとに、自社や商品、サービスを整理するのがSWOT分析 です。クロスSWOT分析では、そこから一歩進んで、SWOTの4要素を掛け合わせて戦略を導き出していきます。

それでは、具体的にやり方を見ていきましょう。



SWOT分析の4要素

まずは、SWOT分析から考えていきます。

SWOT分析では、分析したいもの(自社や商品、サービス)に対して、「強み」「弱み」「機会」「脅威」を書き出します。このときに重要なポイントは、「強み」と「弱み」は内部環境 について書き出し、「機会」と「脅威」は外部環境 について書き出すことです。

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Strength(強み)
自社が持っている強み。他社と比べて優れているところです。
例)
・資金、人材が豊富、インフラが整っている
・他社には真似できない技術やノウハウがある
・知名度が高い、ブランド力がある


Weakness(弱み)
自社が持っていないもの。他社と比べて弱いところです。
例)
・リソースが足りない、インフラが整っていない
・品質が低い、ノウハウがない
・知名度が低い


Opportunity(機会)
自社の追い風となる外部要因です。
例)
・トレンドの変化によるブームの到来
・関税の引き下げによる仕入れ値の削減
・付加価値を与える技術の発達

Threat(脅威)
自社のビジネスの逆風となる外部要因です。
例)
・代替品や新規参入企業の台頭
・自社のサービスに規制がかかる可能性のある法改正
・テクノロジー技術の衰退

PESTや3C、5forceで集めた情報を使って 漏れなく、ダブりなく 書き出していきましょう。



クロスSWOT分析

SWOT分析で「強み」「弱み」「機会」「脅威」が整理できましたね。ここからが面白くなってくるところです。

例えば「知名度が高いという強みがあります」、「トレンドの変化によるブームが来ています、チャンスです!」と提案したとします。言われた方は、うん。それで? どうしたらいいの? と思いますよね。

でも、「こうだから、こうしましょう」ときちんと筋道を立てて提案 できれば、聞いている方も「なるほど」「いや、ここはこういうリスクがある」など、提案内容を検討してくれそうですよね。


事実を伝えるだけではなく、それに基づいて「だから、どうする」と方向性を示すことが重要 なんです。点ではなく、「だから」→「どうする」と線(ストーリー)で話します。

この重要な「どうする」の部分を導き出すのがクロスSWOT分析です。具体的には、SWOT分析で書き出した各要素(だから)をそれぞれ掛け合わせて戦略(どうする)を抽出します。


下図のように、組み合わせによって戦略の内容が異なります。

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それでは、作り方やポイントを見ていきましょう。

1.9つのマスを書く

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2.SWOT分析で整理した「強み」「弱み」を横軸に、「機会」「脅威」を縦軸に書く(左上のマスは使わない)

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3.「強み」「弱み」「機会」「脅威」が交わるマスを埋める

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それぞれのマスに書く内容は、以下のように考えていきます。

強み×機会
・積極にやっていきたい戦略
強みを活かして機会を捉える にはどのような方法があるか
・「(強み)を活かして、(機会)を捉える」と書けるように考えていく
・ただ単に強みと機会を組み合わせるのではなく、積極的にやっていくべき魅力的な戦略は何か 見極めることが重要です

強み × 脅威
・差別化を狙う戦略
強みを活かして脅威に立ち向かう にはどのような方法があるか
・「(強み)を活かして、(脅威)に立ち向かう」
 「(強み)を活かして、(脅威)から逃れる」
 「(強み)を活かして、(脅威)を軽減する」と書けるように考えていく
・立ち向かう(逃れる、軽減する)ためにはどうすれば良いのか、差別化のポイントを明確にする ことが重要です

弱み × 機会
・弱点を克服する戦略
弱みを克服して機会を捉える にはどのような方法があるか
・「(弱み)を克服して、(機会)を捉える」
 「(弱み)を強みに変えて、(機会)に乗ずる」と書けるように考えていく
・弱みを克服する(強みに変える)ためにはどうすれば良いのか、補強するポイントを明確にする ことが重要です

弱み × 脅威
・専守防衛 or 撤退戦略
弱みをふまえて、脅威の影響を最小限にする
・「~はやらない」と書けるように考えていく
・限られたリソースを有効活用するために、やらないことを決める ことが重要です


クロスSWOT分析をやってみよう!

それではスポーツクラブを経営しているとして、クロスSWOT分析をやってみましょう。

まずは、「強み」「弱み」「機会」「脅威」を書き出します。実際には3C, 5force, PESTなどで集めた情報を使って書いていきましょう。

ここでは以下とします。

強み
・温浴施設が併設されている
・ダンスやヨガ、アクアエクササイズなど、充実したプログラムがある
・施設が新しくてオシャレ

弱み
・屋外施設がない
・筋力を鍛えるトレーニング機器の種類、数が少ない
・開店したばかりで知名度が低い

機会
・健康志向の高まりによる運動需要の拡大
・ウォーキングなど手軽に行える運動の実施人数の増加
・生活スタイルに合わせた運動形態の多様化

脅威
・コロナ禍による屋内施設の利用客の大幅な減少
・トレーニング機器を介した感染リスク
・ジムに属さないパーソナルトレーナーの増加

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次は、書き出した各要素をかけ合わせて「どうする」を考えていきます。面白い部分なので、ぜひ一緒に考えてみてくださいね。


積極化戦略(強み×機会
まずは積極化戦略です。「強み」と「機会」をいろいろ組み合わせて、積極的にやっていきたいこと を探しましょう。

例として以下を考えてみました。
「施設が新しくてオシャレ」
  ×
「生活スタイルに合わせた運動形態の多様化」
  ↓
「新しくオシャレな施設を活かして、生活スタイルに合わせて多様化された運動形態の需要を捉える」

例えば、シェアオフィスやオンライン会議用のブース、休憩スペースを提供すると、テレワークをしている人たちを呼び込めるかもしれません。



差別化戦略(強み×脅威)
次は「強み」と「脅威」です。どうすれば、脅威を抑えて差別化 できるでしょうか?

例えば、
「ダンスやヨガ、アクアエクササイズなど、充実したプログラムがある」
  ×
「ジムに属さない個人のパーソナルトレーナーの増加」
  ↓
「充実したプログラムを活かして、増加したパーソナルトレーナーの影響を軽減する。興味や運動経験値に合わせた少人数のプログラムを多数開催する」

大人数でのプログラムとパーソナルトレーニングの間を狙った戦略です。人気のプログラムを更に充実させていけば、差別化ができそうですね。



弱点克服戦略(弱み×機会)
「弱み」と「機会」を見比べながら、何を補強すれば、弱みを克服できる(強みに変えられる)のか、探っていきましょう。

例えば以下のように段階を踏んで考えてみたら、どうでしょうか。
「屋外施設がない」
  ×
「ウォーキングなど手軽に行える運動の実施人数の増加」
  ↓
「屋外施設がないことを克服して(屋外施設がないなら、あるところに行く)、ウォーキングなど手軽に行える運動の実施人数の増加に乗ずる(会員にはなっていないが、運動に興味のある人を呼び込む)」
  ↓
「手軽な運動を行う人が増えたことに乗じ、会員の家族や友人と一緒に地域のウォーキングイベントなどに参加する機会を積極的に作る」

親しい人と一緒にイベントに参加してもらうことで、入会のきっかけを作ろうと期待した戦略です。



専守防衛戦略(弱み×脅威)
ここは「弱み」と「脅威」2つのマイナス要素が集まっています。今やらない方が良いこと は何でしょうか? 

例えば、
「筋力を鍛えるトレーニング機器の種類、数が少ない」
  ×
「トレーニング機器を介した感染リスク」
  ↓
「筋力を鍛えるトレーニング機器の使用を控え、ランニングマシンのみ使用することで、感染対策を徹底する」

感染対策をするのもリソースが掛かりますので、思い切って使用しない機器を作るのも一つの戦略です。


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まとめ

「クロスSWOT分析」いかがでしたでしょうか? 実際にやっていただくとフレームワークの強さや面白さを感じられると思いますので、ぜひご自分の会社や興味のある業界でやってみてくださいね。

すでに試していただいた方はお分かりかと思いますが、ここまで考える内になんとなく「誰に」「何を売るのか」がイメージできていますよね。

ここで思い描いた「誰に」「何を売るのか」の解像度を高めて、基本戦略を決めるのが、次に行うSTP分析です。


STP分析については以下の記事でまとめています。


それでは、最後までお読みいただき、ありがとうございました!


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