サーキュラーエコノミーの施策、脱炭素につながらないリスクも理解しよう
本記事は、ESG/SDGs/CSVに関しての個人的な学びのアウトプットです。
サーキュラーエコノミーを脱炭素につなげるための必須条件が解明されたというニュースが飛び込んでまいりました。
記事によると、耐久消費財のレンタル、シェアリング等の10種類のサーキュラーエコノミー施策を通した温室効果ガス(GHG)の削減効果を100文献・1500シナリオの横断的な分析により定量化した結果、シェアリング、リユース、サービス化は、適切に導入された場合には高いGHG削減効果が見込まれたそうです。
分析対象
大型家電、小型家電、ICT機器、工具類、衣類、書籍、容器包装、自転車、自動車等の主要な耐久・半耐久消費財を網羅
対象施策
1)サービス化
2)プーリング(同時利用)、
3)シェアリング、
4)レンタル、
5)リース、
6)リユース、
7)リファービッシュ(再整備)・リマニュファクチャリング(再製造)
8)アップグレード・モジュール化
9)修理
10)耐久性
分析結果
上記の分析の結果、以下の結果が得られたということです。
出典:国立環境研究所HP
これをみると、右から4つの「リユース、プーリング、サービス化、アップグレード・モジュール化、シェアリング」が高い温室効果ガスの削減効果が見込まれています。
一方で、本研究のミソは赤いドットでプロットされているバックファイア効果が生じる割合(右軸)になります。バックファイア効果とは、施策を行うことの削減効果よりも増加分が多く、むしろ温室効果ガスの排出量が増えてしまう可能性が高いということです。
温室効果ガス排出量が増えちゃうかもな施策
バックファイア効果が生じる可能性が高い施策は「耐久性、レンタル、シェアリング、サービス化」という結果になっています。シェアリングとサービス化は高い温室効果ガス削減効果が見込まれた施策と重複していますね。
また、修理、プーリング、アップグレード・モジュール化はバックファイアリスクが低く、確実に温室効果ガスの削減が見込まれるというのも面白い結果だと思いました。
この研究結果は、欧州で支持されているFairPhoneが、温室効果ガスを削減するという観点で合理的なアプローチなんだな、と思いました。FairPhoneはご存じの方も多いかもしれませんが、ユーザーがほとんどのパーツを自身で交換・修理ができるようにするという思想で設計されたスマホです。修理可能だし、パーツがモジュール化されているし、そのためアップグレードが可能です。
修理する権利
ちょっとだけ元の記事から脱線しますが、以下の記事によると2021年7月には、米連邦取引委員会(FTC)が「修理する権利」に関する法律の施行が全会一致で可決されたといいます。EUでは、2020年11月に消費者の「修理する権利」を認め、その規則をまとめた案が採択済みだといいますし、フランスでは電気・電子機器への「修理しやすさ」の表示を義務付けているとされています。日本との温度差を感じます。
バックファイア効果の要因とは
さて、元の記事い戻ると、本研究では、温室効果ガスが結果的に増大してしまう「バックファイア効果」の要因を調べた結果、「輸送回数や距離の増加、使用回数の変化」がもっとも多く報告されたそうです。
特にシェア、レンタル、サービス化、プーリングなどのような所有から利用の変化が伴う施策の場合、「利用」が伴わない輸送が増えることが温室効果ガスを増やすというのは想像しやすいですね。また、使用回数というのは、Uberやカーシェアなどのような、これまで稼働率が低かった自動車が良く使われるようになるので、温室効果ガスが増えるといったことだと思います。これも想像しやすいですね。
ただし、前提条件は変わる
しかしこれらも、そもそもそれらの輸送や利用に使われるエネルギーが再エネになれば、脱炭素的には問題なしになることも考えられるとも思います。そのあたりの前提条件が変わることも考慮に入れる必要があるのだろうと思いました。
いずれにせよ、示唆のある記事だと思いました。以下、記事の本体の中には、他も多くの図表があるので、ぜひのぞいてみてください。
おわりに
このほか、当方のESG/SDGs/CSV関連の記事は以下のマガジンにまとめていますので、もしよかったらのぞいてみてください。またフォローや記事への「スキ」をしてもらえると励みになります。
ということで「形のあるアウトプットを出す、を習慣化する」を目標に更新していきます。よろしくお願いします。
しのジャッキーでした。
以上