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ESGを人材戦略のど真ん中に置く花王の取り組みを、統合レポートで実際に確認してみた

本記事は、ESG/SDGs/CSVに関しての個人的な学びのアウトプットです。

2021年5月13日に行われた「日経SDGsフォーラム」での一橋大学CFO教育研究センター長 伊藤邦雄氏の「見破られるESGと深化するESG経営」という講演がとても面白かったので、学びを共有いたします。

前回は、「ESG×パーパス」についてでしたが、今回は「ESGと人材戦略」です。

ESG経営を進化させる変革要素

伊藤氏はESG経営を強靭化し、深化させる全体像をESGを取り巻く、6つの要素「資本生産性」「パーパス」「気候変動/TCFD」「DX(デジタルトランスフォーメーション)」、「人材戦略」「ファイナンス」からなるヘキサゴン・モデルで表現します。これらの要素をうまく連動させていくことが、重要だとし、組み合わせの事例を紹介します。

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ESGと人材戦略を連動させる

ESGと人材戦略の連動させている事例として、「花王」を取り上げます。花王ではESGを経営のど真ん中におき、経営層およびメンバー層の両方にESG評価を高い比率で入れ込んでいるといいます。

実際に花王の統合レポートをみてみた

最初のページで、人材戦略そっちのけでびっくりするキーワードがでてきてのけぞりました。以下を見てください。「成長に限界」といえるのがすごいと思いませんか?

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花王統合レポート2021(こちら)より

さて、本題の人材戦略のページはp.27にあります。花王の新中計であるK25では、「社員活力の最大化/活動生産性2倍へ」を銘打って、OKR(Objectives and Key Results)の導入を第一に掲げています。

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花王統合レポート2021(こちら)より

OKRの導入の目的として、KPIによる管理では、立てた目標を達成すればよい、となり挑戦をや革新的な成果を生み出しづらいのに対して、OKRでは、最終目標として高い目標を掲げ、そこに向けた達成度60%を基準にしてストレッチを設けるような目標管理ができることがポイントだとしています。

そのうえで、OKRで評価する3つの視点の一つ目にESGが出てきており、確かに経営のど真ん中に置いているというのがわかります。そのうえ前回の投稿で、パーパスの自分ゴト化というのを挙げたのですが、人事評価の3つの項目の一つがMy dreamであることにも驚きました。

花王のOKR制度では、各社員が「ESG」「Business」「One team and my dream」の3つの視点でOKRを考え、ESG貢献、事業貢献、協働や他部門貢献などの幅広い分野で、自らを成長させることへのチャレンジを促します。
各社員が設定したOKRを社内のイントラネット上に掲載するなど、OKRに関する活動を透明化することで組織の壁をなくし、開かれたフラットな組織風土の醸成をめざします。

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花王統合レポート2021(こちら)より

また、経営層という観点ではp.65の役員報酬制度を見ると、確かに、長期インセンティブ報酬の評価項目3つのうちの2つ目にESG力評価指標があり、外部評価も含めて評価する仕組みが組み込まれていることがわかります。

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花王統合レポート2021(こちら)より

ちなみに、私の所属するNECでも、花王と同じように報酬委員会を設置しています。2020年度の有価証券報告書のp.78を参照すると報酬の内訳は以下です。

取締役報酬=基本報酬+賞与+株式報酬

中長期インセンティブとしては業績連動の株式報酬をとっており、その中身は、対象事業年度の業績目標の達成度に応じた評価と、コンプラ違反などがあった時の減点方式で決まるようになっています。

ということで、まずは、私の所属するNECではESGによる役員報酬へのESGの取り組みはされてないことがわかります。また、従業員のESG評価も盛り込まれておらず、伊藤氏がいうように、花王がESGを人材戦略のど真ん中に置いていることがよくわかりました。

花王のROESGランキングは

同じく伊藤氏の講演の中でROEとESG(資本生産性×ESG)を掛け合わせたROESGという指標で評価した際の国内企業ランキングで花王は3位にランクインしています。ちなみに、花王の直近3年の平均ROEは16.5%のようです。す、すごい。(NECは9%です)

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週刊東洋経済SDGsランキングでの花王のランクは

ちなみに、2021年7月号の週刊東洋経済で、SDGsランキングというのが発表されていました。その中で花王のランクを見ますと、54位にランクインしていました。ランキングでは、人材活用・環境・社会性・企業統治の4項目で評価されており、花王のそれぞれの項目でのランキングは以下のようになっており、人材活用と企業統治で高く評価されていることがわかります。

人材活用 22位
環境 76位
社会性 189位
企業統治 7位

ちなみに、ですが、私が所属するNECは29位と高順位にランクインしておりまして、企業統治、環境、社会性で高評価をいただくも、人材活用に関してはもうひと頑張りという評価でした。

人材活用 121位
環境 22位
社会性 25位
企業統治 7位

おわりに

今回は「日経SDGsフォーラム」での一橋大学CFO教育研究センター長 伊藤邦雄氏の「見破られるESGと深化するESG経営」から、深化するESG経営のための示唆について「ESGと人材戦略」について事例に取り上げらていた花王の統合レポートを実際に見ての学びを共有いたしました。

このほか、当方のESG/SDGs/CSV関連の記事は以下のマガジンにまとめていますので、もしよかったらのぞいてみてください。

ということで「形のあるアウトプットを出す、を習慣化する」を目標に更新していきます。よろしくお願いします。

しのジャッキーでした。

Twitter: shinojackie


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