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ダイナミックケイパと補完関係にある取引費用理論についてまとめてみた①

どもっ、しのジャッキーです。本記事は、超重要経営理論「ダイナミック・ケイパビリティ」に関する個人的な学びをアウトプットするものです。

カリフォルニア大学バークレー校でデイビット・ティース教授に師事していた菊澤教授による"「ダイナミック・ケイパビリティ」の経営学"という書籍(以下、本書)からの学びをまとめていきます。今回は第13回です。過去記事の一覧は末尾に載せておきます。

前回は、ダイナミックケイパビリティに対するよくある誤解、というのを取り上げました。今回は第8章「ダイナミックケイパビリティによる企業の巨大化」について学びを抽出したいと思います。

取引費用理論とダイナミックケイパは補完関係

本章は、ダイナミック・ケイパビリティの創始者のデイビッド・ティース氏は同氏の師であるウィリアムソン氏の取引費用理論と補完関係にある考え方だとして、本第8章は、取引費用理論とダイナミックケイパビリティの関係が描かれています。

ここで、私自身、本書の内容に入る前に「世界標準の経営理論」をもとに取引費用理論について学びなおしてみてから、"「ダイナミック・ケイパビリティ」の経営学"の内容を理解したいと思います。ということで、今回と次回は「世界標準の経営理論」ベースの取引費用理論についてまとめます。

取引費用理論って?

取引費用理論の目的は、取引で発生するコストを、最小化する形態・ガバナンスを見出すことです。TCEは人が与えられた条件の中で自分にとって好ましいものごとを選ぶという古典的経済学の意思決定の仮定に、「限定された」合理性という概念を持ち込み、「組織とは何か」の本質に迫ります。

<限定された合理性>
「限定された合理性」とは、人の将来を見通す認知力には限界があり、人はその限られた将来予見力の範囲内で合理的に意思決定を行う、という考え方です。

市場取引におけるホールドアップ問題と解消法

TCEを理解するにあたって「ホールドアップ問題」について事例をもとに学びます。

「世界標準の経営理論/入山章栄」をもとに篠崎作成

ときは1919年ごろ、まだ車のボディが木製だったころです。GM社は、鉄鋼製のボディになっていくことを見越して、Fisher Body社と鉄板をプレスする設備の投資と車体製造を依頼します。それに対して、Fisher Body社は本当に売れるか不安なため10年専売契約を条件に合意します。

その後、鉄鋼車体ニーズがGMの想定以上に急増します(不測の事態)

「世界標準の経営理論/入山章栄」をもとに篠崎作成

この環境変化をうけGM社はFisher Body社に、ボリュームディスカウントを要求します。しかしFisher Body社は値下げに応じません。

これは10年専売契約という縛りがあり、GM社は他社を選べない、しかも製造をFisher Body社に委託したためGM社には鉄鋼ボディをつくる技術もノウハウもなく、Fisher Body社以外にGM社の要求を満たすサプライヤーが不在というにっちもさっちもいかない状況になっていたからです。

このにっちもさっちもいかない状況のことをホールドアップ問題といいます。

ホールドアップ問題の要因

ホールドアップ問題が起きる大前提は「機会主義」です。機会主義は「人・組織は、合理的意思決定として、相手を出し抜いてでも自分に利する行動をとる」ということです。

<ホールドアップ問題の大前提:機会主義>
人・組織は、合理的意思決定として、相手を出し抜いてでも自分に利する行動をとる

この機会主義という大前提の上で、ホールドアップ問題が起きる3つの要因が以下となります。

ホールドアップ問題が起こる3つの要因
①不測事態の予見困難性
②取引の複雑性
③資産特殊性(代表例は下表)
「世界標準の経営理論/入山章栄」をもとに篠崎作成

これら3つの要因がある限り、将来を考えながら意思決定を行っても、認知の限界から想定外の事態によるホールドアップ問題のリスクは払拭できない、ということになります。

ホールドアップ問題の解消法

では、もうホールドアップも問題についてはお手上げなのか、というと解消法はあります。それが内部化(internalization)です。内部化とは、取引相手のビジネスを内製化や買収するなどし、取引にかかる様々なコスト内部に取り込みを解消する、というアプローチです。実際に、GM社はFisher body社を完全買収するという形で、ホールドアップ問題を解消しました。

取引費用理論の続きについて

次回は、「世界標準の経営理論」ベースの取引費用理論の後編「TCEからみる企業の範囲、ガバナンス、国際化戦略」では、内部化か、市場で取引か、という意思決定をするにあたって、どのような思考の軸を持てばよいのか、国際進出の戦略をもとにまとめます。

おわりに

このほか、当方の経営理論に関する記事は以下のマガジンにまとめていますので、もしよかったらのぞいてみてください。またフォローや記事への「スキ」をしてもらえると励みになります。

ということで「形のあるアウトプットを出す、を習慣化する」を目標に更新していきます。よろしくお願いします。

しのジャッキーでした。

Twitter: shinojackie

<過去記事>

  1. 未完の超重要経営理論「ダイナミック・ケイパビリティ」変化する力はどう獲得するのか?

  2. 「ダイナミック・ケイパビリティ」が解決する問題とは?

  3. 「ダイナミック・ケイパビリティ」は組織の不条理をどう回避するのか?

  4. 「ダイナミック・ケイパビリティ」が提示する日本企業が目指すべき経営パラダイム

  5. 「ダイナミック・ケイパビリティ」からみる富士フイルムの既存技術転用の変革を1枚にまとめてみた

  6. 任天堂が独占していたゲーム機業界でソニー独り勝ちを実現した共存戦略

  7. YKKのイノベのジレンマ回避戦略とパラダイムシフト×環境変化×経営理念 #ダイナミックケイパビリティ

  8. 日本的経営と #ダイナミックケイパビリティ は相性が良いのか?

  9. イノベーションは資本主義から自由を守ることかもしれない

  10. ダイナミックケイパビリティ に至る経営理論の系譜

  11. (番外編)合理的に失敗してしまう不条理にダイナミックケイパで立ち向かえ

  12. ダイナミックケイパビリティの誤解とセンスメイキング理論

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