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GAFAは日本からうまれていたのかもしれない #起業の天才

起業の天才!」面白かった。リクルート創業者、江副浩正(えぞえ ひろまさ)氏のストーリー。歴史に「たられば」はないのですが、もしリクルート事件がなかったら、GAFAのようなビジネスは日本からうまれていたのかもしれないと思わされました。

実は、リクルート事件というのは、言葉としては聞いたことがありましたが、その中身については全然知りませんでした。Wikipediaには以下のように書かれています。

リクルート事件(リクルートじけん)とは、1988年(昭和63年)6月18日に発覚した日本の贈収賄事件である。

リクルートの関連会社であり、未上場の不動産会社、リクルートコスモスの未公開株が賄賂として譲渡された。贈賄側のリクルート関係者と、収賄側の政治家や官僚らが逮捕され、政界・官界・マスコミを揺るがす、大不祥事となった。

当時、第二次世界大戦後の日本においての最大の企業犯罪であり、また贈収賄事件とされた。

引用:wikipedia, リクルート事件

江副氏の生い立ちから、リクルートの創業、成長、そして江副氏が倫理感覚が危うくなっていき、リクルート事件が起きていく過程から、いまではありえないような人権を無視した取り調べなども描かれ、ドキュメンタリーとして迫るものがある内容となっています。

そもそもリクルートは、大学の新聞から始まっています。大学新聞の広告の一つだった企業の求人。これを求人広告だけの冊子にしてしまう、というところがスタートだったようです。普通、紙の媒体は、紙の媒体そのもの、本や雑誌にお金を払ってもらうビジネスモデルです。しかしこれを、求人広告を出したい企業からお金をもらい、求人広告誌はただで配る、というビジネスモデルを思いつき実行したことが江副氏のすごいところでした。

いまだったら、「これはイケてるアイデア」だと思うかもしれませんが、当時はそんなのありえない、うまくいくわけない、という反応だったようです。そこをあの手、この手をつかって突破していく、しかもそれが、いろいろな人をと巻き込んで、というか、たらし込んでといううか、で実行していくこの求心力なのか遠心力なのか、がすごいと思いました。

さて、この広告で売り上げをあげて、求人情報という価値を提供する側は無料で提供するというビジネスモデルは、Googleのビジネスモデルそのものですね。Googleであれば、検索サービスを無料で提供し、そこで表示する広告収入でビジネスをしています。Facebookなんかもそうですね。マルチサイド・プラットフォームと呼ばれていたりもしますね。

そして、コンピューターがでてきて、インターネットがでてきたら、すぐにそこに企業規模からは考えられないほどの投資をしています。そして、いまでいうデータセンタービジネスがくることが江副氏の頭の中では、クリアに見えていたようです。日本、アメリカ、ヨーロッパにデータセンターなんて概念がない中で、いまでいうデータセンターを建設して、ネットワークでつないで、24時間稼働させようとしていたのか、実際にさせていたのか、うろ覚えですが、そういうことをしていたようです。また自分たちが常に使うわけではないので、空いている時間を貸し出すサービスもしていたといいます。

これはシェアリングサービスともいえるし、ピンとくる人は、AWSのビジネスをすでにやっていたといったほうが、やばさが感じられるのではないでしょうか。そういうことをGoogleやAmazonが生まれる前から取り組んでいたのです。しかも、求人広告や、その次に始めた不動産情報誌事業(今のスーモ)や、リクルート事件につながる不動産事業「リクルートコスモス」などで儲けまくっていたお金で、狂気の投資をしていたようです。

シリコンバレーのスタートアップのエコシステムでは、血気盛んな創業者が、どこかのタイミングで経営経験豊かなベンチャーキャピタリストや、プロ経営人材の伴走によって、ビジネスの成長だけでなく、コンプライアンスや倫理観といった側面も含めてサポートされることが事業の持続性を高めていると聞きます。

ある種の学生ベンチャー的にビジネスをひた走った江副氏には、良い意味で大人になるための土壌がない中で、とんでもないビジネスの才能が暴走してしまったのだな、と「起業の天才!」を読みながら思いました。

そして、リクルート事件が起きたことで、企業と政治の間に大きな心理的な距離が生まれたという側面もあるのではないか、と思いました。

以前に、「ロビイングのバイブル」や「世界市場で勝つルールメイキング戦略」という書籍を読んでいたら、日本では、企業が政治家と協力して市場を創出する活動ができていない。一方で、欧米では、ロビイストという職業が業界として成立していて、そういった人たちが企業と政治家の間のパイプとなって、ルールを作り、そのルールによって市場が生まれビジネスを成立させていく、というダイナミックな動きができているといっていました。

このあたりは、経営戦略においても、非市場戦略とよばれ注目の領域のようで、以下のnoteですこし取り上げました。

このロビイング、ルールメイキングといったアプローチを日本が下手になってしまったきっかけが、リクルート事件だったのかな、と思わせるに十分なインパクトがありました。そして、リクルート事件以降、不動産バブルは崩壊し、日本の失われた20年、30年がスタートしました。

リクルート事件とは、

デジタルビジネスを日本発で生み出せたかもしれないという機会が失われたこと
・企業と政治が協力しながらルールメイキングによって日本の技術やビジネスモデルで世界を引っ張っていくという関係性が失われたこと

このダブルの意味で、日本経済において20年、30年つづく大きな負の影響を与える事件だったのだな、と思わされました。

となんか暗い感じになってきましたが、新事業開発に携わる人や、デジタル産業に携わる人は読んでおいて損のない一冊だと思いました。超おすすめです。

ということで「形のあるアウトプットを出す、を習慣化する」を目標に更新していきます。よろしくお願いします。フォローや記事への「スキ」をしてもらえると励みになります。

しのジャッキーでした。

Twitter: shinojackie

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