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人的資本経営とリーダーシップ、野田稔さん、川上真史さん、内田和成さんの話を聞いての気づき

BBTで、野田稔さんの「人的資本経営における人事の付加価値」について、川上真史さんの「セルフ・リーダーシップ」についてや、内田和成さんの視聴者への質問会などの講演を聞いていた。

共通して感じたことは、付加価値を生み出しているのは「人」、ということ、でした。これまで材料の一つと見られていた人「材」が、人的資本と言われるようになってきた。これは「人」とは付加価値を生み出す資本だという認識が強まってきたこと。そして、それを考える時にリーダーシップという概念への理解を深める必要があるな、と思いました。

内田和成さんが、「アメリカの会社は、ワーカーは経営資源なので企業価値を高めるために増減・入れ換え自由。一方、日本の会社にとって人は経営資源ではなく会社そのもので、そこをいじるのは最終手段にしたい。人に関する捉え方が違う。欧州はこの中間のように思う。欧米と一括りにしない方が良い。日本が人の領域で学ぶとしてら欧州も方が良いかもしれない」ということをおっしゃっていました。

人的資本経営という言葉が注目を浴びているが、本来は、日本はそういう気質を持っているのかもしれないとも思った一幕でした。「ダイナミックケイパビリティの経営学」という本の中で、米・独・日を職務特性から分析した表があるのですが、それに基づくと、日本は、会社組織を外部環境の変化に合わせてダイナミックに変化させていく能力であるダイナミックケイパビリティを発揮しやすい組織だ、と主張していることを思い出しました。

一方で、野田稔さんは、「人材版伊藤レポートで、人材戦略のイニシアティブを人事部から取締役会へ、という主張をしているが大反対。財務や経理において取締役会では専門的であり、役員も俯きがち。しかし、組織・人事の話になるとみんな持論を展開する。そのため人事部員は“素人に口を挟ませない圧倒的な説得力“が求められる。それには圧倒的な現場感覚・経営感覚、そのための想像力・対話力、データ分析、論理力・構造力、人間に対する深い洞察が必要」ということをおっしゃっていました。

ほんと人事や組織の話って、「好き・嫌い」とかで決まっちゃうことが多いですよね。最近、キングダムやら、三国志やら、を読んでいても、ほんと思わされます。同時に、「人間に対する深い洞察」に基づく抜擢や組織の変更が大き突破口となることも痛感させられます。私の好きなビジネス小説の「V字回復の経営」では気骨の人事って言葉が出てきます。そこに至るまで、経営者自身が現場を回って個別の対話を持って人を見出していくことが描かれていました。

また野田さんは、リーダーシップの類型が変わってきたとして2020年1月のハーバード・ビジネス・レビューに載ったNimbre Leadershipについてこんなふうにおっしゃっていました。

「イノベーティブな会社には、現場に起業家型リーダーがたくさんいて、それを支える支援型リーダーがいることで、既存事業を継続しながらも、新しいことにも挑戦できるようになっている。ここまではこれまでもよく言われていたこと。

ここに設計型リーダーシップが提唱された。これは起業家型リーダーや支援型リーダーが気持ちよく働けるような“制度・文化・仕組み“を作ることをいう。その例としてマイクロソフトのサティア・ナディラ氏が挙げられていた。ここから言えることは、これからの人事には人事制度の管理ではなく、組織開発力が求められる。それによって企業変革をリードしていくことが求められる」

リーダーシップの話になってきました。Nimble Leadershipって、支援型の一種ではないのかなぁ?とも思い、自分としても調べてみたいと思いました。2022年から経営企画部門になって業務をする中で、自分がやりたいと思っていることのヒントがこれにあるように感じました。

さて、川上真史さんの「セルフ・リーダーシップ」です。セルフ・リーダーシップとは「自分で自分にリーダーシップを発揮することで、自身に対するエンパワーメントを実現する」ということだとします。このために以下の3つのキー・コンピテンシーが必要という研究結果が出ているそうです。

  1. 社会・文化的、技術的ツールを相互作用的に活用する能力

  2. 多様な社会グループにおける人間関係形成能力

  3. 自律的に行動する能力

特に3つ目について、自分で自分の人生をプロデュースする能力であり、それを理解する上で「自己実現」という概念についての理解が必要。クルト・ゴルトシュタイン氏とユング氏を引きつつ、自己実現は欠乏動機ではなく、成長動機である。自己実現はSelf Actualizationであり、ありのままの自分を具現化・現実のものにしていく、というイメージである。人間の成長は、目標や夢を達成していくという感じがあるかもしれないが、自己実現のニュアンスは、自分自身が本来持っているものを表面化していく、それを見つけていくという方向。セルフ・リーダーシップの根底は、このような本来の自分自身(セルフ)が持っていることを引き出していく(リーダーシップ)を自分自身で自分に対して行っていくこと、と解説していました。

その上で、リーダーシップ研究は、リーダーがどうやったら組織を動かせるか、と考えていくと行き詰まる。そして、メンバーシップ型のリーダーシップになってくる。結局、一人一人がリーダーシップを発揮しているようになっていくこと、つまりセルフリーダーシップによっていく。しかし、これは自分自身でやることなので、難易度が高い、と言います。

以前に以下の記事で「世界標準の経営理論」でのリーダーシップ理論についてちょっと触れました。ここでは、メンバー全員がリーダーシップを取るシェアード・リーダーシップ(SL)とビジョン・啓蒙を重視するトランスフォーメーショナル・リーダーシップ(TFL)の組み合わせが、現代のリーダーシップにおける最強のパターンとしています。

セルフリーダーシップというものは、このSL・TFLのどちらにも共通する概念になるな、と思いました。どちらも個として自律しているということだと思います。

今やっている仕事が、まさに組織と人とリーダーシップに関わるものだと気づけて学びが多いコンテンツでした。チャレンジしようとするイントレプレナー(起業型リーダー)が気持ちよく働くために支援するだけでなく、それが制度・文化・仕組みにしていくところまでみて動いていきたいと思いました。

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