令和SNS草子
2023年すなわち令和5年7月6日、俵万智歌うところのサラダ記念日と同日においてメタ社いわゆる元facebookが、インスタグラムに紐づくTwitter型SNSとして「Threads」をリリースした。
メタ社といえば、あのマーク・ザッカーバーグである。Podcastにてデビッド・フィンチャーの映画『ソーシャル・ネットワーク』の同時視聴レビューを行なった身としてはマークはもはや他人ではない。カリフォルニアで突然冷蔵庫から出したビール瓶を「ほらよ」と投げられても鮮やかにキャッチする自信がある。ショーン・パーカーのキュートでヒップな彼女のように受け取り損ねて2本も無駄にしたりしない。だが私がまずもって思ったのは
「Threads…読めねえ」
であった。(スレッズです)
そう、ちょうどこれを書いている時間帯でThreads開始からほぼ24時間、フォロワー数はちょうど200を数えた。有名でない、Wikipediaに個人ページを持つわけでもない市井の一般人としてはそこそこのペースかなと思われるが、その理由の一つには東京ドームのざっくり三倍分、フォロワー数15万超えを誇るヤンデル先生のこちらのツイートがあると思われる。
ありがたい話である。とりあえずピエール中野さんをThreadsでフォロー。
さて、そのThreadsである。1日使ってみた印象としては、
・すっきりしたスマートなインターフェース
・写真が(Twitterよりも)綺麗に表示される
・文字が小さい
・エゴサなど検索できないのは不便
・リロードのときに@風のマークがクルクルするのが可愛い
・フォローされた相手へのフォローバックがやりづらい(わかりづらい)
この辺がざっくりとした印象である。
まあ、SNSの使い方というのは人によって違うし、使いやすさのポイントもそれぞれだろう。Twitterが圧倒的に使いやすいと思われているのは、そこを主戦場にしてきた人が多いことでの慣れというのも大きな要素だ。またTwitter側も実際、15年かけて(Twitter日本版のリリースは2008年4月23日だ)みんなにとっての使いやすさを検証し、アップデートしてきた。私がTwitterを使い始めたのは2008年7月なので、ほぼサービスの始まりから見届けてきた形になるが、今と昔のTwitterの形はずいぶんと違うものだ。それだけ、長い時間をかけて研鑽され洗練されたのが今のTwitterであり、それがTwitterの使いやすさを生んでいるのだろう。
そのTwitterは悪名高きイーロン・マスクが経営を引き受け、さまざまな「テコ入れ」をしたことがユーザーの大不評を買い、まさにディアスポラとでも言うべき「人心の大離脱」を生んでしまった。あるいはTwitterはタイタニックで、沈む船から違うどこかに乗り移ろうとする人々が大量に動いているそのようにも見える。個人的にはアレクサンドロス大王に対するディアドコイ(後継者たち)、または漢帝国に対する董卓の専横からの三国志時代の群雄割拠など、「ポストTwitter」の乱立を歴史さながらに喩えたいところであるが話が複雑になるのでここでは一旦やめておくことにする。
最後に、それぞれのSNSに対する個人的所感を記して筆を置くことにしよう。筆っていうかキーボードですけど。
良くも悪くも皆の意見がもっとも集まる場所。テレビのニュースもTwitterを頼りにしてる。ただそこには当然バイアスがあるので、意見の取捨選択の余地は大いにある。インターフェースのデザインはダサくもなく尖ってるわけでもなく、ちょうどいい塩梅。先日の「API制限事件(1日に閲覧できるツイートの数に制限がかかった)」が決定的だったようで、そこからかなり目に見えて他のSNSへの移動を模索する人が増えた。
SNSと言いつつ、ユーザー同士やり取りさせる気があるのか?という印象なのだが、どうなんでしょう。思えば私は写真を載っけるだけのアルバムとして使ってるな…。インターフェースデザインはおしゃれで、とっつきづらいと思う。おしゃれ空間に人は気軽に入れないものです。人種によっては呼吸ができないので…。
仕事関係も含めたリアルの人がメインなので、全然好きに書けない。というか文章書いてない。ある意味、もっとも「ソーシャル」と「リアル」の温度差を感じる場所。もはや知り合いの生存確認をする場所。ただ試み自体は面白い。すでに世界的にはすごいユーザー数なのかもしれないが、このアイデアがさらに世界を覆い尽くしていたら…と思わないでもない。インターフェースはマークことザッカーバーグには悪いがかなりダサめだと思う。
YouTubeとかLINEもSNSサービスになるようだけど割愛。
note
ここ。いわゆるブログエントリを書くならnote、ということで使っている。使いやすさについてはかなり練られており、はじめから洗練されていた印象。なくならないで欲しいとは思うけど、どうなんでしょうね。Webサービスとしてはブログの系統であり、Twitterのような短文投稿サイトとは趣を異にする。自分もかつて使っていたエキサイトブログから、記事をいくつもセレクトして引っ越した形になった。ちなみにnoteのロゴが2022年末にリニューアルされました。デザインは超大御所の原研哉氏。なんですが、いまだにちょっと慣れません。少しいびつに感じてしまって…アイコンの「n」はいいと思うんですが。
Bluesky
元Twitterの中の人たちが、昔の、つまり古き良きTwitterを目指して立ち上げたという文章系SNS。インターフェースはTwitterに似ており、さらにさっぱりしていて好印象。Twitterのようにアルゴリズムに従った広告がゴリゴリ差し込まれないのもいい。また、最大の特徴は招待コードがないと参加できないという会員制システム。オープンすぎてカオスと化したTwitterのアンチテーゼとして理解できるスタイルだが、それゆえにメジャーな場所たり得ないのだろうなとは思わせる。ブルースカイ、の名前の通りにトップ画面は「青空と雲」なのだが、そのモチーフには文句ないとしても、あまりシンボリックな空とは言えず、本当にこの写真で良かったの?というのはいつも思う。
Mastodon
何しろ凍結騒ぎの時にはお世話になりました。アカウントも残しているし、通知があれば時々見に行ったりもするけれど、ほとんど使わなくなりましたね…。いわゆる分散型SNSとしての思想的な部分などは理解したつもりだし、良いとは思うのだけど、使いやすいかと言われると別。また、分散型ゆえに「すべての人が一堂に会する」という形の真逆を志向するわけで、そうなるとSNSに求めるものは何か?という部分で自分のニーズとは乖離が出てきてしまうな、というのもありました。
とまあ、書きすぎた気もするが(汗)、まあ軽やかに読み流していただければ。
Threadsについて、この1日だけでもいろんな意見が出ている。ここが使いやすいとか、使いづらいとか。ということはつまり、みんな使うならこのサービス!という「決定版SNS」を探しているのだということになる。どのサービスにも一長一短、個性があるわけだが、そのどれもを良しとして併用するのはやはり不便なのだ。動画系ならこれ、テキスト系ならこれ…というジャンルによる棲み分けはアリだが、同じような目的であれば一箇所に統一して使えたほうがいい、というのが本音なのだろう。
SNSの世界で、天下統一は起こり得るのか。まだまだ群雄割拠という感じだが、見守って行きたいと思う。
やぶさかではありません!