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#しのログ「恋人と、仕事と、カッフエエ」【#4】

4日目に突入すると、身体から慣れていくのかもしれないと感じるようになりました。鈴木しのです。

3日目までは、「読まないと」という感覚だったのですが、今日はなぜだか「あ、そういえば読もうっと」という、自然と手が伸びる感覚を味わいました。嬉しいことです。


さて、今日の1冊は、森鴎外の『舞姫』。

今週のラインナップは明らかに1日で読むものではなかったです。ただひとつ、救いがあるとすれば、『舞姫』は薄いので、逃げたくなる感覚ではないかな。
なにせ、本文は34ページ。今回は新潮文庫の『舞姫』を手に取っているので、『舞姫』含む八編が収録された、短編集の構成。


小さな頃から短編集という類のものが苦手だったのですが、こう一編が難しいとむしろありがたく思えてなりません。

-「読めるかも」そんな希望が背中を押します。押すだけです。

ただ、たったの34ページだからといって、侮ることなかれ。読めません。

……名著だとは、わたしにはまだ言えませんでした。巴里(パリ)と仏蘭西(フランス)はギリギリ読めます。馴染みはないけれど。ただ、欧羅巴(ヨーロッパ)は厳しい。仏得力(フレデリック)なんて、もっと厳しいよ、鴎外さん……一般教養が身についていないだけなのでしょうかと、脳みそとの対話がただひっそりと、始まりました。

言葉の響きとして趣があると感じたのは、珈琲店を“カッフエエ”と読ませうる心。“カフェ”ではなく、“カッフエエ”。「かっちょええ」、みたいな。戦後まもなくに、今でいう「パブ」や「スナック」なんかを総称して、“カフェー”と呼んでいた記憶がそっと蘇ります。


本編は、またしても悲しいお話。

いわゆる「仕事と私、どっちが大事?」を問われているような感覚です。主な登場人物も3名と、読みやすい構成。難しい言葉づかいである点を除けば、読みやすく、明快です。

初日の『たけくらべ』や2日目の『浮雲』にも男女の恋心や戸惑い-心境の変化などが、色濃く縁取られていた印象ですが、『舞姫』はまた別物。


主人公は「仕事」と「恋愛」のどちらを選択するべきか悩みすぎて病に倒れ、恋人のエリスも彼が「仕事」を選んでいたことを知り、狂人へと変わってしまう……世知辛いとは思いつつも、時代だ時代と、心を落ち着かせるわたしもここにいます。

こんなに大きくて答えのない問いを自分自身にぶつけてみることが正しい行動なのかはわかりませんが、「仕事と恋愛、どっちが大事なの?」とわたしが恋人に問われたとしたら……と、考えてみました。


その質問が投げかけられた瞬間に、別れを切り出すのでしょう。





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