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#しのログ「悪くないはずなのに」【#7】

1週目最後の一冊になりました。若干深夜枠でお届けする感じが否めませんが、心はしっとりと、緩やかにいきましょう。

8/7(月)、最後は志賀直哉の『城の崎にて』。


城の崎にて、いったい何をするのだろうという疑問だったのですが、城の崎にてどうこうというよりも、もっと日常的なことを問われている気分になりました。

山の手線の電車に跳ね飛ばされて始まるお話。山の手線に跳ね飛ばされていなければ、城崎に訪れることもなく、それ以降の感情も湧かない、きっかけは大きくもあり考えてみれば意外とそれとないことでもあったり。(山の手線にはねられることが“それとないこと”というわけではないけれど)


ハチ、ネズミ、イモリと出会っていく中で問われる、生と死についての考え。浮かび上がる疑問や、いわれもない不安。

とても残酷な物の言い方をしてしまうと、“殺人”は罪に問われるけれども、イモリを亡き者にしてしまうことは罪には問われることがありません。そして、“無意識”なのであればなおのこと。

わたしはアリやクモはおろか、最近では蚊一匹潰すことにすら恐怖を抱く瞬間があります。昔は、蚊の手足を1本1本抜いて、彼らが悶える姿を興味深く観察するグロテスクな少女だったのに。


人間と動植物との生の価値観は答えが出るものでもなければ、最適解があるものでもないのでしょう。だからこそ、ふとした瞬間に突然考えを巡らせ、私たちは自問自答を続けるような気すらします。

ちょっとしたきっかけが大きな考えの一欠片となるその瞬間を、しっかりと抱いていたいものです。

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