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物語「星のシナリオ」 -27-

ボクは何とも言えない感覚に包み込まれて、何て言うか、立っているのがやっとだった。

降参するしかない。その感覚はまるで穏やかに流れる「ぜったい大丈夫」という安心できる大きな川に、仰向けで身を委ねてゆらりゆらり浮かんでいる心地良い脱力感と、そんな静かで優しい世界にいる感覚みたいだった。

この状態で居続けるということを決めてもいいし、自分で楽しく泳ぐって決めてもいいし。大きな船でもつくってそこに仲間を乗せて楽しく旅をしてもいいし。この川に美味しい魚がたくさんいるって設定にして、魚釣りを楽しんでもいい。

「これって、とっても自由な世界だね」

「うん」

ボクはしばらくその、穏やかな川の流れのような感覚に身を任せて感じていた。もしかしたら、赤ちゃんの頃ってこんな感じだったのかな。何も心配すること
なんてなかっただろうし、悩むこともなくて、これから先にはたくさんの可能性が広がっていてさ。

いつからボク達は、この感覚を忘れてしまったんだろう。このまま、大人になることは出来ないのかな。

「できるよ」

猫が、まっすぐ力強い眼差しでボクを見て、言った。まるで魔法をかけられた
みたいに、ボクの内側には確かな自信が宿った気がした。

「さ、、そろそろ、みんなの近くに行ってみよう。今日はとても賑やかだよ」

猫は、ボクの川の流れを邪魔しない優しさで、ボクをその先へと促した。

「今日は、何かのお祭り?」

「もうすぐ日食を伴う新月なんだ。そういうスペシャルな宇宙のタイミングは、地球へ生まれる希望者が増える。人気のタイミングなんだ」

「そのタイミングで生まれると、何か良いことがあるってこと?」

「違うよ。これも、いたってシンプル。ただ、スペシャル感を楽しめるってことだよ」

「えー何だよ、それ。え?ただそのことのための、この雰囲気?なんか拍子抜けだな」

「同じことさ。きっと今は地上でも、日食を見るツアーが旅行会社の人気に
なってるんじゃないかな?」

「えっ?あーあはは、そっか、同じか」

なんかもう、わかってきた。本当にただただシンプルで。
魂の体験。魂のあそび。

初めてこの星の世界に来た時は、
なんてファンタジーな世界に来てしまったんだ!
ボクはとうとう頭おかしくなっちゃったのかと思ったけどさ。

ほんとうは、逆かもな。
ボク達が体験している現実世界の方がよっぽどファンタジーな世界なのかもしれない。


つづく


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