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ベンチャーCTO1年目の振り返り

こんにちは、しんのき (@y_shinnoki) です。
店舗接客を円滑化させる「デジちゃいむ」というサービスを提供しているWASD Inc.という会社でCTOを務めています。

去年の1月に会社が立ち上がり、僕はちょっと遅れて5月にジョインしたのですが、早いもので1年が経ちました。ちょうど1年前のゴールデンウィークは「1日でも早くβ版を公開するぞ!」と宣言して、寝る時間以外はひたすら本番環境を整備していた記憶があります。

スクラムでうまくいったり、いかなかったり

1年前は僕を含めエンジニア2人だった開発チームが、現在は副業、インターン生を含めると8人まで増えました。

社員には入社時にSCRUM BOOT CAMP THE BOOKという本を読んでもらい、自分たちはスクラムのやり方にできるだけのっとってアジャイル開発するよ、という共通認識を持ってもらいました。

実際、新しく入ってきた開発メンバーにとって、ジョインしてすぐにスクラムのやり方に沿って新機能をリリースできたのは大きな成功体験となったはずです。

一方で、スクラムではチーム全体でタスクを抱える形となるので、開発メンバーが実装以外の業務に責任を持ちづらいというトレードオフがあるように思います。

スクラムのベストプラクティス的にはスプリント内の差し込みタスクやぽっと出の話は跳ね除けるということになるのでしょうが、この規模のベンチャーでそれに慣れてしまうのも良くないなと思います。

先に担当を割り振ってみたり、タスクの粒度を荒くしてみたり、色々と試してみているのですが割とすぐにチームが散り散りになってしまいます。

その辺は飲み込んだ上で臨機応変にやっていくしかないと思いますし、さらに人数が増えて役割が細分化されれば解決することもありそうです。

要は自己組織化が出来るかどうかが問題で、「あ、今うまくいってないな」と各自が気づいて、勇気を持って問題提起できることが重要です。

知識と経験に助けられた1年

開発チームの人数が増えた中、自分しか出来ないことをやろうと考え、「チームの上限を上げて非連続な成長に導く」ということをテーマに動くようにしていました。

例えばアプリはReact Nativeで開発しているのですが、最初はExpoを使って開発していたものの途中からExpoでは開発できない機能が出てきて先回りしてejectしておいたり、この辺りが比較的スムーズにできたのは経験に助けられました。

また個人的に興味深かったのですが、ありがたいことに大企業様に導入していただく機会がありセキュリティシートを提出することが何度かあったのですが、「AWSの東京リージョンを使っています」という一言で済む項目も多かったので、AWSのマネージドサービスを積極的に使っていることが時間の削減につながりました。

もともと自分自身の技術的な興味の中心はクラウドなのですが、別の視点からのメリットが見えたのは面白いです。

過去の知識や経験の貯金は1年でちょうど使いきった感覚があり、さてさてこれから大変だぞという気持ちになっています。

CTOとしての役割

前回noteを書いたときは漠然と自分がエンジニアとして手を動かす比率が減ることになるのかなという程度の認識でしたが、このときに比べると解像度が上がりました。

CTOという肩書きを背負っている以上、会社と事業の成長に技術の観点からコミットすることに責任を持っており、会社が継続して価値を生み出し続けるような仕組みを作っていかなければなりません。

最近「エンジニアのためのマネジメントキャリアパス」という本を読みました。初めてメンターをやるときからテックリード、マネージャーとなるにあたっての役割の変化が章ごとにまとめられているのですが、マネジメント経験の少ない自分にとっては全ての章に得るものがありました。

「CTOの役割はフェーズによって変わる」というのはよく言われるのですが、自分はすでに現在の組織でCTOという肩書きを背負ってしまった訳ですから、あくまで経営幹部としての視点に軸足を置き、その場その場で足りないロールを一時的に埋めつつ、すぐに権限を移譲するような姿勢でいなければならないと思っています。

この辺の話が CTOA Advent Calendar 2020 の LayerX 松本さんの記事にも符合するんじゃないかなと思います。

実は組織のビジョンやプロダクトの思想について明文化しようと一番向き合うのは、この、まだ10人ほどでこれからスケールしていくというステージなのではないでしょうか。組織が大きくなってもできる限り浸透させられる制度を作るためには、その骨格としてミッションやビジョン、バリューが欠かせなくなってくるからです。

最近特に、CTOという肩書きの重責に悩むことも多いのですが、ボトムアップに階段を上っていたのでは今の時点でこの考えにたどり着けなかったと思うので、こうして悩んでいることにも意味があるんだなと言い聞かせています。

これから

「早く行きたければ一人で行け。遠くへ行きたければみんなで行け。」という言葉があります。(アフリカのことわざとされていますが出典は不明)

1年前の自分は手を動かしてまさしく一人で早く行っていた最中だったのですが、今はどうすればみんなで遠くに行けるかなと考えています。

その上で自分は、みんなが向かう可能性をちょっとだけ先回りしての技術の力で舗装できれば嬉しいです。

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