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【教皇庁†禁書ジャンヌ・ダルク伝】上巻②お告げ

アナトール・フランス著「ジャンヌ・ダルクの生涯(Vie de Jeanne d'Arc)」全文翻訳を目指しています。原著は1908年発行。

1920年、ジャンヌ・ダルク列聖。
1921年、A・フランスはノーベル文学賞を受賞しますが、1922年にローマ教皇庁の禁書目録に登録。現在、禁書制度は廃止されていますが、教皇庁は「カトリック教義を脅かす恐れがある禁書だった本を推奨することはできない」という立場を表明しています。

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Chapter II.
Voices(お告げ)

字数が多い(約1万7000字)ため、訳者の裁量で「小見出し」をつけています。

2.1 天使と聖女たち

 ジャンヌが13歳の時のことだ。ある夏の日の正午、ジャンヌが庭にいると恐れ多くも大いなる声を聞いた。その声は右手にある教会の方角から聞こえたが、同時に同じ方向に光が見えた。

 その声は、「私はあなたが善良で清らかな生活を送るのを助けるために神から遣わされてきた。良いことをしなさい、ジャネット。そうすれば神はあなたを助けるだろう」と言った。

 今日(こんにち)、絶食すると、幻覚症状があらわれることはよく知られている。信心深いジャンヌは断食に慣れていた。その日は朝食を控えていたのだろうか。最後に食べたのはいつだったのか。それは分からない。

 別の日、声はまた話しかけてきた。「ジャネット、良い子でいなさい」と。

 少女には声がどこから来たのかわからなかった。しかし、3回目にしてジャンヌはそれが天使の声であると悟り、天使は聖ミカエル(ミシェル)だと認識した。ジャンヌは彼をよく知っていたので、間違っているとは思わなかった。
 聖ミカエルは、バル地方の守護天使だった。ジャンヌは教会や礼拝堂の柱の上で、兜の上に王冠をいただき、鎖を編んだ甲冑を着て、盾を持ち、槍で悪魔を調伏している美しい騎士の姿を見ていた。時には、魂をはかる天秤を持っている姿で描かれることもあった。それは、聖ミカエルが天界の最高責任者であり、楽園の監視者であり、天界の指導者であり、裁きの天使であったからだ。
 聖ミカエルは高地の山を愛していたので、ロレーヌ地方ではトゥールの町の北にあるソンバール山に礼拝堂が建てられていた。
 遥か昔、アブランシュの司教オベールのもとに聖ミカエルが現れ、「トンベ山の盗賊に隠された雄牛を見つけられるように、見晴らしの良い場所に教会を建てるように」と命じた。この命令に従って、モン・サン=ミシェル=オ=ペリル・ド・ラ・メール修道院が建てられた。

 ジャンヌがこれらのビジョンを見ていた頃、モン・サン=ミシェルの守備隊が、陸と海から攻撃していたイングランド軍を打ち破った。フランス人はこの勝利を大天使の万能な計らいによるものだと考えた。大天使は彼を敬虔に崇拝するフランス人を歓迎しないはずがない。
 1419年、王太子(シャルル七世)は完全武装した聖ミカエルが抜き身の剣を掲げて蛇を退治している「盾型の紋章(エスカッション)」を描かせた。
 しかし、ドンレミのジャンヌは、ノルマンディーのモン・サン=ミシェルで聖ミカエルが行った奇跡の勝利についてほとんど知らなかった。ジャンヌは彼の武器と礼儀正しさ、そして彼の唇からこぼれ落ちた気高い言葉で天使だと認識した。

 ある日、聖ミカエルはジャンヌにこう言った。

「聖カトリーヌと聖マルグリットがあなたのところに来る。あなたを導き、あなたが為すべきことをすべて助言するために任命されているのだから、あなたは彼女たちが言うことを信じるように」

 これらのことは、神が定められたとおりに実現した。
 この約束にジャンヌは大きな喜びを感じ、二人の聖女を愛した。

【※誤字脱字・誤訳を修正していない一次翻訳はこちら→教皇庁†禁書指定「ジャンヌ・ダルク伝」

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