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『キオスク(-Der Tranfikant- )』ロベルト・ゼーターラー作【資料としての小説】

こんにちは、初めましての人は初めまして

今回はオーストリアの作家、ローベルト・ゼーターラーの『キオスク』
について、書いていきたいと思います。

この作品は、東宣出版という出版社の「はじめて出逢う世界のおはなし」
(http://tousen.co.jp/hajiseka-booklist)という世界各国の文学を翻訳しているシリーズのオーストリア編です。

余談ですが他にもチェコやアルゼンチン、キューバなど、
まだ馴染みのない国の文学作品もこのシリーズにて出版されていますので、
是非読んでみてください!!

それでは今回作品のあらすじに入っていきたいと思います。

【あらすじ】

舞台は1937年、ナチスドイツによるオーストリア併合が迫るウィーン。
人々の間では、ゲルマン民族の生存圏の拡大を目指す、得体の知れない狂人ヒトラーへの恐怖と嘲笑のが入り混じった暗い雰囲気が漂っている。

主人公フランツはそんな時代に、
ザルツカンマーグートという田舎に住んでいる17歳の少年。

世間のそんな雰囲気とは隔絶されたまま、
母親と二人で暮らしていました。

しかし、母親はずっと愛人関係にあっと男を失い、
一人でフランツを養っていくことはできなくなってしまいます。

そこで、フランツをウィーンでキオスクを営む知り合いの元へ
丁稚奉公へ出すことを決意。
(キオスクはタバコや新聞、雑誌などを売る今のコンビニの様な店です。)

そこで偶然客としてキオスクを訪れていた、
今でも無意識の研究で有名なフロイト博士と会います。

そのフロイトから、折角若くして田舎から都会に出て来たのだから、
恋をしなさいというアドバイスをもらい、早速街の遊園地に繰り出し、
自分が恋に落ちるべき女の子を探しはじめるが、、、

といった内容になります。

これからは僕が感じた感想について書いていきます。

【感想ーエンタメではなく、文化を学ぶ資料的な小説ー】

この小説は、当時のウィーンに漂う絶妙な不安感を登場人物たちのセリフや行動を通して、表現しています。

例えば、主人公のフランツが「洞窟」という見せ物小屋に行った際に、
ヒトラーの格好をした男が犬の様に四つん這いで歩いたり、
首輪に繋がれるシーンがあります。
そのショーを見て大笑いする観客もいるのですが、
その後ヒトラーを演じた役者は秘密警察に逮捕されてしまいます。

このシーンで、当時のオーストリアの国民が抱いているヒトラーへの感情と、それを力尽くで取り締まろうとするナチスの思想統制の様子が描かれています。

他にも、フランツが働いているキオスクも、
ユダヤ人にものを売っているというだけで、近隣のナチス支持者から、
店の中を荒らされてしまうというシーンがあります。

ここでは、オーストリア国内にもヒトラーの思想の影響に同意する人間が出て来て、隣人すら信用できなくなって来ている、という不穏な空気を表現していて印象的でした。

また、フロイトも診療の代金をオーストリアで使われているシリングではなく、ドルでの支払ってくれる患者はありがたい、と独白しているシーンでは当時のオーストリアの経済的な面での不安定さを個人の目線から描いています。

他にも様々な、不穏な空気を感じる要素が描かれているので、
エンタメとして読むには多少重すぎるところがありますが、
当時の雰囲気について知りたい人にはとてもお勧めです。

今回個人的には刺さらなかったけれど、
当時の雰囲気を知りたい読者にはオススメです!ぜひ読んでみてください!

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
これからも基本的に僕が読んでみて、
心に残ったことについて書いていきますので、
次回も是非読んでみてください!

フォローや、いいねも励みになりますので、
是非是非よろしくお願いいたします!






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