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「女のいない男たち」村上春樹作(*注意:今回は男女関係についてとてもバイアスがかかった発言をしていますので苦手な方は控えてください)

こんにちは、初めましての人は初めまして。
今回は村上春樹さん作の短編集『女のいない男たち」
について書いていきたいともいます。

この作品は西島秀俊さんが主演で映画化され、
アカデミー賞長編映画部門を受賞した『ドライブマイカー』
を含む6本の短編が収録されています。

【この作品のテーマー女のいない男ってどういうこと?ー】

この短編集のテーマは、タイトルの通り「女のいない男」です。

このわかるけど分からないタイトルについて、
まずは解説していきたいと思います。

短編の主人公たちは皆、物理的に女性がいない(いなかった)
というわけではなりません。
皆、それぞれ妻、恋人、愛人、セフレ、等々
様々な形で女性との関わりを持っていてます。

しかし実際には、
全員様々な形で自分たちの彼女らを失っています。

美人女優を妻にしつつも不倫され、
その妻も死んでしまい不倫の動機を問いただすことができなかった夫。

長年一途に付き合ってきた彼女と幼馴染みであったという理由から、
肉体関係に踏み切れず愛想をつかされてしまう彼氏。

様々な女性との逢瀬を繰り返しつつも、
恋に落ちた女性にはふりむいてもらえず、その苦しみから体調を崩し、
最後には死んでしまう医者。

そんな「手に入れられたはずなのに手に入れられなかった」
男の苦悩が今回の短編集のテーマです。

【この本の魅力について】

魅力その①ーあり得ないけど納得、男性のあり得ない行動ー

男というのは、女性と絡むことによって普通ではあり得ない行動をとってしまうものです。

例えば、「シェラザード」と言う短編では、
肉体関係を持った相手への違和感をスルーするだけではなく、
魅力として捉えてしまう男の姿が描かれています。

この短編では、セックスの後に必ず「お話」を1つ聞かせてくれる女性が登場します。
主人公はこの女性の行動に当初違和感を抱きつつも、
特に疑問に思うことなく、『お話し』を聴き、
その女性と継続して関係を持ち続けます。

僕はこの章を読んでとてもリアルだと感じました。
もちろん、今まで関係を持った相手の中にそんな奇妙な人はいませんでしたが、好きになった女性に何か違和感があってもそれを受け入れる、
もしくは無視して、相手を追い続けるというのは男性あるあるではないでしょうか?

そういった具体的な事象としてはあり得ないのですが、
この状態に自分が陥ったら自分もこうなってしまうだろうというストーリーが見事に描かれています。

魅力その②ー短編でも全開な村上ワールドー「ビートルズを関西弁で歌う男ってなに!?」ー

村上春樹さんの小説では、奇妙な世界感が描かれることが多くあります。
今回は短編なので、世界設定に文字数を裂けない都合からか、
世界観は現実とそう離れていないのですが、
奇妙な登場人物が多く登場します。

例えば、
生まれも育ちも田園調布出身なのに関西弁に憧れて、関西にホームステイして、とても流暢に関西弁を操る男、木樽。
(彼がイエスタデイを関西弁に訳して歌う男です。)
性交の後、自分の前世がやつめうなぎだったと語り始める女性、
シェラザード。

こんな突飛な設定の人々を違和感なく描けてしまうのが、村上春樹さんの凄いところであり、この本の魅力の一つです。

魅力その③ーリズミカルなメロディと難解な歌詞が組み合わさった音楽のような物語ー

村上春樹さんの文章は独特な表現が多く出てきますが、
不思議なことに、すらすら読み進めることができます。

例えば、「内的な屈折や屈託があまりに乏しいせいで、そのぶん驚くほど技巧的な人生を歩まずにはいられない種類の人間がいる。それほど多くではないが、ふとした折りに見かけることがある。」と言う文章が登場します。

これは一見すると理解するのがとても難しいのですが、
なんとなくさらっと読むことができます。

そしてこの小説を読み終わる頃には、
なんとなくその意味が理解できている。
「体に染み込みような、言語化できないけれど理解できた」
と言う感覚が訪れるのです。

まるで、心に響く曲を聴いたときのように。

【まとめー男女関係は永遠のテーマー】

この本は、男女関係、奇妙な世界観、詩的な文章、
という村上春樹さんの作品の良いところを詰め合わせたような作品です。

とてもおすすめなので是非読んでみてください!!

村上春樹さんの作品は以下でも紹介しておりますので興味がございましたら、そちらもチェックしてみてください!

ここまで読んでいただきありがとうございました。
これからも僕が読んでみて、心に残った本に書いていきますので、
次回も是非読んでみてください!
それでは、またよろしくお願いします。!






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