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『母性』湊かなえ作 感想

永野芽衣さん主演で映画化もされた。
コピーは「母の愛が私を壊した。」

この本は、母親、娘、とある高校教師の三人の目線で物語が進行していく。

母親から見た娘の行動の解釈と、娘の行動意図の絶妙なズレと、
それが元でが生まれていく母子の関係の溝が見事に描かれている。

母親も娘も、お互いを愛そう、愛されようと必死になっているが、
それが全く噛み合わない。

しかも、母親視点の話は回想ではなく、自身の行いを神父への説明と言う形で行われる。

そのため、そこでの母親の説明は自己を正当化する言葉だらけで、
しかも印象が悪いところは母親の意思でカットされている。

しかも、その直後に娘の回想で娘視点からの真実が描かれているので、
尚更リアルに伝わってくる。

そして、さらにこの本を面白くしているのは、母でも娘でもない、この第三者の高校教師は何者なのだろうかという疑問を読者は抱かずにいられないということだ。

それもそのはずで、物語のクライマックスまで全く情報を与えられず、同僚とたこ焼きを食って、この事件の話をしているだけなのだ。

けれど最後まで読んだ時に「あ〜、そういうことだったのか!」と全ての伏線に納得する。

気になる人は是非読んでみてほしい。

ミステリーとしてとてもよくできた作品だった。
他の湊かなえさんの作品は「告白」しか読んだことがないが、
是非読んでみようと思う。

ここまで読んでいただきありがとうございました。
次回は村上春樹の「羊を巡る冒険」について書いてみたいと思います。
是非次回も読んでみてください。



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