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『シン・ニホン』プロデューサー岩佐文夫さんに質問 コミュニティ編 VOL.01

2020年4月にスタートした、書籍『シン・ニホン』のアンバサダー制度。第4期養成講座が修了し、現在81名のアンバサダーが活躍しています。2020年末には運営母体がNewsPicksパブリッシングから「アンバサダーズコミュニティ」に移管され、自立的な活動としてますます盛り上がりを見せています。

第5期養成講座の募集が始まった5月某日、運営メンバー4名が『シン・ニホン』プロデューサー(現VOOX編集長)の岩佐文夫さんに質問しました。

本日は文夫さんへの一方的な質問になりますが・・・よろしくお願いいたします。

Q.改めまして、このアンバサダー制度を立ち上げた理由・背景を教えて下さい。

A.去年(2020年)の2月に『シン・ニホン』が発売になって、色んなプロモーションをやろうと考えていたところで、コロナになったんですね。大規模なイベントが全くできなくなってしまった。そんな時に読書会を、メンバーを集めてやってみたら、こんなに参加してくれる仲間がいるんだと。

ただ、僕や(井上)慎平さんが読書会を毎回開くのは時間的にも難しい。
なので、『シン・ニホン』が好きで、自発的に読書会を開いてくれる人を作ろうと思ったんです。読書会を開くのに必要なスキルを僕たちが伝えて、読書会を開催する人を「アンバサダー」と名付けて、『シン・ニホン』を広めていってもらおうと。

Q.「アンバサダー」というと、宣伝のためなのかと誤解を受けることはありましたか?

A.あまり誤解をされたという記憶はないですね。僕も慎平さんも純粋に、この安宅さんの書いた『シン・ニホン』の考えを広げたいと思ったし、当然ビジネスとして、本が売れるという結果はついてくるけど、そこにお金を稼いでいるとか、良いことをしているという意識もなくやっていましたね。

アンバサダー制度を作った時に、僕らは無料でこの養成講座を始めました。アンバサダーになってくれた人に対して、お給料を払ったりとかも一切していない。知らない人から見たら誤解を受けているかもしれませんが、やっている僕らとしては筋が通ってるので、あまり迷うこともなくアンバサダーの育成を行ってきました。

Q.コロナ禍で立ち上げられたということで、オンラインだからこその工夫が必要だったと思います。苦労されたこと・印象に残っていることがありましたらお願いします。

A.今では笑い話ですが、オンラインで知らない人と話すという経験がなかったので、初対面の人とどんなふうに距離感を詰めていけば良いのか、どういうことが相手に失礼になるのか、画面を通した自分のコミュニケーションをどうしていくかが最初の難関でしたね。振り返ると苦労というよりも、やってみてのメリットのほうが大きかったと思っています。

Q.(養成講座のプログラムは初回は全員初対面のことが多く、毎回グループを組む相手が違ったりと、全8回の中でかなり流動性が高い)流動性の高いコミュニティでのコミュニケーションについてアドバイスはありますか?

A.1つ目は、読書会の1回目は、主催者も参加者もめちゃ緊張しますよね。でも経験上、僕らは回を重ねていけばいいだけだと思っています。2回目・3回目になるとだんだん落ち着くというのが分かっている。「安心して緊張してください」ということ。

2つ目は、アンバサダー養成を始めるまでこんなに多彩なバックグラウンドがぜんぜん違う人たちが集まってくるとは思ってなかったです。でも、不思議とそこにあまり苦労がなかったのは、コミュニケーションの共通項を『シン・ニホン』という本に置いているからです。

アンバサダー養成講座に来る人は、この本を読みたいと思って来るのではなくて、読んで良かったというところからスタートしている。職業とか、年齢とか、住んでいるところが違えど、お互い強烈な同志性があるんですね。そこを信じればうまくいくし、そんなに苦労はないと思います。

もし共通項がなかったら、その人が何者で、何を大事にしているかさっぱりわからないので、話ができない。でも『シン・ニホン』を読んで本当に良かった、何か行動しよう、夜の時間を養成講座のために当ててくれる、そこまでの思いがあるという前提があれば、安心して思いを語ることはできますよね。

Q.印象に残っているエピソードはありますか?

A.驚いたのは、養成講座の参加者に地方の人が多いことです。ビジネス書の売上は首都圏型(首都圏を主体に売れる)なんです。『シン・ニホン』も首都圏型の売れ行きと思っていたのですが、この養成講座に来てくれる人にものすごく地方の人が多いんですよね。

地図上でアンバサダーの皆さんのお住まいに、旗を立てていったら47都道府県の40ぐらいは埋まるのではという気がしていて、その散らばり方は毎回楽しみにしています。

あとは、2期から高校生が入ってきたんですよね。今(4期まで完了)は高校生がいて普通ですけど、初めに高校生の応募があったときはすごく考えました。『シン・ニホン』の読書会のアンバサダーとして一緒にできるのかと。えいやという気持ちで入ってもらったんですけど、大正解でしたね。僕らが危惧していたような、議論についていけないということもなければ、取り残されることもなくて、僕らがみんなで高校生にレベルを合わせるような必要もなくて、むしろ活性化した面のほうが強かったんじゃないかなとも。

もう一つ、具体的なエピソードを挙げると、一番感動したのは、2期が終わった時に一人一言ずつ感想を言っていったんですけど、どちらかというと経験豊富で皆さんをリードする立場だった40代のビジネスマンの方が、「ここに来て本当に良かった」と泣いたんです。それまで、そんなに感情をさらけ出す人と思えなかったんですが、養成講座で一皮剥けることを目標にしていて、自分を変えようともがいてた、良い経験になったと気持ちを吐露して、感情的になって涙を流すという・・・。高校生はびっくりしてましたね、大人が泣くところなんてそんなに見ないから。

これは、もらい泣きをいろんな人がしたんですけど、一度もリアルで会ったことがない人たち同士で8回の養成講座をして、心を通わせ合う仲間になれたっていうことを含めすごく感動しました。

Q.1期、2期の頃は立ち上げで、しかもオンラインで、中身の濃い講座にするために、特にどういったことに気をつけられたでしょうか?

A.読書会を開くためにはファシリテーションの技術が必要だと思って、ファシリテーションの技術を養成しようと力を入れたのが一期だったんです。ただ3~4回目ぐらいまで全然うまくいかなかった時に、奇跡的にうまくいったことがあったんですよ。それを見てた時に、「そうだ、ファシリテーションの技術を身に付けてもらう前に、いい議論とは何か?という場を皆に経験させることが大事だ」ってことに気づいたんです。

そこからプログラムの内容をガラッと変えて、ファシリテーションを教えるのではなく、みんなで「いい議論とは何か」を言語化して、いい議論を進めるために必要なことを伝えていって、「前回よりもいい議論できたね」という感触を早めに味わってもらおうと。

そんなふうにプログラムの内容を改訂して、2期で今の養成講座の原型ができました。そういう意味では、1期はめちゃくちゃでした。みんなが喋りたい放題喋って議論にならない。
だから、人の話を聞こうとか、問いかけようとか。自分の発言の6割を疑問形にしてみよう、とかですね。こういう物の言い方っていうのは1期を見ていた経験から出てきた言葉です。

Q.1期、2期の方は、キャラクターが濃い気がします。期ごとにカラーはあるのでしょうか?

A.どうかな?(笑)面白いなと思っているのは、個々のカラーではなくて、僕が見ていた1期・2期あるいは3期東、西と、チームごとに独自のカルチャーが生まれるんですよね。このカルチャーは誰が作っているのかがすごく興味深くて、同じように運営してても誰が運営するかでも変わるし、僕が運営していた1期でも、メンバーが違えば違ってくると。

そういう意味じゃ、カルチャーって皆が作るんだなと思うし、「いい組織を作るにはこういう人が必要」とかいうのは嘘だなと痛感してて。例えば何事も最初に手をあげる人っていますけど、もしそういう人がいなくたって、違うキャラの人が組織がうまくいくための役割を果たすんですよね。

特に3期なんかもほとんど参加せずに皆さんの動画見てて、東組・西組の違いが面白いなとか思ったり、この人いぶし銀で…こんな機能してるんだなとか、見たりしてるのがすごく面白くて(そういう意味じゃひらさんも凄く面白かったし)。人が変わっていくのを見るのも面白い。

Q.3期が終わってから、アンバサダーズコミュニティのメンバー自身に運営を任されることになりましたが、どのような思いでそうされたのでしょうか?

A.アンバサダー制度を立ち上げて1年後こんな風になっている、という計画は全くしていなくて、驚いてるっていうのが正直なところです。

なぜこうなったのか考えると、まず1つ思ったのは、安宅さんを中心として集まるようなコミュニティにしたくないと思ったんですね。人を中心に置くコミュニティって階層ができるし、健全じゃないと思ってるんです。もちろん僕を真ん中に集まるコミュニティも嫌だなと思って。中心の核から広がるのではなく、メンバーの網の目がたくさんあるようなネットワーク型組織にしたかったんです。

2期をやるとき、1期の方3人に運営のサポートをしてもらったんですね。1期・2期が分断しないで同じ仲間として交わるようにしたかったんです。その2期の最後に1期のサポートの方たちに運営をやってもらったら、何ら遜色なかったんですよ。

それなら運営にもっと関わってもらおうと、3期は東組・西組の2チームを作って、てっちゃんとしんちゃんっていう二人のリーダーを立ててやってもらったら、またうまくいった。

3期は僕はその場には参加しなかったけど、東組・西組の録画した動画を見てて、毎週のように「次週はこうしたほうがいいんじゃないか」とか運営のサポートを担っていたんですけど、4期はもうそれさえしないで、うまくいった。5期はもう募集から全てアンバサダーが決めてやっている。だんだん気がついたら、こんなふうになっていました。

Q.運営のメンバーで自走するようになっていたと?

A.そうですね。本を作る作業って、著者と一緒になって頑張って、労力を注いで、愛情を込めて世に出すんです。そうして本を出した瞬間って、自分が作ったもの、自分がオーナーの気分があるんですよ。でも本が売れ出すと、その本について皆が語り出すんですね。みんなが独自の解釈を語り出すんですよ、僕はそんなつもりで作ったんじゃないっていうようなこともあれば、こちらが気づいていなかった意味付けをしてくれることもたくさんいるわけですよね。

本を世の中に出した瞬間、「それまで自分のものだったのが、社会のものになる」という感覚をこれまで何度か味わってきました。社会のものになる、と。もう僕のものじゃなくなって、みんなが意味づけして、どんどんどんどん読者が読者を広げていくっていうムーブメントが広がっていくんですね。

その感覚と同じようにアンバサダー養成講座も、最初は僕らが立ち上げて引っ張ってきましたが、だんだんそれがなくなってきて、5期がどういう内容になるか心配もしてないし、チェックもしようと思ってないし、むしろ外から見ていて楽しみです。

もう新しい解釈が当然出てくるだろうし、それも含めてアンバサダーコミュニティだと思ってるんで、そういう風にコミュニティが広がっていくことに対しては、みんなで作っていこうよと。行き先はどこなのか分からないけど、広がっていった先には僕らが待ってるような未来が開けるよねっていう、それだけっていう感じですね。

Q.編集家として、社会に意味付けをされるお仕事をされてますが、まさにご自身が作られたコミュニティが社会に意味づけをしたということ。

A.個人と社会は相互作用で、僕も社会の刺激を受けて本を作ってて、それを社会に還元すると、社会がまたそれに変化を起こすと。そうなると自分も社会に影響を受けてるし、僕も社会に影響を与えている。相互作用みたいなのはすごく感じますよね。

文夫さんへのインタビューはまだまだ続きます。Vol02のアンバサダー編はこちらです↓

4期アンバサダーのメンバー。5期募集受付中。

4期西組

4期東

インタビュアー :濱上 隆道・三森琴音・ひら・岡村さとみ
編集:ひら・岡村さとみ


運営を一緒にお手伝いしてくれる方、5期アンバサダー養成講座の応募受け付け中です!下記よりご応募ください。〆切:2021年5月24日(月)23:59

アンバサダーズコミュニティとは「残すに値する未来を創る」

『シン・ニホン』で投げかけられた著者のメッセージに賛同し、未来を創る動きの総量を増やすため、『シン・ニホン』の読書会を主宰する。それが、『シン・ニホン』アンバサダーです。

『シン・ニホン』アンバサダーは、アンバサダー養成講座プログラムを修了し、アンバサダーの名を冠して『シン・ニホン』の読書会を主宰することを認定されています。

運営母体は当初は出版社であるNewsPicksパブリッシングでしたが、2020年12月より、アンバサダーが立ち上げた任意団体『シン・ニホン』アンバサダーズコミュニティに。現在は第1期から第4期メンバー、81名が所属しています。




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