慢性疼痛を再考
治療院だけではなく、ピラティススタジオやパーソナルジムにおいても主訴が痛みの改善という方も少なくはないでしょう。
実際に当施設に訪れるクライアントも3〜4割は慢性的な疼痛の改善が主訴です。
今回は慢性疼痛を身体的要因と心理社会的要因の2つから解説していきます。2つに分けて解説はしておりますが、実際の現場では、この2つが複合しているケースが散見されるところで、各々の細かなスクリーニングが大切なところと考えております。
身体的要因
慢性痛の身体的要因として着目すべきは「モーターコントロール(運動制御)」となります。
簡単に言えば「動き方/挙動」に問題があった場合、その不適切な動作が修正されなければ、慢性疼痛は改善されない可能性があります。
また同一姿勢による持続的な局所に対する力学的負荷もまた同様です。
例えば下記の写真をご覧ください。
立位姿勢の状態から上肢挙上(バンザイ)した写真ですが、正常であれば肘を伸ばしたまま両腕は耳の横くらいまで到達することができますが、この挙上動作には肩関節以外にも胸椎の可動域も必要であり、胸椎の関節可動域が低下した方では、肩の動きが制限され、関節の中を通る筋肉(棘上筋、棘下筋)などを挟んでしまうことにより、肩を痛める原因となることがイメージできるでしょうか?
または胸椎の可動域制限を腰椎を反らせることによって解決しようとするかもしれません。
すると日常的に腰を反って代償し、挙上動作を反復しているとすれば、腰に痛みが起こりやすいこともイメージできるかと思います。
ここで大切なのは、痛みが起こるのは「腰」や「肩」であり、それを引き起こしている原因は肩や腰ではなく「胸椎」にあるということであり、「痛みが生じている原因は患部にはない」ということです。
姿勢と痛み
姿勢が悪いと痛みに繋がるという事を認識している方は非常に多いですが、姿勢と痛みの相関性は実は明確ではございません。
姿勢(外見上の姿勢の良さ)が痛みに影響するわけではなく、こちらの文献では「その姿勢を正確に把握できているか?」「見た目の姿勢と自身が感じている姿勢にギャップがないか?」ということが重要になることを表しています。
つまり身体地図「ボディマップ」の形成が鮮明かどうか?もっと踏み込むと体性感覚に問題があるかどうか?というところがポイントとなるかもしれないということです。
どうしても私たちは体のどこかに痛みや不調を感じると、その部位、局所的に何が起こっているのか気になってしまうものですが、特に慢性疼痛の場合は、他の部位の問題のしわ寄せによる力学的ストレスが疼痛を引き起こしているかもしれないことを考慮する必要があります。
例えば病院や治療院で痛みを感じる部位にマッサージや電気治療など物理療法、徒手的介入を施し症状が緩和したとしても「動作」や「身体知覚」に大きな変化が生まれない可能性は高いです。
私たちの体は何か行動を起こすとき、脳はまず「その行動は安全かどうか」を判断します。
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