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ベトナムの昔話 きこりクオイとガジュマルの木

月に住んでいるのは?
日本では、うさぎが一般的。
ベトナムでは、きこりのおじさんとガジュマルの木が一般的らしい。

お月見について調べていたら、出会った昔話。

きこりクオイとガジュマルの木

ベトナム人なら誰でも知っているクオイの物語。

登場人物

クオイ(Cuội) ・・・・・・・・・・・・・・・・ きこり
クオイ(Cuội)の妻 ・・・・・・・・・・ 金持ち老人の娘
母トラ ・・・・・・・・・・・・・・・・ 森に暮らすトラ
4匹の子トラ ・・・・・・・・・・・・・ 森に暮らすトラ
物乞いのおじいさん ・・・・・・・・・・・・・・ 物知り
犬 ・・・・・・・・・・・・・・・・ 川で出会った賢い犬
隣村の金持ち老人 ・・・・・・・・・・・ クオイの妻の父
怪しい男たち ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 悪い人
よみがえりの木 ・・・・・・・・・・・・・ガジュマルの木

きこりが森でよみがえりの木を手に入れる

1.森 (昼)

きこりのクオイが、斧を担いで森の奥へ入っていく。
小川の近くで4匹の子供のトラがじゃれあっているのを見つける。
クオイは、トラのそばまで下りていくと斧を振り回して、4匹のトラを打ちころす。
そのとき母トラが戻ってくる。背後からうなり声が聞こえる。
クオイは斧を捨てて、あわてて高い木によじ登る。
木の上から下を見る。
母トラが子供の亡骸の前を走り回っている。
しばらくするとクオイが隠れている近くに生えている木の根元までやってきて、葉っぱを取り、噛み砕いてトラの子供たちの口に含ませる。
しばらくすると、子トラたちが尻尾を振って生き返る。
クオイ、驚く。
トラたちがいなくなるのを待ってクオイは木から降りる。
珍しい木を根っこごと掘り起こし、持ち帰る。

2.森からの帰り道の草むら (昼)

森からの帰り道。
クオイは物乞いのおじいさんが草むらの中で死んでいるのを見つける。
クオイは直ぐに何枚かの葉をちぎって口に入れ、噛み砕いておじいさんの口に入れる。
おじいさんは目を開けて起き上がる。

物乞いのおじいさん:
「わしは、どうしたんじゃ?何かあったんじゃろうか?」

クオイ:
「おじいさんが草むらに倒れて死んでいるのを見つけたので、僕が助けたんだ。この木の葉を使って。」
物乞いのおじいさん:
「死んでいたのを助けた?どうやって?」

クオイ:
「この木の葉を使って。森の奥で、僕が狩った子トラを母トラがこの木の葉を使って生き返らせるのを見たんだ。」

物乞いのおじいさん:
「その木はおそらく『よみがえり』の木じゃ。神様がお前に世界を救わせしめようとしているのじゃ。お前はこの木を大切に世話しなさい。ただし、決して汚い水をやってはならんぞ、木が空へ飛んでいってしまうからな」

おじいさん、杖をついて立ち去る。

3.クオイの家 (夕方)

クオイは木を背負って家に帰る。庭の東の隅にその木を植える。
おじいさんの言葉を忘れず、毎日、井戸から汲んだきれいな水をかけて育てる。

きこりはよみがえりの木の葉をつかって多くの人を救う

4.クオイの村 (昼)

その日からクオイは、この貴重な薬木を用いて多くの人を救う。
誰かが息を引き取ったという知らせを聞くと、クオイは木の葉を持って出向き、命を救う。
「クオイは不思議な術を持っている」という噂があちこちに広まる。

きこりが友や妻を得る

5.川 (昼)

クオイが川の中を歩いて渡っている。
一匹の死んだ犬が浮かんでいるのを見つける。
クオイは犬を川岸に上げ、よみがえりの木の葉を噛んで犬の口に含ませる。
犬は生き返る。
犬はクオイにまとわりつき、感謝の気持ちを示す。
その日からクオイと犬は友達に。犬はとっても賢い動物だった。

6.クオイの家 (昼)

隣村の金持ちの老人が大慌てでクオイのところにやってくる。
先ほど足を踏み外して溺れ死んでしまった娘を生き返らせて欲しいと懇願する。
クオイは快諾して、隣町に向かう。

7.隣村の金持ちの老人の家 (昼)

クオイは、家から蘇りの木の葉を持ってきて、娘に与える。
すぐに頬に赤味がさし、娘は生き返る。
クオイが命を救ってくれたことを知り、娘はクオイの妻にして欲しいと申し出る。金持ちの老人も喜んで娘をクオイに嫁がせる。

きこりの妻死ぬ、葉をつかって甦る

8.クオイの家 (昼)

クオイ夫婦は穏やかに暮らす。
クオイが留守にしていたある日、突然怪しい男たちがクオイの家にやってくる。
クオイが「よみがえりの術」を持っていると知って、いたずらをしてやろうと思ったのです。
男たちは、クオイの妻を殺し、内臓を取り出して川に投げ捨てる。
クオイが家に帰り、妻が死んでいるのを見つける。
何度もよみがえりの木の葉を口に含ませるが、生き返らない。
内蔵がないほど、体の損傷が著しい場合はよみがえりの木の葉では生き返らない。

主人が嘆き悲しんでいるのを見た犬は、主人に提案する。

犬:
「奥さんの内臓の代わりに私の内臓を入れててください」

クオイはそんなことをやったことはなかったが、犬の内臓を人の内臓の代わりにしたらどうなるかやってみることにする。

クオイは泣く泣く犬を殺し、犬の内臓を妻に詰め、よみがえりの木の葉を口にふくませる。
妻は以前の若く美しいままに生き返る。
クオイは土で内臓を作り犬の腹に入れてみると、犬もまた生き返る。

夫婦は以前にも増して仲良く暮らす。

しかし、この日からクオイの妻の記憶力に変化が現れる。
言うそばからすぐに物を忘れてしまう。

ときおり、クオイはいらいらして、妻に言う。

クオイ:
「小便は庭の西でしようね、東でやってはいけないよ。昔、おじいさんが教えてくれたんだけど、汚い水をあげると、よみがえりの木が飛んでいってしまうらしいから」

何度も注意する。クオイの妻は聞いたそばから忘れてしまう。

きこりとよみがえりの木が月へ飛んでいく

9.クオイの家の庭 (夕方)

ある日の夕方、クオイが森からまだ戻っていない時間。

妻は庭に出て、夫の言葉をすっかり忘れて、よみがえりの木に向かって小便をする。地面が揺れて木を大きく震わせ、風がゴーゴーと吹きつける。

よみがえりの木の根っこが地面から抜け、空を舞い始める。

クオイが家に帰ってくる。
木が宙を舞っているのを見たクオイは、担いでいた斧をほうり投げて飛び上がり、かろうじて木の根っこをつかむ。
木はどんどん高く舞い上がり、クオイは木とともに、月まで飛んでいってしまう。


という、お話です。ベトナムの昔話。

最後まで読んで頂き、感謝です(ぺこり)

・ガジュマル

日本の沖縄でも、
ガジュマルの樹には「キジムナー」という赤い髪の子供の精霊が棲んでいて、仲良くすれば家が栄えるとも言われている。別名「多幸の木」とも。

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